*星空文庫

コイビト

如月 作

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※京さん→樹新さん→大河丸さんです

1

 僕は樹新さんと付き合っている。正確には、僕が彼を脅して無理矢理付き合わせているんだけれど、僕と彼は恋人同士に違いなかった。

「樹新さ~ん」

 樹新さんに抱き着くと、彼はびくりと肩を跳ねさせて、僕を見た。

「……京さん」

 樹新さんの、怯えたような目。その目にぞくぞくして、僕はにこりと笑う。

「今からヤろうよ。あ、拒否権はないからね?」

 樹新さんは顔を強張らせて、「……分かりました」と頷いて、上着を脱いでシャツのボタンを外した。
 露になった彼の胸に手を滑らせて、揉むように触れると、樹新さんの肩が震えた。

「……怖い?」

 問い掛けると、樹新さんは首を横に振る。
 しかし、彼の様子から彼が怖がっていることは明らかで、嗜虐心のようなものが湧き上がってにやりと笑う。

「大丈夫、優しくするから」

 樹新さんの胸から手を離して、彼の顔に自分の顔を寄せて、彼の唇に口付けた。


 僕は、決まって樹新さんを優しく抱いた。
 優しく彼にキスをして、優しく彼を抱き締めた。
 でも、樹新さんは決まって目元に涙を溜めて、体を震わせていた。

 樹新さんは、僕の「恋人」だから、僕は彼を大切に扱っていた。
 でも――どれだけ彼を大切にしても、彼の目から怯えの色が消えることはなかった。



 キュン活ほっとらいんの活動中、大河丸さんを見て切なげに目を伏せる樹新さんを見て、またか、と眉を寄せる。
 樹新さんは実はバイセクシャルで、大河丸さんのことが好きだ。
 僕が知った彼の弱味はそれで、僕と付き合わなければ会社の人達に言い触らすと脅して彼と付き合うようになったのだ。

「樹新殿。先程から拙者を見ているようだが、拙者の顔に何か付いているか?」

 大河丸さんに話し掛けられた樹新さんは目を見開いて、カッと頬を赤らめて、慌てたように言う。

「何も付いていませんよ」

「?では何故拙者を見ていたのだ?」

「……そ、それは……」

 頬を赤くしながら目を伏せる樹新さんに、更に眉が寄るのが分かって、僕は立ち上がって彼らに背を向けた。

「お邪魔みたいだから、僕は帰るね」

 それだけ告げて、部屋から出て、早足で会社を出て――先程見た樹新さんの顔が脳裏に蘇って、唇を噛む。

(……あんな顔、僕には見せない)

 彼が僕に見せる顔は、強張った表情ばかりだ。
 胸が苦しくなって、立ち止まって拳を握り締めた時。

「京さん!!」

 僕を呼ぶ声がして、はっとして振り返ると、樹新さんが此方に駆け寄ってくる姿が視界に映った。

「京さん!待ってくださ――」

 僕は樹新さんの腕を掴んで、歩き出す。

「京さん……?」

 樹新さんの戸惑ったような声が聞こえたけれど、それを無視して、強引に彼をつれながら歩き続けた。


 向かった先は、ラブホだった。
 ラブホに着いて受付を済ませて部屋に入った僕は、樹新さんを壁に押し付けて、食うように彼の唇に口付けた。

「……は、んん!」

 舌を入れて樹新さんの舌と絡ませると、彼はびくりと肩を震わせて、僕に体を預けてきた。

「……っは、……ぁ……っ」

 執拗に彼の舌を舐め続けて、唇を離して――彼の首に唇を寄せて、歯を立てる。

「っ……!」

 噛んだ箇所からは赤い血が流れて、それを舐めとって、彼の服に手をかけて脱がしていく。

 ずっと、大切に扱ってきた。
 「恋人」である彼を傷付けないように、彼に優しく触れてきた。

(でも……もう、限界だ)

 強引に服を脱がせて、強引に彼の体に口付けて――

 やがて勃ち上がったそれを、慣らされてない彼の中に強引に押し込んだ。

「あ、あああ!!」

 悲鳴を上げる彼を逃がさないように硬く抱き締めて、何度も彼の中に突き上げる。
 
「……僕を、見てよ……!」

 目頭が熱くなって、きつく目を閉じる。
 
「あの人じゃなくて、僕を好きになってよ……!」

 胸に抱く想いを乗せながら、何度も彼を穿つ。

「僕は、あなたのことが、こんなに……好きなのに!」

 不意に悲鳴が止んで、はっとして樹新さんを見ると、彼は力無く目を閉じていた。

「……樹新さん……」

 彼に手を伸ばそうとして、その手を引いて、唇を噛んだ。

 意識を失った樹新さんをベッドに横たわらせて、僕は彼の顔を見つめた。
 47歳とは思えない、綺麗な顔。その顔を見つめ続けて――彼の唇にキスを落として、立ち上がる。

「樹新さん……ごめんなさい。それと……さようなら」

 樹新さんに別れを告げて、テーブルに置かれた紙にペンを走らせて、彼に背を向けて部屋を出た。
 


 目を覚まして、辺りを見回して、京さんの姿が見当たらないことに気付いた私は焦燥に駆られる。

(京さん……あの人はどこに行ったんだ?)

 スマホを取り出して京さんに電話を掛けるが、繋がらない。
 慌てて立ち上がろうとしたが、体の痛みから立ち上がることが出来なかった。

「っ……」

 顔をしかめて、あるものが視界を掠めて、そちらに視線を向ける。

「これは……メモ……?」

 テーブルの上に置かれた一枚の紙切れを手に取って、そこに書かれた文字に目を通した私は目を見張った。

『 樹新さんへ
 今まで無理に僕に付き合わせちゃってごめんね。でも、これからは自由だから安心してね。
 僕は、武者修行の旅に出ることにするよ。いつ帰ってくるかは分からないな、もしかしたら一生帰らないかも。だから、さようならって言っておくね。
京育夫』 

「…………」

 俯いて、紙を持つ手を震わせる。

 ――……僕を、見てよ……!

 京さんの悲痛な叫びが蘇る。

 ――あの人じゃなくて、僕を好きになってよ……!僕は、あなたのことが、こんなに……好きなのに!

「……京さん……」

 彼の名前を呼んで、紙を握り締める。
 私はその場から動くことが出来なかった。


 翌日会社に行くと、そこには京さんの姿はなかった。
 法堂さんの話によると京さんは会社を辞めて旅に出たようだった。

(……京さん)

 京さんの姿を探して、彼が何処にもいない事実を突き付けられ、その場に崩れ落ちて、京さんに傷を付けられた首を抑えた。

『樹新さん、あなたはバイセクシャルで大河丸さんのことが好きなんだよね?』

 あの日、京さんは笑顔でそう言って、私を脅した。

『僕と付き合わないと、このことを会社の人達にバラすから』

 恐怖に駆られた私は彼と付き合い始めた。
 弱味を握られた私は京さんに逆らうことが出来なくて、ただただ彼に抱かれた。

 京さんは、いつも優しく私に触れた。
 だから――あの日、彼に乱暴に触れられて、酷く動揺して――

「……」

 その場から動けずにいると、不意に「樹新殿!?」と私を呼ぶ声がして、はっとする。

「大丈夫か!?」

 大河丸さんが、私の傍に来て気遣うように私を見た。
 想いを寄せている相手に声を掛けられても、私の頭の中は京さんで一杯だった。

「京さんが、いなくなってしまいました……」

 首を抑える手が震え出して、目頭が熱くなって、涙が滲む。


「京殿は、絶対に帰ってくる!」

 やがて大河丸さんが発した言葉にはっとして顔を上げる。

「拙者らが彼を信じないで、誰が彼を信じるというのだ?」

 茫然と大河丸さんを見据えると、彼は力強く笑った。

「……そうですね。京さんは帰ってきますよね」

「ああ!」

 大河丸さんの笑顔に胸が高鳴るのを感じていると、彼は真面目な顔になった。

「樹新殿は……京殿に惚れているな」

「……え?」

「戦の世では男色も珍しくないな。拙者はそなたを応援するぞ!」

 真剣な顔で私の肩を叩いて、大河丸さんは去っていく。
 彼の背中を見送った私は、空を見上げた。

「私は……京さん、あの人のことが……」

 そう独りごちて――空を見つめ続ける。
 私は何時までも、傷跡が残る首を抑えていた。

2

 私は京さんの帰りを待った。京さんが帰ってくる保証は何処にもない。しかし大河丸さんの「京殿は必ず帰ってくる」――その言葉を信じて、彼の帰りを待ち続けた。
 そうして、三年の月日が流れて――京さんが東京に帰ってきた、その知らせを聞いた私は京さんが住むマンションに向かった。

 マンションに辿り着いて、インターホンを押すと、京さんの声が聞こえた。
 三年ぶりに聞く彼の声に胸が一杯になって、何も声を発せずにいると、京さんが不審げに言った。

「イタズラかな?……まあ、いいや」

「……待ってください!」

 通信を切ろうとする京さんに声を掛けると、彼が息を呑むのが分かった。

「その声は……樹新さん……?」

「はい。私です。京さん……あなたに、会いたいです……」

 三年間抱き続けていた想いを告げると、通信が切れる音がして、扉が開く音と共に京さんが姿を現した。

「京さん……!」

 三年ぶりに見る彼の姿に笑みを浮かべる。
 京さんは階段を下りて、私から少し離れた場所で足を止めた。

「樹新さん……」

 私は彼に笑いかける。

「京さん……おかえりなさい」

 京さんの顔が歪んで――彼の顔が伏せられた。

「…………あなたは、まだあの人のことが好きなの?」

 やがて京さんの口から発せられた問い掛けに、少し思案して答える。

「好きですね」

「……!」

「でも」

 京さんを真っ直ぐに見据える。

「あの人以上に……あなたのことが好きです」

 あの日、芽生えた想い。
 それを伝えると、京さんは顔を上げて、茫然と私を見据えた。

「それは……本当?」

「はい。本当です」

 京さんに近付いて、彼の右手を掴んで私の胸に添えさせる。

「私の心も体も、あなたのものです」

 他の、誰のものでもない。

「私はあなたの……恋人ですから」

 京さんの手がピクリと動いて、彼の目が見開かれる。

「そんなこと言って……いいの?今すぐ、あなたを抱くよ」

「構いません。あの時のように私を抱いて……私を愛してください」

 京さんの手が震えて、彼の手が私の腕に移動して、強い力で引っ張られる。
 あの日と同じように部屋につれていかれて、部屋に入った瞬間に口付けられる。

「……ごめん。加減出来そうにない……」

 キスの合間にそう漏らして、京さんは私を抱き締めながら、私の口内を犯す。

「……ふ。……っは、ん……」

 京さんの舌に犯される感覚にぞくりとして彼に体を預けると、京さんは噛み付くように私の唇を塞いだ。

(……嗚呼、この感覚だ)

 相手に、食われているような感覚。
 この感覚が、震えるほどに恐ろしく――愛おしい。

(……京さん)

 もっと、私を乱暴に抱いて――もっと、私を愛してください。

 京さんが与える痛みに心地よさを感じていると、京さんは勃ち上がったぺニスを取り出して、私のズボンをずり下げて、私の中に押し込んだ。

「ッ!!」

 先程とは比べようがない痛みが襲ってきて、京さんにすがり付くと、容赦なく突き上げられた。

「あッ!!うぐっ…!!は、!!」

 痛い。痛くて仕方がない。
 目を閉じると、涙が零れ落ちるのが分かった。

「きょう、さ!!……ん!!ああッ!!」

 痛みに必死に耐えて――
 しかし、私の口許は弧を描いていた。

(この人に、愛されている)

 そう、実感出来たから――

(……京さん。もっと。もっと、私を――)

 容赦のない突きは続いて――やがて自分の中にどろっとしたものが流れ込む感覚がして、私は意識を手放した。



 優しく、頭を撫でられている。
 目を開けると、京さんが眉を寄せながら私を見つめていた。

「……ごめん」

 頭を撫でる手を止めて、京さんは顔を伏せた。

「また……加減が出来なかった」

 私はしかし、口許を緩める。

「構いません。ああやって抱かれる方が私は好きですし」

 京さんがガバリと顔を上げて私を見る。

「樹新さんって……マゾだったの!?」

「……マゾなのかは分かりませんが、優しく抱かれるよりは乱暴に抱いてほしいですね」

 本心を伝えると、京さんは唇を尖らせる。

「それならそうだって言ってよ。あなたを気遣って優しく抱いてた僕が馬鹿みたいだ」

 毒づく彼に苦笑して、彼に手を伸ばして頬に添える。

「京さん。私はあなたが好きです」

 私の告白を受けた京さんは頬を赤く染めて、私の手に自分の手を重ねた。

「僕も……あなたが好きだよ」

 告白を返して、真剣な表情を浮かべる。

「あなたを、誰にも渡さないよ。あなたの心と体は、僕のものだからね」

 真っ直ぐな彼の言葉に笑みを深める。

「はい。私は、あなたのものですから。もう……私を置いていなくならないでくださいね」

 京さんの目が揺れて、その目が伏せられる。

「うん……。二度と……勝手にいなくなったりしないよ」

 京さんの言葉に安堵して、息をつくと、京さんは求めるように私を見た。

「今日は……一日中あなたを抱いていていいかな」

「構いませんよ。私もそうしてほしい気分です」

 京さんが私の隣に横たわり、私の背中に手を伸ばして私を抱き締める。

「好きだよ……樹新さん」

 彼の告白に笑みを深めて――私は彼を抱き締め返した。


end.

『コイビト』

京さんに優しく抱かれているうちはそうでもなかったけどある日京さんに強引に抱かれて無自覚Mな樹新さんは落ちてしまったよという話。
この二人はあまり幸せな感じはしませんが、体とかの相性は良いと思います。
ここまで読んで下さってありがとうございました!

『コイビト』 如月 作

キュン活二次。無自覚Sな京さんと無自覚Mな樹新さんのお話。えろシーンがありますが短い上にえろくないです。BLなので苦手な方は注意してください。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日 2017-05-20
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