日本再生案

仁科 哲夫 作

 これは独断と偏見に満ちた、日本を元気にする処方箋です。
失われた20年から脱出するために、次のことを提案したい。

1 法人税を25%にする。
2 軽減税率を適用して、消費税を20%にする。
3 TPP,FTA,EPA を世界的な範囲で締結する。
4 国会議員の選挙区の定数を人口を基準にする。増減に応じて
  自動的に変更される。
5 共通番号法を制定し、公的な記録を一元化すす。
6 移民政策を緩和し、単純労働者の入国も認める。
7 農民の各種の優遇税制を廃止する。

 これらの項目はほとんど実現不可能に近いかもしれないが、もし
総てが行われると、日本は5年で、遅くとも10年以をまたず、活
力のある国に生まれ変わるのではないでしょうか。

 TPP 問題の最大の障害になっているのは農産物、とくに米の
関税です。現在は778%の関税を適用しています。

 まだ現役のころですが、シンガポールの街を歩いていると、よく
米屋さんを見かけました。店頭に焼酎の甕(かめ)のような容器に
米を円錐形に盛り上げて、ずらっと並べています。値段板が後ろに
立ててあり、キロ当たりの値段は20円から70円でした。そのこ
ろの魚沼こしひかりはキロ600円です。70円の米は長粒米です
が、インディカこしひかりです。

 日本が一番最初に FTA を締結したのはシンガポールでした。
なぜなら、シンガポールには農業という産業項目が無いのです。食
糧はすべて外国から輸入しておりました。米の関税がどうのこうの
ともめる必要がないから、締結が早かったのです。

 シンガポールで接待されるときは、一流レストランですが、自前
のときは屋台に毛の生えたような食堂、あるいは屋台そのもので食
べました。ただの一度も、ご飯がまずいと思ったことはありません
でした。1993年に凶作で、不足した米を外国から輸入しました。
タイ米は臭くてぽろぽろして食べられないと不評でした。農水省は
外米の評判を落とすために、わざとキロ20円以下の米を輸入した
のか、あるいは業者にだまされたのではないでしょうか長粒米の中
クラス以上の米はおいしいと思います。

 一粒たりとも作っていない、このインディカこしひかりのキロ7
0円がシンガポールの、そして世界の値段です。一粒たりとも輸入
させないと叫び、日本の米作を保護するという名目で、600円の
値段を消費者に負担させているのです。だが、これだけの負担をし
てもらったら、農家は感謝感激して米作の発展に励み、消費者に還
元してくれたでしょうか。ウルグアイラウンドのミニマムアクセス
を受諾して、米の輸入が始まったために、1994年に6兆円を超
える農業対策費が計上されましたが、ほとんどが箱もの建設に使わ
れ、農業は衰退こそすれ、振興したという話は聞きません。

 税の捕捉率で「くろよん」という言葉があります。給料生活者は
9割、自営業者は6割、農家は固定資産税をはじめとして、各種の
優遇税制を受けていますが、その上に税額の4割しか払っていない
という実態をあらわしています。

 TPP が締結されると、日本の農業は壊滅すると声高に叫んで
います。わたしはもし壊滅するのであれば、つぶしてしまえばよい
とさえ思っています。シンガポールのように全量を外国から輸入す
ればよいのです。食糧安保の観点から感心しませんが、永久にでは
なく、新しい農業が育つまでの間でよいのです。

 小さな田んぼ一枚、一枚で耕耘機、田植え機、刈り取り機と小さ
な機械を各農家で使っています。もし、百倍の値段の機械にすると、
能力は千倍になるのではないでしょうか。それを使って集約された
農業を行うための障害になっているのが、農業委員会の制度です。
農地を株式会社が保有するのを禁止し、専業、兼業農家の立場で
農政を行う、農水省、JA全中の方針に従っています。

 かりに1ヘクタールの土地に、75%の面積で4階建ての工場を建
て、そこで稲の水耕栽培を行う。すでにこしひかりに最適の照明や
培養液の研究はなされております。温度、湿度などの気象条件が全
自動化された工場で、無農薬の稲作がおこなわれます。レタスの例
でもわかりますが生育は非常に早く、年に10回以上の収穫があり
ます。稲も4期作が可能でしょう。そうすると、この1ヘクタールの
生産力は12ヘクタール分になります。これを50ヘクタールにすれ
ば、600ヘクタール分になり、これでようやくアメリカの農業に
太刀打ちできます。これはわたしの空想の話ですが、全農にこのよ
うなブレークスルー的な発想の転換ができるでしょうか。

 日本の GDP は5百兆円です。農業の GDP は5兆円です。
農家人口は約600万人、総人口の5%です。この人たちが1%
の富しか創りだしていません。いかに生産性の低い産業かはこれ
でわかります。

 ずっと前から、国政選挙のたびに開票速報を見ていると、都市部
の開票が進み、革新票が多数を占めます。ああ、これで日本の夜
明は近いぞと、安らかな眠りにつきます。翌朝の新聞を見ると郡部
の開票が加わり、依然として保守当選者のオンパレードです。地方
全中は自民党の集票マシンです。

 こんにゃくの関税はなんと1706%です。カロリーベースがゼ
ロに近いこんにゃくに高率関税の大義名分はありません。これがま
かりとおっているのは、群馬県が福田、中曽根、小渕、福田と4人
の首相を出したことと関わりがあります。こんにゃくには芋屋、粉
屋、練り屋の分業がありますが、全国で6万7千トンのうち、群馬
県が6万1千トンを占めています。芋屋さんが収穫したこんにゃく
芋を粉屋さんが製粉し、練り屋さんが製品にするまでに10万票以
上の人たちがたずさわります。

 小渕首相が急逝し、その弔い合戦に娘が立候補しました。ようや
く前の年に被選挙権を獲得したばかり、政治についてはまったくの
未経験。「政策はありませんが、頑張ります」と選挙カーでマイク
を握っていました。当選なんてとんでもないと思っていましたが、
見事第一位で、有権者数の過半数を獲得しました。こんにゃくの威
力様々です。だからこんな無茶な関税もまかりとおるのです。

 最大多数の最大幸福が政治の要諦とすれば、600万人の農家の
ために、1億1千万人以上の国民が、経済的な不利益をこうむる悪
政を変えるのが、ステーツマンとしての使命です。日本の農政は政
冶よって大きくねじ曲げられてきました。わたしは農業は重要な産
業部門だと思っています。世界に通用する農業を育て上げるには、
現在の農業の形態を転換する必要があります。そのためにも、冒頭
で述べた7項目を実現する必要があると確信しています。

 これが実現したならば、新しい産業が興り、既存の産業も生産力
が向上し、農産物の価格も下がり、国内の消費市場も活性化すると
同時に、輸出競争力も上がり、税収の増加につながります。
 
 ギリシャよりも悪い国債残高も減少に向かってゆきます。そのお
かげで、国債の格下げにより、ヘッジファンドの空売り攻撃によっ
て国債は暴落し、その利払いに窮した政府はハイパーインフレに逃
がれ、日本の社会が大混乱におちいる悪夢から解放されます。

 以上が、独断と偏見に満ちたわたしの改革案の由来です。

日本再生案

日本再生案

シンガーポールの街を歩いていると、よく米屋さんを見かけます。 店頭に焼酎の甕(かめ)のような容器に米を円錐形に盛り上げて、 ずらっと並べています。値段板が後ろに立ててあり、キロ当たりの 値段は20円から70円です。そのころ魚沼こしひかりは600円 でした。70円の米はインディカこしひかりです。 接待されるときは一流レストランですが、自前のときは屋台に毛 の生えたような食堂、あるいは屋台そのもので食べます。ただの一 度も、ご飯がまずいとおもったことはありません。 インディカこしひかりキロ70円がシンガポールの、そして世界 の値段です。魚沼こしひかりキロ600円が狂っています。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2012-08-10

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