好きだ ② !オチあり注意!

好きだ ② !オチあり注意!

好きだ ② !オチあり注意!

あたしは彼と電話で少し話をした。
すぐに彼と同棲する女性が「もう、いいでしょ」と言って、あたしと彼との幸せなおしゃべりを中断し、あたしとその女性とのおしゃべりになってしまった。
不満もあったが、その女性のことを責めても仕方がないし、なにも変わらないから。
毎日一緒に暮らしていた彼。
毎日おしゃべりしていた彼。
散歩に一人で行かせるのも怖いと思ってしまうぐらい方向音痴の彼。

そんな彼が、あの女性と同棲するようになってから、はや2年。

あの日、あたしは残業があり、帰りが遅くなってしまった。
彼は夕飯食べたかな、などと考えながら帰路についていた。
なんだか消防車の音が煩い、なんて思ってはいたけれど、考え事をしていたから、消防車が向かっている先に何があったっけなんて、考えもしなかった。
むしろ、火事になったのが自分と彼が住んでいたアパートだったなんて、脳みそが考えることも拒絶していたんじゃないかな。

ぼんやりと歩いて、やっとあたしたちの住むアパートの前に着くと、消防員に話しかけられた。

「あなたの家は、火事ですよ!ここにいてください」

切羽詰まったようなその人の声に、考え事をやめ、ふと我に返った。
目の前の、火に包まれたアパートを瞳に映し、初めて状況を理解した。

「彼が───彼がいるんです!助けてください!」


それから、彼は助けられた。
火傷は軽くて済んだが、一応何日か入院したようだ。
そして、


彼は別の女のところに住んでいる。
あたしが彼のために気を失っていて、何日も入院している間に、その女性のところに住まわせてもらうことになったのだそうだ。
回復したあたしは、彼の入院していた病院に迎えにきたという女性の電話番号を病院のひとに聞いて、かけてみた。

話してみると、女性は青森にいるということだった。
あたしは長野だ。
仕事も忙しく、とても迎えに行ける距離ではなかった。
辛くて悲しくて、泣いて過ごす夜もあった。
慰めてほしくても誰もいない、新しく買ったアパートはなぜだか虚しくて、彼のために青森まで迎えに行けない自分の無力さも呪った。
その女性のことも。


だけどとうとう、今日、長期休みをとれたため、彼を迎えに行ける。



オウム愛好収集家の女性のところへ。

毎日一緒に暮らしていた、
毎日拙い人間の言葉でおしゃべりしていた、


大好きな黄色いオウムを迎えに。

好きだ ② !オチあり注意!

あなたは騙されましたか?

好きだ ② !オチあり注意!

好きだ。 ② !オチあり注意!

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-30

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