*星空文庫

魔女と少年と田舎ネズミ

ドライアドの本棚 作

「ネズミと魔女1」
その日汚い田舎ネズミは、魔女に頼んで人間の姿にしてもらった。
決して役に立つともいえない頭脳にうんざりしていた。
人間になりたかったネズミは、もともと人間だったことも、
もともと動物になりたかった事も忘れて
ただ人間になりたいと望んで、もう一度都市で拾われた。

三日もたった頃、その少年は、人間でいる事が嫌になった
魔女に会いに行くと、魔女は笑った。
「だからいったでしょう、ろくでもないと」
「もう一度やり直させてくれ」
A村はとてもさびれていて、とても生きていくのが辛い、ほとんどの人がそのはずなのに、誰も声をあげない

所詮もともとネズミで、人に問いかける自信がない。
いやけがさしたように魔女が答えた
「あなたのわがままはこれでもう3度目です、あなたはもともと人間で、
それを動物に戻して、人間にまた戻してさしあげた、これ以上は無理なのです」
一番大切なものを贄にしなくては。

なぜあなはたそんなに融通が利かないのか?
そんな事をいうと、少年はみすぼらしい容姿に変えられてしまった、
こまった少年は街頭で歌を歌う、得に自信もないが、いつの日かそうして
いたような気もする、そこへ泣き顔の少女が通る、
「どうしたのですか?」
「お墓詣りのかえりです」


花柄のスカーフをつけた少女には、憧れていた青年がいたようで、
だが彼はとても心が弱く、いつも窓から外を見ていたという、
彼の病状は重くないのだが、入院中に、心のほうをやんでいた、
彼は有名な歌手だったそうだ。
「私にできる事がありますか?」
少年がいうと、少女はうなづいた

「では、歌をおきかせ願えますか?どんな歌でもかまいません」
少年の口は、知らず知らずに歌をくちずさむ、記憶よりも、体が勝手にうごいている、
自分でもしびれるような、聞きほれるような声だ、
だけどそれも人が同じ用に感じるかはわからない。
目を閉じた彼の目の前の少女は目をまん丸にして彼をみていた、
次に目をあけたころ、少女は彼と一緒に歌っていた、
涙をためながらうたっていた。


少年にはいまだにこの町の事はわからない
魔女は時間の問題だといったが記憶は戻らない、
レンガ造りの家や、白い外壁のイエイエが立ち並び、
僧がときたま通りかかる、みすぼらしい協会のある町。
この町の考えがわからない。
ただ、この少女の憧れだけは、わかった。

少女は、次の日も、その次の日もそこにきた、いつまでもそれが続くと思っていたが、
ある日、ぷっつりと音沙汰もなくなった、
ネズミだった少年はそれでよかった、
何かしら面倒に巻き込まれるよりは、それでいい、
それから、彼の歌に足を止めるのは、同じようにみすぼらしい人間か
城の憲兵だけだった。

戦争は今はやんでいるが、不安定な国だから、
希望も夢もないはずなのだ、
けれど少女の自分を見る瞳に、何かを思いだしそうで、
そうしていると、一羽のスズメがそこへとまり、
少年の頭に襲い掛かって来た
バタバタとうるさく
「ああ!!」
と少年がはらう、
そうするとスズメはとびさった、

スズメがまだ道路の隅で少年を見つめていたので
少年は、この街の端っこ、かろうじて自分がいる事の出来る場所で、
むしろそこが居心地が悪くなり、あるきだした、
ひたすら涙をためながら、こらえながらあるいた、
ふしぎな声がきこえた
「スー!」
しらない顔の女性、自分の子供によく似ているといった。
スーは拒む事を知らなかった、その方法を。

レンガ造りの家の中に招待され、お風呂までごちそうになった、
そのあと、その小太りの女性の迫力に圧倒された
もってこられた写真やらは、確かに自分によく似ていた。
「養子でもなんでもいいから
あのこは行方不明になってしまったの!!」
そういう事だから、しばらく厄介になる事になった。

夜中は必ず寂しくなった、自分が一体だれなのか、そんなとき
魔女がやってきた。久々にあう彼女は、二回の自室の窓の外で、
何やらにやにやしている。
「あんたは死ぬはずだったんだ!!そうだろ!いや、あんたは。死んだはずだ!だって、あの子に声がそっくりなんだから!!」

次の日からすっかり元気をなくした少年は、
その日母親が自分をつれだってそこへ行く事を聞いていなかった、
教会へつれていかれたのだ、聞き覚えのある声がした、
それはもしや自分の声だろうか?そう思いつつ、彼女の話した有名人の
声だった気もしてきた。
街角で出会った、名前も知らない少女
聴いているうちに、教会で歌を歌を歌う彼女の姿を見つけた。

むずかしい事はわからなかった、
でも歌声はでた、
母親が、先に変えるというので、必ず帰る約束をして、少女と話しをする事にした
「ひさしぶり」
「うん」
少女はどうやら、憧れの人、歌手である彼を思い出すのがつらくて、
街の隅の彼の居場所を尋ねるのをやめたそうだった、

少年は恥ずかし気もなくいった、
「僕は、やり直す」
少女は、何も答えなかったが、少年は決意していた
(自分はその歌手ではない、思い出したのだ、あの魔女は、あの魔女さえ
美しい彼の歌声を聴きに来た事がある、自分はスーだった、
彼の歌声をまねて、そのかわり、彼がしんだので皆の前でその声を出す事をおそれていたのだと。)

スーは、その街にとけこんだ、親戚や、ご近所さんも
皆そろって彼が以前の彼と同じである事をみとめた、
魔女さえも、たまに彼の事をもうしわけなさそうに、木陰からのぞいていたのだ
そんな時にもスーは、少女と一緒にうたった、
動物になって、自分である事から逃げたかった、
きっと以前のスーはそういう人物でしかなかった。

少し落ち着いた頃に、皆でその街の有名な歌手、なくなってしまった彼の墓を訪ねた。
間違いなく、スーも彼にあこがれをもっていたらしい事は、彼の日記からわかった、
彼は、記憶を無くしてしまった、憧れの記憶を、
その後悔とともに、彼の死と、自分の行いを悔やんだ。

『魔女と少年と田舎ネズミ』

『魔女と少年と田舎ネズミ』 ドライアドの本棚 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-04-30
Copyrighted

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