*星空文庫

嫌いじゃないからタチが悪い

AXIA 作

嫌いじゃないからタチが悪い

 試練なのか?運命なのか?
「よし、惚れた!付き合って?」
 よし、ってなんだ。何故に疑問系。
 ……初めて男性に告白されました。
「あ、俺とだよ?どっか行くとかじゃないよ?」
 ……だから、どうして疑問系。
「ね?」
 学校が終わってすぐ私は俺は一学年上の先輩に肩を叩かれた。それがはじまりだった。
「今日、帰りゲーセン寄ってくんでしょ?」
「ええ、行きますけど」
「じゃあ、俺も行っていい?」
 テスト期間も終わって開放的な気分と一息つけるようになった。
 羽根を伸ばしてもよさげな状況にゲーセンに寄って帰ろうと思っていた所だった。そして結局、一緒に行くことになった。
「今回、数学、あんま点数良くなさげなんだよねぇ?」
「先輩もですか。キツかったですよね。先輩の数学教科の担当もあのバーコードですもんね」
「そう。アイツ、進み遅いんだよ?」
「そうですよねー」
 他愛もない会話をしながら校門を抜けて、通りに出る。夕暮れまではまだ遠く日常の喧騒がそこには漂っていた。
「ひさびさだなー!街の雰囲気」
「テスト期間中はひかえるもんだしね?」
 ゲーセンに付いて、ゲームをする。……その横で先輩がにこにこしながら座っている。
「あの、楽しいですか?」
「うん。楽しいよ?」
 一緒に来て、ゲームをするわけでもない。先輩は一緒に来でも隣で座って微笑んでいるだけだ。
 ちょくちょく楽しいのか確認すれば毎回にこやかに微笑んで「楽しいよ?」と、ひとこと言うだけだった。
「……どっか行きたいとこないんですか?」
「へ?俺の?」
「他に誰がいるんですか?」
「うーん?」
 だから、どうしてこの人は言葉の端が疑問系なんだろう。
 告白の時も疑問系だった。
 私がそういう事に細かいったって一般の限度を越えてると思う程、先輩の言葉の端々には疑問系が並べられているように思えてしかたない。
「……ああーそういえば」
「行きたいとこあるんなら、付き合いますけども」
 先輩がじーっと私を見たあと、また微笑んだ。
「じゃ、いこっか?」
「え、はい。どこ……に、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

「……はぁは、は――……」
 私の腕を引いてひたすら走った先輩は最寄駅を通り越して繁華街とはだいぶ離れた河川敷まで来た。
 一気に脱力して私は転がるように土手の芝生にへたり込むと、あはは、と頭上から笑い声が降ってきた。
「体力ないね?」
「……」
 さりげなく隣に腰を降ろしている先輩の息はもう整っていた。
 憎い。なんだこの人微妙に憎い。
「……ここですか?来たかった所って」
「うん?別にちがうよ?」
 …………………………はい?
「別に何処でもいいけど?」
 ……今、私の隣で満面の笑みを称えながら爽やかに伸びをしているお兄さんは、あれですか。……バカですか。
「……先輩」
「なに?」
「……」
「あっ!昼寝しない?」
 芝生の上にゴロンと寝転んだこの男、どうやらバカです。
 そして、この男、寝転んだかと思うと五分もしないうちに起き上がって私の腕を再び攫み立ち上がらせてまた走り出す始末。
「せーい!!」
「ぎゃあああああああああああああ!」
 ……掛け声と共に川に飛び込んだ。
「いやー川って意外と冷たんだー。初夏になってきたしあったかいかなーとおもったのに、ね?」
 いや、思っていたのは先輩だけだと思うのだけれども。
 シャツの裾を絞りながら見事なずぶ濡れ姿になった私たちは土手を登る。あああ、制服が……。
「どうするんです。ずぶ濡れで」
「ほら、これで堂々と昼寝できるよ?」
 ホームレスには見られない!と堂々と胸を張る先輩を呆れて見ていると、彼は何を思ったかもう一回入る?と聞いてきた。
 丁寧に断ると、残念そうにしながらも再び寝転んだ。
「あのですね。先輩は何故に私に惚れたんですか」
「うん?あのさー、よくゲーセンでゲームしてるでしょ?」
「はい」
「それで惚れた」
「へぇ~って、意味不明ですけど!」
「だって、すごく楽しそうに笑ってていいな~って。駄目?」
「……」
 そういう問題ではないような気もするのだけれど。先輩的にはアリなんだろう。
「……それに、なんでよく言葉の端が疑問系なんですか?」
「うん?」
「語尾が常に疑問的に聞こえるんですけど」
「あ、やっぱ気が付いてたんだ?」
「……わざとだったんですか」
「うん。そうすれば、俺の事気になって仕方なくなるかなって」
「……気になるのは気になりますけど、ね」
「でしょ?」
 にっこり微笑む先輩は幸せそうだ。
 この人、バカなだけじゃない。自分の中で一つ一つを完結させてしまうんだ。
「膝枕してあげようか?」
「いらないです」
「恋人なのに?」
「……と、いうか、私まだ返事してないですよ。それ」
「えええええええ?」
 もっと重大な事に気が付いた。この人多分……アホなんだ。

『嫌いじゃないからタチが悪い』

『嫌いじゃないからタチが悪い』 AXIA 作

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-05-17
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