星が見たいの : 3

「心って何なのか?人間はみんな自分は心を持つと信じて疑わないけど、本当に心が何なのかわかる人なんて実はいないんだ。

人間の体を解剖しても”心”なんて臓器出てこないもんね。

心っていうのは、科学では説明がつかないモヤモヤした感情が現れた時にその感情を人間が勝手に名付けたものだと思う。

深い意味はないんだよ。

リツがもし、

モヤモヤした感情を持って、

その名前に困ったら、

こっそり心って呼んでみればいいんだ。」

彼はゆっくりと、私に言い聞かせるように言った。

私のモヤモヤしたそれに、気持ちをプログラムされてない私に気持ちがあったらなんて考える電気回路の中に、心がひょっこり現れて、回路の片隅に宿ってくれるなんて………

「理解できない…」

「いつか納得できる日が来る」

「リカイデキナイ…」

「ゆっくりでいいよ」

長い時間彼はそこにいた。それ以上何も話してはくれなかったけど、妙にうれしそうな顔で私を見ていてくれたような気がする。

メインコンピュータが熱を持っていた。何も考えることができなかった。

*   *   *

国際社会からのQ国への圧力は強くなるばかりだった。Q国は多くの国からの制裁を受け、そのたびに総統は軍事力強化を急がせ、そのたびに制裁は厳しくなった。国内の資本はすべて政府が徴収し、国民の不満はだんだんと高まっていった。

「もっと早く!もっと強力な兵器を開発しろ!わが国には時間がないのだぞ!」

総統は私と研究員たちに怒鳴りつけた。ここのところ常にこんな様子である。研究員たちは疲弊しきっているうえ、食事や睡眠をとることもできない。

しかし、逆らえば処刑されるだけなので誰も文句を言えないのだ。

よく私を訪ねてきたメガネの研究員も最近は来なくなってしまった。

この国は荒廃の一途をたどっていた。Q国がなくなるのは時間の問題だったろう。

「3,2,1,0……ミサイル発射、成功しました。」

私は核爆弾ハデスを積んだミサイルの発射実験をしていた。

「軌道制御を続けろ。北部の山に落として威力を試せ!」

私は総統の命令に従う。北部は過疎地域で豊かな自然が残っている。もちろん多少村が残っており、おそらく今回の実験で壊滅するだろう。でも、私にそんなことは、関係ない。

「ミサイル、北部の山中に着弾、2キロ四方に熱風による山火事を確認しました。」

「ミサイル実験は成功だ!すぐに大量生産を開始して軍に配備させろ。それから広場の奴らを片付けておけ。」

ここ最近、政府に反対する国民が総統官邸の広場でデモを行っているのだ。デモは軍の戦車などで弾圧しているが一向になくなる気配がない。広場は常に国民の血で真っ赤に染まっている。

「国軍第一隊に出動要請、戦車を配備……」

私はいつも通り軍に出動要請を出そうとしていた。

その時緊急事態アラームが鳴り響き、あわただしく人がなだれ込んできて叫んだ。

「軍事研究員たちが、研究員が、クーデターを起こしました!!」

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-07

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