落ちぶれた天才

落ちぶれた天才

ステータスでは測れない

天才だから、なんでもできるつもりだった。
天才だから、努力なんてしなかった。
天才だから、一般人なんて目じゃなかった。

でも、それじゃあ、いけないと思った。
中には努力の天才もいる。
そいつらに負けるわけにはいかなかった。

天才だけど、なんでもできるように練習した。
天才だけど、努力した。
天才だけど、一般人とも交わった。

それだけやった。負けはなかった。
いろんな人に褒められた。
このまま道は約束された。
やっと、自分が天才なんだと実感できた。

だけど。

天才でも、現実には勝てなかった。
天才でも、時間には勝てなかった。
天才でも、環境には勝てなかった。

結局は、一般に落ちた。
ここでいう一般は、いろんな意味を持つ。
既に敷かれている様々な、レール、テンプレート。
全自動で進むベルトコンベアに乗っかってしまったら、もうそれは天才でもなんでもない、線の上の森羅万象。

ほら、目を向ければ、努力していたやつが目の前にいる。
いつ抜かれたのかもわからない。
あいつらはどんな道でも、ゆっくりゆっくり歩いてきた。
ありえない道だって、数億年かけてでも、超えてきた。

あいつらは環境のせいなんかにはしなかった。
あいつらは時間のせいなんかにはしなかった。

あいつらは常に現実と向き合って、抗ってきた。

時には人に言えないこともしたんだろう。
いろんな葛藤があったんだろう。

ただもう、一歩でもついた差は、遠い。
何億年分の一歩に追いつくには、時間が。

また始まった言い訳。

これの繰り返し。無限ループ。
目を開ければ、あぁ…。さようなら。

落ちぶれた天才

落ちぶれた天才

「超えられない壁はなかった。はずなんだ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-24

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