*星空文庫

如月 作

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※京さん×樹新さんです
※全体的に暗いので注意

1

 僕は樹新さんと付き合っている。恋人である彼と一緒に過ごす時間は楽しくて、幸せだった。
 だから――その日、樹新さんに会社の屋上に呼び出されて、そこで彼が告げた言葉に耳を疑った。

「え……今、何て言ったの?」

 樹新さんは目を伏せながら、低く告げた。

「だから、別れましょうと言ったんですよ」

 どうやら聞き間違いではなかったようだ。

「どうして……?どうしてそんなこと言うの!?」

 僕を見ないまま、樹新さんは感情が読み取れない声で答える。

「あなたのことが、好きではなくなったんですよ。もう、あなたに触れられたいとも思わない。だからですよ」

 樹新さんの言葉に衝撃を受けて顔を強張らせる。

「……嘘、でしょ……?」

 樹新さんは、何も答えない。
 僕は樹新さんに近付いて、彼の腕を掴んだ。

「……嫌だ。僕は、あなたと別れたくない」

 ずっと、この人のことが好きだったんだ。
 それなのに、この人と別れるなんて嫌だ。

「…………見苦しいですね」

 不意に氷のように冷たい声がして、はっとして樹新さんを見ると、彼は冷たい眼差しで僕を見据えていた。

「言ったでしょう、私はもう、あなたのことが好きではないんですよ。私に二度と触らないでください」

 樹新さんの拒絶に再び衝撃を受けて、彼の腕から手を離して、顔を伏せる。
 目元にじわりと涙が浮かんで、頬の上を流れ落ちた。
 泣いている僕に、樹新さんは何も言わない。そのことが悲しくて、次々と涙が溢れて、ぽつぽつと零れ落ちた。

「…………さようなら」

 やがて樹新さんはそれだけ告げて、僕に背を向けて去っていった。
 残された僕は、ただただ泣き続けた。
 涙は、止まる気配を見せなかった。


 樹新さんと別れた僕は、会社を無断で休んで家に篭る日々を過ごしていた。
 何も考えられなくて、ただ布団を被っていると、ブルルルルとスマホが震える音がした。
 その音を無視しても、何度もスマホが震えたため、仕方なくスマホを手にとって、画面を見る。

(法堂さんか……)

 きっと、説教をするために僕に電話したんだろう。
 そう推測して、げんなりしつつ電話に出る。

『やっと出ましたか……京さん、落ち着いて聞いてください』

 法堂さんが、焦燥に駆られた様子で告げる。

『樹新さんが、自殺未遂をしました』

(…………え?)

 言われたことが理解出来ず固まる僕に、法堂さんは説明した。
 樹新さんが、マンションの屋上から飛び降りた。すぐに救急車で病院に運ばれて、幸い一命はとりとめたが、頭を強く打ったようで、目を覚まさない。
 法堂さんの説明を聞いて、漸く事態を理解して、電話を切って家を出て、法堂さんに教えられた病院に向かった。


 病院に着いて、受付で樹新さんがいる病室を聞いて、その病室に向かって、扉を開けて中に入って――そこで眠っている樹新さんを見て、目を見張った。

「……樹新さん……」

 樹新さんの頭には包帯が巻かれていて、彼の口には呼吸器が取り付けられていた。
 樹新さんに近付いて、彼の手に触れようとして――彼の言葉を思い出して、自分の手を引く。

「……どうして」

 どうしてこの人は、自殺なんてしようとしたんだ。
 胸が苦しくなって俯いて、拳を握り締めた。



 会社を休んで、僕はベッドで眠る樹新さんの傍にいた。
 そうして樹新さんの目が覚めるのを待ち続けて――樹新さんが病院に運び込まれてから一週間後に、漸く彼は目を覚ました。

「樹新さん……!」

 目を開けた樹新さんに声を掛けると、彼は僕を見て、不思議そうな顔をした。

「あなたは……誰ですか」

 樹新さんの口から出た問い掛けに、目を見開く。

「僕は、京育夫だよ?樹新さん、僕を忘れちゃったの?」

 樹新さんは眉を寄せて僕を見る。

「……あなたとは、初めてお会いします」

 樹新さんの様子に不審なものを感じて、僕は慎重に問い掛ける。

「樹新さん……自分の名前と誕生日は分かる?」

「…………」

 樹新さんは更に眉を寄せて、困惑気味に告げた。

「……分かりません。私は……誰なのですか?」

 樹新さんのその言葉に、ある可能性が浮かんで、立ち上がって医者を呼んだ。


 記憶喪失。医者から聞いた話によると、樹新さんはその症状に陥ってしまったようだった。頭を強く打ったことにより、樹新さんは僕のことだけではなく自分のことすら忘れてしまった。

「彼は、自殺しようとしたんですよね?その苦痛から逃れるために記憶を失った可能性もあります。いずれにせよ彼の精神は非常に危うい状態です。できる限り彼の傍にいてあげてください」

 医者にそう言われて、僕は樹新さんの傍にいることを決意して、彼の元に戻った。


 ベッドにいる樹新さんに、僕は笑いかけた。

「さっきも言ったけれど、僕は京育夫。あなたの……同僚だよ」

 恋人とは言わずにそう言って、笑顔のまま続ける。

「あなたの名前は樹新涼っていって、あなたはNHKで働いていたんだよ」

 樹新さんは「じゅしんりょう……?」と自分の名前を繰り返して、「変な名前ですね」と小さく笑う。
 樹新さんの笑顔を見て、彼に触れたくなって――彼の言葉を思い出して、それを抑える。
 どうして、あなたは僕に別れを切り出したの。
 どうして、あなたは自殺なんてしようとしたの。
 そう問い掛けたいのを抑えて唇を噛む。

「京……さん、私は、どんな人間だったんですか?」

 問い掛けられて樹新さんを見て、口許を緩める。

「あなたは……とても、優しい人だったよ。誰よりも優しくて、誰よりも泣き虫で、誰よりも……」

 その先は声にならずに俯くと、樹新さんが笑う気配がした。

「あなたのような同僚がいて、私は幸せだったんでしょうね」

「……幸せ……だったのかな。僕がいて、不幸だったのかもしれない……」

 樹新さんの冷たい眼差しと冷たい声が蘇って強く拳を握り締める。

「……不幸ではないと思います。私は、何も覚えていませんが……きっと幸せだったと思います」

 樹新さんを見ると、彼は穏やかに笑っていて――
 堪らず彼に手を伸ばして、彼を抱き締めた。

「……京さん……?」

 不思議そうに僕を呼ぶ樹新さんをぎゅっと抱き締めながら、僕の目元から涙が溢れるのが分かった。

「……う、……うっ……」

 嗚咽を漏らしながら泣くと、僕の背中に手が回されて、そっと擦られた。
 僕は彼を抱き締めながら、ひたすら泣き続けた。

2

 全ての記憶を失った樹新さんは、まるで何かに解放されたように穏やかに笑っていた。
 樹新さんのその笑顔を見るとホッとして、でも胸が苦しくなって、決まって僕は彼から視線を逸らした。

 やがて樹新さんが退院して、会社に復帰して、僕も会社に戻った。
 樹新さんの記憶は戻らなかったけれど、彼は問題なく仕事をしているようだった。
 僕から離れた場所で仕事をしている樹新さんを、僕はただ見つめていた。
 僕は樹新さんの同僚として彼に接し続けた。樹新さんの笑顔を見るたびに僕の胸には痛みが走ったけれど、僕はそれを無視した。

 そうして月日は流れて――ある日、夢を見た。
 まだ僕と樹新さんが恋人同士だった頃の夢。
 そんな幸せな夢を見て、目を覚ました時涙を流していた。

「……嫌だよ……」

 涙を拭いながら、呟く。

「あなたが僕のことを忘れたままだなんて、そんなの嫌だよ……!」

 それは、僕の本心だった。
 たとえ、樹新さんが望んで僕のことを忘れたのだとしても。
 彼が僕のことを忘れたままなのは、嫌だった。


 その日から、僕は樹新さんを避けるようになった。樹新さんに鉢合わせないように努めて、彼の姿を視界に入れないようにした。そんな僕に、樹新さんは何も言わなかった。彼は黙って僕を見つめていた。彼の視線は常に感じていたけれど、僕はそれに気付かないふりをした。


「京殿、樹新殿と喧嘩でもしたのか?」

 大河丸さんが問い掛けてきて、少し思案して、「そうだよ」と頷く。

「……そうか。樹新殿は……そなたが傍におらず、寂しそうだ」

 大河丸さんの言葉に目を見開くと、彼は真剣な眼差しで僕を見据える。

「無理強いはせぬが……樹新殿と仲直りをしてくれぬか?」

 僕が言葉に詰まっていると、大河丸さんは悲しげに目を伏せた。

「拙者は……樹新殿が傷付く姿を見るのは二度と御免だ」

「…………」

「京殿。樹新殿を……頼む」

 大河丸さんは僕の肩に手を置いて、去っていった。
 残された僕は、離れた場所で仕事をしている樹新さんを見つめる。

(……僕が、あの人の傍にいていいんだろうか)

 それに対する答えは出なかった。



 久しぶりにキュン活ほっとらいんのスタッフ4人で飲みに行って、樹新さんと視線を合わせないようにビールを飲んでいると、「樹新さん!」と法堂さんの慌てたような声が聞こえた。

「飲みすぎですよ!あなたはお酒に強くないのですから、控えないと」

 その言葉に樹新さんに視線を向けて、目を見張る。
 樹新さんの顔は赤くなっていて、彼の目は眠たげに伏せられていた。

(この人、酔ってるよ!)

 嫌な予感がした時、樹新さんと目が合った。

「……京さん、何故私を避けるのですか?」

 樹新さんが悲しげに、睨むように僕を見てきたため、内心で冷や汗を流す。

「あ……いや、これには色々事情が……」

 笑顔をつくって誤魔化すと、樹新さんは立ち上がって、僕の隣に腰を下ろして――僕に抱き着いた。

「……!??」

「…………京さん。あなたが傍にいないと……寂しいです」

 耳元でそんなことを囁かれ、カッと頬が赤くなるのを感じて、困惑した。

(やっぱりこの人、酔ってるよ!)

 樹新さんの体温に心臓が早鐘を打つのを感じていると、法堂さんが静かに告げた。

「どうやら、私達はお邪魔のようですね。会計は私が済ませておきますから、どうぞごゆっくり」

 法堂さんが大河丸さんを連れて去っていく。

(二人きりにしないで~!!)

 僕のその叫びは虚しく、彼らの姿が消える。
 自身に抱き着く樹新さんを見て僕は息を吐く。

「あなたに寂しい思いをさせたのは謝るよ」

 樹新さんを抱き返すと、彼は安心するように息をついた。

(でも……今のあなたと一緒にいるのは辛いんだ。あなたは、僕のことを覚えていないから)

 そう伝えるべきか迷っていると、僕を抱く腕から力が抜けた。

「樹新さん?」

 樹新さんの顔を覗き込むと、彼は目を閉じていた。

「……寝たんだね」

 眠っている樹新さんを起こさないように彼を抱えて、居酒屋を出てホテルに向かう。

 ホテルに着いて受付を済ませて、部屋に入って樹新さんをベッドに横たわらせて、彼に布団を掛ける。

「樹新さん、おやすみ」

 そう声を掛けて、立ち上がって風呂場に向かった。

 シャワーを浴びて寝巻きに着替えて、ベッドで眠っている樹新さんを見据えた。

(正直……溜まってるんだよね)

 しかし、眠っている――記憶を失っているこの人に手を出す訳にはいかない。

(……でも、ちょっとキスをするくらいなら……)

 それぐらいなら許されるよね。そう自分に言い聞かせて、樹新さんに顔を近付けて――彼の唇に自分のそれを重ね合わせた。

(樹新さん、好きだよ)

 心の中で伝えて、直ぐに唇を離して、自分のベッドに入って眠りについた。


 誰かに、キスをされている。

(ん……?これは夢かな?)

 朧気な意識の中で目を開けると、樹新さんの顔が間近にあって、驚愕する。

「わあっ!?」

 僕と樹新さんの驚きの声が重なって、樹新さんの顔が離れた。

「……え?え?」

(……まさか、僕にキスをしたのは、樹新さん?)

 状況を理解してガバリと起き上がり、顔を赤くしている樹新さんに問い掛ける。

「まさか樹新さん、記憶が戻ったの!?」

 しかし樹新さんは首を横に振った。

「……朝、目が覚めて、あなたの寝顔を見たら……気付いたら、あなたに……キ……キスをしていました。私は、男なのに……。気持ち悪いですよね、すみません……」

 謝罪する樹新さんに、「ううん」と首を横に振って、彼に近付く。

「嬉しいよ。だって、僕は……」

 その先は声には出さず、樹新さんの肩を掴む。

「さっきの続きをしよう?」

 樹新さんは迷うように僕を見る。そんな彼を安心させるように、僕は彼に笑いかけた。

「大丈夫、優しくするから」



(――記憶を失っているこの人に手を出したら、いけないのに)

 頭では警鐘が鳴っている。しかし、僕は自分の欲望を抑えることが出来なかった。
 僕に口付けられて、感じている自分に樹新さんは戸惑っている様子だった。僕はそんな彼を優しく抱き締めて、優しく触れて――そうして、優しく彼を抱いた。

 射精して意識を失った樹新さんを、僕は抱き締める。

(……僕は、馬鹿だ)

 記憶を失っているこの人に手を出すなんて。
 後悔が湧き上がって唇を噛んで、樹新さんから手を離して、彼から離れて立ち上がる。

(これから、どうすればいいんだろう)

 考えても答えは出なくて、僕はその場から動くことが出来なかった。

3

 樹新さんを抱いて以来、僕と樹新さんは時々会ってセックスをするようになった。
 樹新さんの記憶は戻らなくて、始めは彼は僕に触れられて感じる自分に戸惑っていたけれど、僕とのセックスに慣れてからは僕に触れられると嬉しそうに笑うようになった。
 樹新さんの笑顔を見る度に、罪悪感が湧き上がって胸が痛んだけれど、僕は樹新さんを抱き続けた。


 そんな恋人なのかセフレなのか分からない曖昧な関係を続けて、何となくこれからもこの関係が続くんだろうな、と思った僕の考えは裏切られた。

「やめましょう、こんなことは」

 あの日と同じように、樹新さんは僕を呼び出して、感情が読み取れない声で告げた。

「あなたは、私なんかを抱かずに、一人の女性を愛して幸せになるべきです」

 樹新さんの言葉に眉を寄せて、強く拳を握り締めた。

「あなたはそうやって、また僕を捨てるんだね」

 そう告げる僕の声は、自分のものとは思えないほど冷たかった。

「……あなたがそれを望むなら、僕はもう、あなたを抱かないよ」

「…………」

「記憶を失ってるあなたを抱いても、面白くないからね」

 樹新さんは目を見張る。
 駄目だと分かっていても、止まらなかった。

「記憶を失っているあなたなんか、こっちから願い下げだよ」

 吐き捨てて、樹新さんに背を向けてその場を去った。



 樹新さんが失踪したのは、それから三日後のことだった。
 樹新さんがいなくなった。その知らせを聞いた僕は目を見張って、背筋が冷えるのが分かった。

「樹新さんがいなくなったって、どういうこと!?」

 法堂さんに問い詰めると、彼は深刻な表情で告げた。

「営業の仕事中に、突然姿を消したようです。同僚が彼の家を訪ねても、彼はいなかった」

 法堂さんの説明に、以前医者に告げられた言葉を思い出す。


 ――彼は、自殺しようとしたんですよね?その苦痛から逃れるために記憶を失った可能性もあります。いずれにせよ彼の精神は非常に危うい状態です。できる限り彼の傍にいてあげてください。

 
 気付いた時、僕は駆け出していた。
 樹新さんが何処にいるかなんて分からない。しかし僕は彼の姿を探し続けた。
 必死に探して――ある場所が浮かんで、無我夢中でその場所に向かった。

 その場所――樹新さんが飛び降りたマンションの屋上に着いて、柵の向こうにいる人の姿に目を見張って、直ぐに彼に駆け寄った。

「樹新さん!!」

 彼の名前を呼ぶと、彼は此方に振り返った。

「……京さん」

 樹新さんは僕を呼んで、寂しげに笑った。

「最期に、あなたに会えて良かった」

 最期――その言葉に彼がしようとしていることを確信して、焦燥に駆られる。

「樹新さん、自殺なんてやめてよ!!」

 思い切り叫ぶと、樹新さんの目が揺れる。

「……私はもう、疲れたんです。私を……楽にさせてください」

 悲しく笑う樹新さんに息を呑むと――彼は僕に背を向けた。

「さようなら」

 樹新さんの体が、落ちて――

「――――!!」

 反射的に体が動いて、柵の向こうに手を伸ばして樹新さんの腕を掴んだ。

「……ぐっ……」

「……京……さん?離してください……!」

 樹新さんの腕を掴む手に力を込めながら、僕は下にいる彼を真っ直ぐに見据える。

「離さないよ、絶対……!絶対に、あなたを死なせない!」

(絶対に、死なせるものか……!)

 樹新さんの腕を引っ張り上げて、彼の体を引き上げて――彼が逃げないように、強く抱き締めた。
 樹新さんの温もりを感じながら――彼が傍にいることに、彼が生きている事実に涙が溢れ出す。

「……良かった……あなたを、助けられて……」

 涙が、頬の上を零れ落ちる。

「あなたに酷いことを言って、ごめん……。それともう二度と、こんなことはしないで……あなたが死んだら、悲しいよ」

 泣きながら訴えると、樹新さんの肩が震えて、強い力で抱き締め返された。

「……ごめんなさい……京さん。本当に……ごめんなさい……」

 涙声で謝罪する樹新さんの背中をそっと擦る。
 僕達は、泣きながら抱き合い続けた。

 やがて涙が収まって、樹新さんが口を開いた。
 
「京さん。あの日、酷いことを言ってごめんなさい……」

「……!樹新さん、まさか、記憶が……!」

 樹新さんは頷いて、ゆっくりと話し出す。

「あの日、あなたに言ったことは嘘なんです。私は今もあなたが好きですし、あなたに触れられたい」

「じゃあ……どうして、あんな嘘をついたの?」

「あなたと結ばれて、私は本当に……幸せでした。しかし、幸せすぎて怖くなったんです。いつかあなたは、私を捨てるのではないかと……そう恐れた私は、自ら幸せを捨てることを決意したんです」

 樹新さんの告白を黙って聞いていると、彼は声を震わせた。

「あなたに、酷いことを言って。罪悪感と後悔に襲われて、あの日……私は……」

 僕は硬く樹新さんを抱き締めながら、低く告げる。

「……僕は、あなたを許さないよ」

「…………」

「許さないから……償いとして、これからも僕の恋人でいてくれる?」

 樹新さんは、頷く。
 それにホッとして、笑みを浮かべた。

「樹新さん、僕はあなたが好きだよ。あなたが死んだら、後を追うから」

 だから、死なないでね。
 笑顔で言うと、樹新さんが頷くのが分かった。

 樹新さんを抱き締めながら、僕は空を見上げた。
 空にある夕日は、優しく僕達を照らしていた。



 会社に戻った僕と樹新さんを見た大河丸さんは号泣して僕達を抱き締めた。僕達を静観していた法堂さんも、ちょっと泣いていたように思う。
 泣きながら僕達を抱き締める大河丸さんにくすぐったいものを感じながら、隣にいる樹新さんに笑いかけると、彼は僕に笑い返した。
 樹新さんの笑顔を見て、僕がこの人を守ろう。そう改めて強く決意するのだった。


end.

『涙』

『涙』 如月 作

キュン活二次。別れを切り出す樹新さんと京さんのお話。別タイトルは「京さんがひたすら泣いてる話」。投稿するか迷いましたが、せっかくなので投稿します。BLな上に樹新さんが自○未遂をしていたり記憶喪失になったりしているので苦手な方は注意してください。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日 2017-05-20
Derivative work

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