そんな勇気があったなら


荷物が重そうで、可哀想でした。
どうしても、手伝ってあげたくて苦しかったのです。

どうしたらいいのでしょう。

どうしたら荷物が軽くなるのか、
どうしたら本当の笑顔が見れるのか。

どうしたら、その重さに耐えかねて墜落することのないようにできるのか。

私は半分持とうとしました。
僕のだからと笑って断られました。

私は話を聞くことにしました。
話してはくれませんでした。

私は捨ててしまおうと提案しました。
それは怖いと言われました。

足取りはだんだん、覚束なくなってゆきます。

やがて崖の淵にあわやというところで、
とうとう私は荷物を取り上げました。
当然取り返そうとするので、私は尋ねました。

どうしたら、楽になる?
全部を捨てられないなら、分別して捨てたらいい。
持てるものだけ持てばいい。
君は、これをどうしたい?
私は、荷物をそっと置きました。

激しく泣いていました。
本当はちゃんと持てる自分でありたかった。
本当は苦しい思いを誰かに聞いてほしい。
本当は、こんなもの捨ててしまいたい。

私は荷物の中身をぶちまけました。
今から分別しますよ。
構わないから、私にちょうだい。
構わないから、誰かに押し付けなさい。
構わないから、捨ててしまいなさい。
君が持てるようになれば、また請け負えばいいからさ。

これは私の命令だ。
その申し訳ない気持ちごと、私にちょうだい。

崖の下になんて、行かせない。

そんな勇気があったなら

そんな勇気があったなら

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-31

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