未定

其処に或るべきもの。

眠る時、何時も決まって夢を見ました。瞳を閉じると、白い扉が浮かび上がるのです。
それから其処を開けると階段があり、階段をいくつか降りると、白い椅子が置いてあって、其処には形の違うもう1人の自分自身が座っています。

「今日も来たんだね。どうする?」

(私はどうしたら...。)

「大丈夫。僕に任せて。いつもの様にここに座って待っていて。」

彼は優しく笑いながら立ち上がり、私を抱きしめました。
それから背中を優しく擦りながら、小声で何かを呟くのです。
私は彼の肩に顔を埋めて、二人の間の小さな儀式みたいなものに、暫く身を委ねます。

「では、行ってくるよ。」

階段を登り、扉の閉まる音が聞こえました。
いつもの様に待っていて、その言葉に何故か安堵して、私は白い椅子に腰掛けて瞳を瞑ります。

どのくらい時間が経過したのか、分かりませんが、再びドアを開ける音と、階段を降りる音が聞こえました。
瞳を開けて彼を見つめました。

「ただいま。終わったよ。」

少し青白い顔が其処には或りました。
そして少し深呼吸をした後、私の手を取り、階段をゆっくり二人で登ります。
ドアの前まで来ると、彼はまた私を抱きしめて言いました。

「忘れないで。僕等は何時も一緒だ。」

そしてドアを開けた瞬間、淡い光に包まれました。
暫くその光の中を歩きました。何処までも、何処までも。

不意に後ろが気になって振り返ると、まるでシャボン玉が弾けるが如く、私は目を覚まします。

夢か幻か、見当もつきませんが、先程までの出来事は現実味があり、そしてとても懐かしくて心が安らぎます。
只同時に何故か悲しい気持ちにもなります。

少し気持ちが落ち着いた頃、ふと思うのです。
何時もどんな時も、私の傍に居てくれる、貴方は一体誰なのでしょう、と...。

未定

未定

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-28

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