恋の病

恋の病

僕は深い深い井戸の底にいる。5年も前から這い出ることができない。
僕の中の君は言ったんだ。

「あなたはずっと、そこで生きていけばいいわ」

出会い

2012年の夏、僕は恋をしていたんだ。君は僕のことなんか知らなくて、
そして互いに話すこともなく、1年が過ぎ去った。

僕は彼女に出会うまで、恋愛を誤解していた。
それまでの僕の中の恋愛は、どちらかが「好き」と伝え、片方が許可を出す。
そして互いの唇を交わらせる。
それが「恋」であり、「愛」であると認識していた。
だけどそれは違ったんだ。

僕が彼女に「恋」をしたのは学校の廊下。
僕たちはすれ違った。唐突に。なんの疑問もなく。
だが、それはまるでガラスの靴を手掛かりに探し出したように、その出会いに意味があると確信した。

よく「恋」をすると全身に電撃が走るというが、まさにそれであった。
僕の身体は痺れ、硬直し、動かなくなった。
意識だけは機能していたと思われる。いや、機能していたかはわからない。
彼女の方を目で捉えているのに、彼女の周りの風景が伝わってこない。
彼女だけを見ていた。まるで立ちくらみを起こしているかのように。

恋の病

恋の病

初めて”恋”というものを知った「僕」とその「僕」を翻弄する「彼女」。”恋”というものを軽視していた「僕」は、「彼女」から”恋”について知っていく。”恋”によって人格が変わっていく「僕」を描いたノンフィクション。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-27

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