うれしいのはなぜって書き込む

うれしいのはなぜって書き込む





   


  



   


  



「あたしは欲張り。勉強だけしたらいいのに恋をする。人を求める」 

「後悔してないか」

「したことない。リルは必要です」


 アンナを慰めること、鼓舞することのために朝から超ポジティヴ短歌ばかり作った。


 今日だけは感情的にならないようにしよう。もうそうしたくない。また優しくなりたい。昨夜も感情的にならずに済んだのにな。眠れなくした原因は僕にある。今日は眠るのも、食べるのも、なにか申し訳なく思って出来ない。


今日はどんな短歌でもいい。

もう今日は。

もう今日だけは。


 アンナから昨夜またいきなり電話がかかってきた。「声が聞きたかった」。あまり長くは喋れなかった。寂しそうだった。「リルの寂しさは綺麗だけどあたしの寂しいは本当に寂しいから」。電話切るのも名残惜しそうだった。チャットが短かったので声が聴けて満足できた。


だがアンナは寂しそうだった。


 今の作品はアンナに送ることの方が目的になって発表してるのは道楽みたいな作品かもしれない。アンナに送るものだからポジティヴで明るいものが多い。それを言ったら「溢れる苦しさでもいい」と言われた。明るい詩の方が頑張れるし未来から差し込む光の度合いが全然違う。


前向きに生きる気持ちになれる。うれしい。


 日記状態の短歌。アンナが喜んでくれるし寂しいから書いてる。新しい詩を書きたい時もあるがアンナ以外思い浮かばない。


結局、アンナを書きたかった。









「立場って言うの、好きね」

病みながら皮肉る健気な優しさのひと




光の朝が溶かしてくれる

あのときはもう見ない

アンナと歩く




「みんなのまえ、ディープに舌を入れるよ」

「人も現在も突っ切るぞ、アンナ」




帰ったら

まずはケーキだ

その後は愛媛ミカンだ

楽しいぞ

待つ




二人で蜜柑の皮を剥く 

しみじみとラブホ

人生は二歩三歩




幸せは歩いてこないから

ミラジーノで追いかける二人だった




短歌一首100円なら五つ作り

おまえにケーキ買って帰る




なにを言えばいい

わからないときセックスできたらと電話で思う




「リルには帰る思い出があるからね」

親子ほどをも歳の離れて




リルの過去への嫉妬、スケールがでかいのよ。

初恋みたいなものよ。




彼がやさしく笑うと、私、うれしいのはなぜって書き込んでみる。




『樹下の二人』を愛するひと

あどけなく女の子の女の想い










 アンナは最近いつもの熱がまったくなかった。「リルのおかげかな」とも言ってた。電話とチャットだから見えないが昨夜は随分僕のことで心を悩み砕いて号泣したようだった。その直後に熱が出た。これ以上なく、すまない気持ちだった。


僕の小さな猜疑心が発端だった。

逆に僕はアンナへの強い気持ちに気づいた。


「綺麗なものが好きなのに、綺麗なものが寂しい。寂しいから綺麗なの」

熱が出たアンナが即興で書いた。

「綺麗なものでも寂しいものでも、ふたり分け合えば、それも楽しい」

僕はアンナに返した。


 今日一日だけ過去の作風に戻そうと思った。全文英語の詩にしようかと思ったが飛躍しすぎなので結構理屈っぽい詩にしようと決めた。決めた時点でアンナのDMを見た。すごく切なくなった。思わず書き込むとアンナとチャットできた。


アンナを思うとやっぱり今のままを今日も続けたいと思った。そんな俺。


 詩歌に拮抗できる関心はプロ野球しかない日曜日。 今年初めて一試合見ただけで頭が野球しか思いつかない。 通常の短歌が浮かばない。 アンナさんにまで野球の話を持ちかけた。 野球とアンナさんがせめぎあって、短歌が思い浮かばない。しかしやはり野球よりもアンナさんの方が好きなんだな。 当たり前かもしれないけどね。


一瞬の寂しさで分かった。






   


  



   


  

うれしいのはなぜって書き込む

最初は『アンナを書くダイアリー』というタイトルにしようと思った。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq38

うれしいのはなぜって書き込む

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-05

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