*星空文庫

死神と天使

星空トクマ 作

少年がトムが教会が嫌いだったのは陰気な老婆や、口下手な女性たちが
こぞってそこへきて、自分の中のもっとおしゃれな気分とイメージがそのアンデリ教会がとても似つかわしくなかったからだ
西地区では、鴉の隠れみのといわれるくらい、建物や施設がぼろぼろに老朽化していて
ただの田舎というよりも“オンボロの田舎”なのだ
そういう意味で倦怠感と劣等感があった、
老婆に対して一度めんどくさそうに手を振り払ってしまった嫌悪感もあった。
それはとても小さな頃、何気なしに退屈そうにしている自分を気遣った老婆が肩を触った時の事だったが

罪悪感を思い出したまま
夕焼けの帰り道を急ぐ、今日は早くかえって小学校の宿題をこなさなくてはいけない。

しばらくとぼとぼ歩いていくと、ベーカーさん家の前をとおる、もと警察官のおじいさんの家だ
奥さんは1年前に亡くなっている。
すると、ベーカーさん家のポスト前で、ゆらゆらと揺れる陽炎のようなものが見えた、
ぼーっと思い出していた
(この家でよくお菓子をごちそうになったなあ)

「よそみをしているの?」
お姉さんはエニーさんだった、声の綺麗な、賛美歌でもとても中心的な役割を持っている人。
「してないよ」
するとお姉さんは何かを悟っているかのうように深くこまったかおで繭をひそめ。

「うそをついたら駄目だよ」
なんともいえない気分になって返事もしないまま、トムは立ち去った。

次の日、学校である噂を耳にした。
「あそこの教会の前の路地裏にでたらしいんだよ」
「でたって何が?」
「死神だよ死神お前しらねえのか!?」
大勢がさわいでいた
(死神……)
親友のエルに聞くとどうやらそれは、人の姿をして死期が近づくとお迎えに来るというあの死神というものそのものだったようだ。
それがなぜかベーカーさんの家の前にでるという
ふと、嫌な予感がしたが、別の事を考える事にしてその日、一日中別の事を考えていた。
ベーカーさんは、ベーカーさんを、奥さんを迎えにきたんだ、あの死神は、きっとそうだ。
あるいは幽霊の見間違いだよ。

あまりの恐怖にその日、母のいいつけ通りには夕方の教会にいかなかった
その後ぐっすり寝ているときに
あの優しいエニーさん、ポニーテールの若いお姉さんが訪ねてきて
心配してきてくれたらしいという事を伝えてくれたそうだ
どうやら昨日声をかけて“おどし”たのが気に入らなかったのではないのかと
そうなのだ、昨日いたずらっぽく言われた事があった
(天使が怒りにくるよ)
母はとてもいいお嬢さんだといって夕食の間ずっと褒めていた
いい加減、長い先生の朝の挨拶のようで飽きてきた。

次の朝はベーコンの香りで目を覚ましたがそれどころではなかった
昨日すっかりさけていた、“考え”で目を覚ましたのだから。
(今日はしっかり教会へいこう)
自分の中でも、色々な疑問がでてきた。

 朝日がでる前に家を飛び出す
心臓はどきどきしていた。
駆けつけたのは昨日とは違う場所だった。
ベーカーさんちの隣の隣の路地裏、酒場のすぐこちらがわ。
するともやもやと何かがうごめいているのがわかった
それは、ゴミ箱のごみ袋のようで、プールの上で泳ぐアメンボがつくる波紋のようで
つかみどころのない“残像”だった。
僕の中には、その姿が、昨日学校で友人や、それ以外の人々が噂をしていた
“死神の姿に見えてきた感じがした”


(お願いです!!今日から毎日ちゃんと夕方にお祈りするので
あの人だけは、あの人はいいひとなんです、エニーさんだけは)

「何を恐れている?」
死神は老婆の声だった。
「僕の昨日の推測が思い込みならいいんです、ですが、掃除のときも、居眠りのときも、授業でくしゃみをした時も
笑われることよりも、その推測があたってしまう事がこわかった、あなたは、エニーさんの魂をさらいにきたんでしょう?」
はっとした、しまった、と思った、
今まで考えてきたことが、線でつながってしまうきがした、
夢中で心の中に無理やり覚えさせられた讃美歌を思いうかべる。
母の笑顔さえも、今はとてもまぶしいものに見えた
「それは、カマでしょう!?人の魂を狩りとるものでしょう!?」
右腕がずずずっと音をたてながらうなる、だが回答は意外なものだった。
「ああ……これかい、これはフライパンだよ」
その声には聞き覚えがあったきがした
すると今まで死神のようにみえていたそのもやは、とてもあかるい光のように見えた
「死神が最近ここらへきたというので見に来たらやはり、ここらではまだ死にそうな人はいなかったようだよ」
特徴的なえくぼ、ふっくらしたほほ、ひろいおでこに三角巾、
まちがいない、この人は
“ベーカーさん!!”
警察官のロンボさんの奥さんで、このボロボロの街でも有名なお菓子作りの有名人。
僕は声がでなかった。

「……私は勧誘されたのよ、天使にならないか?と、魂は時にこの世で役目を持つの」
少年トムは現実離れした光景を受け入れられずとぼとぼと二人であるいて、時にうなづきながらも
、ベーカーさんの家の前で、ふたつのおおきな石に二人で
こしかけて、目線を合わせないように近況を話し合った。
自分がどれほど詳しく質問をしたかは覚えていない
後から考えてみれば
くわしく、死神の事を説明を求めたのかもしれない
噂話は本当なのか、ベイカーさんか、それともエニーさんをさらいに来たのか。
ベイカーさんは1年前のように優しく答えた。
「死神は、死んだ魂を運ぶだけだし、死神になるのは人間ではないの
地獄の中でもがき苦しみ、懺悔したものが、死神になるのよ
確かにここいらに死神はいたようだけど、勘違いで、ここらに死期の近い人はいなかったわ、
それを、私は知らせにきたの」
細かく説明されたけど、よく理解はできなかった、
ただ、ほんのりと甘い香りがいまでも漂っているような気がして、
複雑な気持ちになった。
昨日までエニーさんの事ばかりきにしていた
むしろ、自分の事しか考えていなかったのかもしれない
「目撃した人間も危ないって」
親友は確かにいっていた
そんな事をつげて、それでも毎日のようにお祈りをすると、すぐ左の目の前に見える教会のてっぺんを指さすと。
ベーカーさんはやさしくそう笑って消えていった。


おしまい。

『死神と天使』

『死神と天使』 星空トクマ 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-06-09
Copyrighted

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。