アンチエイジング

「鏡よ、鏡よ、世界で一番美しいのはだあれ?」

或る女は
ああして唱えては、問い
こうして唱えては、毎晩毎晩、問う

いつしかこんな言葉が降り注ぐ

『おや、あなたは一体おいくつ…?』

どうやら鏡こそ人の鑑のようで、
終始懐疑的

『あぁ、化っかし、ばっかり!
ばっかるはかることなく、
そればっかるある、ばっかるある、そるばっかるある、ばっかるある、
化かすな!ばかにするな!
ばっからしい、ほんとばっかね、ほんとばっか、ほんとしらない…
いたいたしいばかり』

これは写されていたのか
聞こえてきたのか
心響く呆れ声

あぁ、無理強いて、気を張る…
それは轟きを憂うゆく日常の掃き溜め
それはコスメティックバイオレンス

肉体はただのキャンバスであろうか
いつまで経とうともそれが正しいのであろうか?

今日もオブセッションから逃れることなく
時に歴史に、時に重力に逆らってゆく

美貌にリビドー流し込み
お星様、お天道様背後に
きらきら、きらきら、きらきらっと

それは人の歴史のからくり
アンチエイジング

居た堪れなくなった鏡は
アンチの声を安置せざるを得なく、
とうとう、ついに不意に問いにこう答える

『明日からは大衆にはばからず
仮面と十字架を取り外し、
真の己の姿を余すことなく写し給え!
そして、今宵は鮮烈に変貌した血相を月と対峙させ、
猛烈に目を閉じて深く眠り給え! 』

アンチエイジング

アンチエイジング

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-06

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