*星空文庫

少女

ぼくはことばをはなせません 作

さびしさのことがわからず猫をまつぺんぺん草のふりをしている

まわりたい風車のための風だからぼくらは腕を下げてすごした

冬までに支度しなさい わたしもあなたも許されてまで生きねばならない

対岸であの子がつんでいる石のひとつがむかし星だったこと

貝殻の匂いがしました すみません、どなたか海を真似てください

どの町の給水塔もゆっくりと湖めざして生きていました

どちらともとれてしまえる表情の夕日をまって帰りましょうか

真実と真実のおとうと弟子による観月会のあとのしずけさ

月からのひかりのすじを避けている (ぼくはひとよりあばらが弱い)

ところによる悲しみたちにこの街もとうとう降られてしまいましたね

降りだしたもっともはやい段階であなたが打つ雨への相槌

骨だけの雨傘なのでぼくの手は好きにひらいてとじてください

完璧に折れたとしてもそれまでの鶴にうまれてしまったようだ

ややあって命のことをはなそうとあなたは握る火を解き放つ

壊れてもなくなれなくてばらばらになってばかりの花弁のようで

いまは少女といえるが台形の可能性もあったと考える

バスにのるだけでおうちがとおくなる ねえおかあさんどこにいますか

よく眠る庭師のそばでまたひとつたたまれてゆく原色の傘

「うつくしい薔薇とそうではない薔薇の話をあなたとしたかったのです」

ふくろうの上下を気にするわたしにも訊いてください わからないことがあれば

夕暮れの残渣がぼくに降り注ぐ (なんにもしんぱいいらないからね)

どちらかといえば前世は鳥なので夜はあなたをみうしないます

星々をつなぐひとはりひとはりとしてのわたしのひとさしのゆび

おしずかに わたしはまさしく静寂の寂の部分に近づいている

たくさんのことばがくぐりぬけるよう網目はひろくしておきました

ぼくたちは失いたくないやさしさを定義しつくす(序文抜粋)

夕暮れを十年かけて見送ってふたりにとってよいことをする

友情が伴いそうもない旅へたたねばなりません 冬であるうちに

舟に乗る列かとおもえばTシャツを買いたい人の列なのでした

おかげんはいかがでしょうか わたしたちはしらないことをしらないと言えています

『少女』

『少女』 ぼくはことばをはなせません 作

短歌連作30首

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-05-11
Copyrighted

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