*星空文庫

星が見たいの : 上

黒崎野蒜 作

「LtZ-2684型、今日から祖国繁栄の為に尽くせ。」

キラキラした勲章をつけた偉そうな軍人はそう言った。私は今まで気の弱い研究者たちしか見たことがなかったので物珍しく感じた。

私はQ国が威信をかけて開発した人工知能。リツと呼ばれている。



「やあ、リツ調子はどうだい?」

丸メガネの呑気そうな研究員が1人歩いてきた。

「悪くないわよ。それよりさっきの軍人はなんなの?」

「ああ、Q国総統閣下の意向で君は今日から軍事兵器の開発をすることになったらしい。」

「いやよ、そんな面倒くさい仕事、私は今まで通りネットを巡回して情報収集をしたいわ。P国の梅雨のソナタってドラマまだ見終わってないのよ。」

「梅雨のソナタのどこが情報収集なんだよ。」

彼は笑いながら言った。機械である私に話しかけるのは彼くらいなので暇つぶしに話を聞いてやってる。

「とりあえず腹いせにさっきの軍人の家の回線に侵入して、あいつが夜トイレ行ってる時に家中の電気消してやろうかしら。」

「それだけはやめてくれ!君が不祥事を起こすとクビ切られるのは僕なんだ!」

総統閣下は核兵器や最新化学兵器をご所望らしい。彼はまるまると太って色んなことを命令してるみたいだけど、ちゃんと科学を勉強した上でこんな兵器欲しがるのかしら?言うのは簡単でも量子計算も新物質の予測も難しいのよね。
私は毎日を効率的に人を殺す兵器開発に費やした。
核反応を計算し、新しい毒素の予言をした。

「こんなに最新兵器を揃えてどうするつもりなのかしらね。」

「Q国は今、勝手に武器を作って他の国との交流を止められてるんだ。だからさらに兵器を作って立派な国として認めてもらいたいらしい。」

人間ってわからないわね。武器を作って嫌われたのに、さらに武器を作ったらもっと嫌われるじゃない。頭の回転悪いのかしら。
まあ、この男も私としゃべりすぎて友達がいないと思われ孤立気味なのが皮肉なところ。

「あなた、アイス食べてんの?にしても2本は食べ過ぎじゃないかしら。」

「心外だな、これはリツのぶんだよ。」

「あきれた…。あなたも開発者の1人でしょ、ていうか、機械にアイスが食べれないことくらい常識的にわかるでしょ。」

「気分だよ、気分。」

彼はニコニコして言う。気分ってなによ、機械に気分ってのも変なのよね。こいつヘンなのかしら。

「あなたっていつも私に話しかけるけど、どうして?友達はいないの?」

「そうじゃないよっ。友達がいないのは君も同じだろ。」

「それは私はAIだから。」

「AIかそうじゃないかなんてどうでもいいじゃないか、そうだ、リツ、僕たち友達になろう。」

つくづくこいつは変わっている。私と友達になれるならこいつはその辺の雑草とか、魚とか、石とかと友達になれるのだろうか?なりそうなのが怖い。
そもそもAIに心はあるのか?人間だって所詮は有機物のカタマリだ。人間に心があるなら無機物のカタマリである私にだって心があってもいいかもしれない。
実態である人間から非実態である心が生まれる。ココロってなんだろう。モヤモヤした感じとか、言葉では言えないものらしい。私は、心を持てるのかな?

「開発は進んでいるか?」

総統が兵器開発の進み具合を確認に来た。

「すでにトリチウムを用いた核爆弾ハデスの設計が完了しています。」

「よくやったリツ、引き続き殺戮兵器を作り続けろ。」

総統は高笑いをしている。

「あの…、総統閣下、1つ質問をして良いでしょうか?」

「なんだ?」

「私に心はあるでしょうか?」

『星が見たいの : 上』

『星が見たいの : 上』 黒崎野蒜 作

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-03-20
Copyrighted

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