途惑わないバウムクーヘン

途惑わないバウムクーヘン




   


  



   


  



目覚めたら午後の陽射し

ぼくを占う

ぼくは今日どこまで行けるか



カフェインと午後の気体をせっせと注入

世界と交わりたい



しあわせは瞬き一つでみる

刹那にはある 瞬間がしあわせ



目覚めのコーヒーは

おまえへのインスピレーション 昨夜の哀しみ



途惑わないバウムクーヘン

あの日から決めていた おまえを背負うと



日々は還らなくていい

すべてのおまえと俺に後悔していない



星占いよりも信じる

過去も今もこの先も

手のひらのなか



「夕方が一番嫌い」

「夕方はかわいそうね。リルに嫌われて」



「今朝は元気よ」

「そうか、うんうんよしよし」

「リル」

「なに?」

「お父さんみたいね」



「元気?」

「陽が長くなって過ごしやすい」

「リルったら、おじいちゃんみたいね」



バターパン食べるのに

牛乳がないけど

こころおだやかがうれしい



嫌いな夕方としばらく仲直りする

いっしょにあの人を待つ



さみしさってガソリンかな

さみしくないはレギュラー満タンなのかな



「美人もつらいのよ」「だれのことだよ?」

 ツッコミは関西人の定め



「あたしが高みを求めるのは自分にだけよ、そのままのリルが好き」



「当たり前じゃあないの、リルより上がそのまた上に上がいるのよ」



「ほんとはいつも信じてる。でもときどき神さまが意地悪をするの」



「おれのこころ、神さまでも動かせない」

信じなければ神はいない



アンナが しあわせを

取り戻す子供で

待ち望む女だった



夏日は

思い出す人を思い出すふりだけしている

緑のなか



ホットコーヒーの熱さ

人が去り人が現れる幻惑の初夏



初恋であそぶドッジボールの子供

冷えたカルピスの味だった



風 かき氷の恋を運んだあの夏

あの夏だけだった記憶



心臓を刻む

 電話を待つ

 あの人を待つ

 初めてのことを待つ



満ちた

深き

湖底

声は救命だった

声は離れられなかった



僕が 辿れない

傷み 寂しさの極北

          薪をくべて佇んだ



どこまでも    どこまでも

     あの人へ

          きっと きっと きっと  この涯てまでも



ずっと を あずける

「ずっとずっといようね」

ずっとが めまいする やすらぎ



だれもいなかった

深い森の中の火

    焼ける炎は

    永久を願った



近いから

遠い

嬉しかったから 寂しい

       いつまでも ここから先



飲みほさないラムネは朝まで残った

一緒に

生きたいと思った



チーズのせつなさ

未来 占う

朝の陽は信じてくれるだろうか





   


  



   


  

途惑わないバウムクーヘン

「アンナ」をテーマにした詩を愛している。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq38

途惑わないバウムクーヘン

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-22

Copyrighted
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