ヘヴン

ヘヴン




   





   


  



シンプルに知りたいんだ。


簡単よ。


どういうふうに?


結局、自分に起こるすべてのことは必然なのよ。領域も結界もなく、咲いた花も生きてるならいつか散るように、自然でいるってことよ。


自然に生きてるから、自然に生きろということか?


うん、でも愛がないと。憎しみもないと。不都合なこともないと。


自然に生きられるための愛? だからこそ幸せと不幸せがあるのかな。どちらもあるから、どちらも事実として存在できる。


うん。・・・・・・リル。


うん。




あたしはマンションに住んでいるの。割と、いいのよ。7階よ。眺めがいいのよ。いつも眺めてる。でもあたしのお隣には眼が見えるのに、眺めることが出来ない人が、住んでる。42歳と聞いたわ。寝たきりよ。知らなかったわ。どうしてエプロンを着た人が毎日来るのかわからないから、パパに聞いたわ。生まれてまもなく、脳内出血で、その後遺症で癲癇発作を繰り返し、重度の知的障害が残った。「一生ベッドから出られないプレゼントを、神様が与えた」って、その人のお母さんが言ったそうよ。その人は、一生、自分がなんのために生まれたかも、なにも分からないんだって。あたしはいつもくるそのエプロンの人たちがエレベーターの中で、真性包茎初めて見たわって話してたの聞いたよ。あたしはただ、生々しい剥きだしたいまを感じた。でも純粋にあたしは、あたしは、抱いてくれる人がほしいと思った。誰ともなんにも比べないで、ただ、男の人には抱いてほしいと思った。




リル。


うん。


あたしも・・・・・・


うん。


いつでも、寂しいのよ。


ぼくがそこいないことが? それとも日常が?


いつでも、リルを感じていたいのよ。


ぼくもさ・・・・・・・・。


きっと。


うん。


それがheavenなのよ・・・・・・・・。






夜をたどっていけば、知らない街の中に、顔も見たことのないけど僕の文字や声で僕を思い続けてるひとがいて、そのひとが他の誰より毎日僕を心配したり求めてくれて、僕の言葉を思い出しながら同じ寂しさで、いてくれる。会えなくても生きててくれる。その事実だけに満ち足りて眠れる夜。

海の音が聞こえる気がする。海は宇宙よりも暗闇があって月よりも青白い光がさして、でもどこよりも 心地よい風が頬を撫でて、通り過ぎる。

同じ雫と違う雫。

見逃してしまった昨日には今日があった。落としてきてしまった今日には明日がある。

世界が狭いのではなかった。

「気づき」が残っているように思えた。 悟りはまだいらないと思った。






   






   


  

ヘヴン

ジョン・レノンの“How?”を聴きながら書いた。
淡々と書き連ねていく。

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ヘヴン

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-16

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