愛してるけどすきじゃない

ドラマカルテットのクドカンのセリフどっかできいた。

松たか子が、一体どうしたのかと思うほど、普通の地味な中年女性に見えるこのドラマ。

きっとこれ、わざとだな。このまま終わるわけない。
あとでどんでん返しの大変身するんじゃないの?

エンディングで歌う、妖しくきれいな「まきさん」を見て確信する。


「松たか子は実はわるものなの?」
パソコンに向かって背中のままで夫が言う。


こいつ…!それ、そのセリフ…!
クドカンにあの表情をさせた、同じセリフ、言ったよ、この男。

ドラマ、興味ないくせに。
わたしの独り言に付き合わなくていいのに。
独り言いうわたしが悪いのか。



愛してるけど好きじゃない。

衝撃的なこの言葉は、おそらく映画「ひまわり」からの引用だ。

映画や詩が好きなクドカン演じるまきの夫らしい。

なべ敷きにされた本には、9ページに栞が挟まれたままで。


「この人わるもの?」「この人は?わるもの?」

絶望していくクドカンの表情がつらい。
そうやって誰も悪くないのに、ゆるゆると傷ついていく。


映画「ひまわり」はテレビの録画で、暇だったから見た。
すでに見ていたらしい夫は、パソコンに向かっていた。


映画が終わった時、夫が振り返った。「どうだった?」
どうって。余韻に浸る間もなく、問われて。

いちめんのひまわり、あまりに広大すぎるのだけどそれには理由があったこと。
主人公がやたら長身で気が強そうで、綺麗でキュートで。
ロシアの女性の雪のように白くて儚いのと対照的で。

ささやかな暮らし、生活のどうぐたち、ミシン、スカーフ、くつ。

手の動き、目をみはる表情、主人公が鏡の前にたつシーンが、胸に迫ったこと。
…んんんとね…。

「…あのひまわりが 」
「つまりこれは反戦映画だよね」
夫は、わたしが少し考えたあいだに、問いかけた瞬間からもう、もうずっと前から、パソコンに向き直っている。

ドラマの中のクドカンと同じ顔だったと思う、この時のわたし。

聞く気がないのにたずねるなよ。

ゆるゆると傷つき、脱力してまたひとつ沈んでいく。



かなしいのかもわからず、ただだまりこむ。



こんなことでなみだは出ない。



わたしは夫を、愛してもいないかもしれない。

愛してるけどすきじゃない

映画 ひまわり 1970年 ソフィア ローレン主演

愛してるけどすきじゃない

幸せなわたしの日常。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-11

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