静黙の海

冬遠 ノバ 作

言葉は青く透きとおっています

 喉の奥 消えゆく言葉がありました 言葉は青く 透きとおっておりました
 青く透きとおる言葉を飲むと 腹の中には海が出来ます 
 どれも冷たく 光っています

 たいそう大きな海もあれば そうでないのもございます
 深くに沈んだ言葉もあれば 波間を漂う言葉もあります

 大きい軽い 深い浅い 
 賑やか静か 大勢孤独 

 海には種類がございます 同じものはこの世にひとつと ございません
 
 喉の奥 消えゆく言葉がありました 言葉は青く 透きとおっておりました
 言葉を多く飲んだ人は 眸に海をたたえます 腹の中の海が溢れているのです 

 たいてい彼らは口数が少なく 善良で正直 争いを好まぬ哲学者
 さびしさを愛することが出来る 静黙の海をもっています

 大きい軽い 深い浅い
 賑やか静か 大勢孤独

 静黙の海をもつものは やがて心も浮かべます 青く透きとおった波間のなかに 己の心を託します

 忘れた言葉を探すため 深くふかくに沈めた最初の言葉
 目もくらむ青を 思い出し 深いさびしさを 認めるために

 静かな海には 言葉が沈んでいます 黙りこんだときの さびしい色をして 
 静かな海には 言葉が沈んでいます 黙りこんだときの さびしい色をして
 

静黙の海

静黙の海

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-05-16

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