魚を食べる訳

無自覚は
ドロリとした大きな瞳
時間を区切るみたいに
音を立てて瞼が落ちる

無自覚は行き止まり
いろんな階にそれぞれの無自覚が住んでいる
階段はあるけど
行き止まりからは抜け出せない

僕の無自覚
生に向かった時
きっと簡単に誰かを傷つけた

一つの世界の狭さに向かった時
針の穴はわかる気がするけど
人の顔が分からなくなる

僕がほしいのは
自覚に向かう優しさか
広さに向かう立ち方か





彼らの

溶けるような美しさは
透徹した無自覚

彼らは簡単に狩る
途方もない必然の内に
自慢げに僕に見せては
ゴロゴロ喉を鳴らして
あなたも美味しそうねと
キラキラした目で見てくれる

狩るための美しいフォルムも
驚くようなジャンプ力も 自覚しないまま
僕の姿を見つけてはスタスタとすり寄って
優雅に僕を仰ぎ見てくれた時
僕のハートは射抜かれた

分からなければそれだけ
惚れてしまう気がする

ただ平然と生きている彼らは
誰のためでもなく 主張するでもなく
何気なくいつも陽だまりをみつけ寝るから
彼らと陽だまりはいつも仲良しで

僕は明らかに 彼らではない

彼らの振る舞いの秘密を知りたくて

僕はあり方を探すのです

そんな彼らに憧れて
少し困ってカリカリをあげるのです

彼らの気持ちが分からなくて 知りたくて
僕は毎日夕食に魚を焼くのです

2017/3/12

魚を食べる訳

カリカリ=キャットフード

魚を食べる訳

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted