島が襲われた日

宇宙サンタ 作

※研究のために使用しているアカウントです。作品に感想を入れてくださると嬉しいです。宜しくお願い致します。

宇宙サンタさんによる作品です。

 周りが何だか騒がしい。不安そうな顔をしている者、武器を念入りにチェックしている者の姿が見える。僕には何が起こったのかわからなかった。
「父さん!何かあったの?みんな変だよ」
父さんは僕に気付かず、深く考えている様子だった。
「父さんってば!」
「……ああ、よく聞いてくれ。この島に良くないことが起こるらしい。戦いになるかもしれないんだ」
「え!?」
「だから、戦いの準備をするんだ」
僕は納得がいかず、質問しようとしたが、父さんは口をつぐんでしまった。丁度その時、荒々しく扉を叩く音がして、親友が飛び込んで来た。
「おい、聞いたか? 戦になるかもしれないんだってよ!」
「そこんとこ詳しく話してくれ!」
「なんか,やたら強いって噂の男が猛獣を連れてこの島に乗り込んでくるらしい。しかも3日でここにつくんだとよ!」
僕は、男一人と猛獣が来たってどうってことないじゃないか、と思った。こっちは女子供を除いても100人以上はいる。しかしなぜみんな真剣に考えているのだろう。その日、僕は何もせずに寝て過ごした。
 真夜中、僕は玄関で大きな話し声を聞いた。噂の男をやっつけようと出かけて行った島の強者10人中9人が殺され、1人は命からがら帰ってきたという話だった。いっぺんに目が覚めてしまった。そんなに強い奴だったのか……。
 しかしこれはチャンスだと思った。もし、この島を守ることができたら村の長の息子として認められるからだ。そして、噂の男が島に入ってこられないように罠を仕掛けることにした。3日か……何が出来るだろう。
 まず敵の足止めを考えた。島に生えている雑草と雑草を結びつけ、足が引っかかるようにした。僕達が、普段通らないようなところにもたくさん落とし穴を作り、穴の底に槍をつきさしておいた。他にも、毒を入れた肉の塊をそこらじゅうに、たくさん落とした。作業は親友と2人で行っていたが、明らかに効率が悪かった。あと1日でこの島に危機が訪れる。
 僕は父さんに作戦を教え、みんなに協力してくれるように頼んだ。僕達は、あちこちに小規模な拠点を造り、大きな板を立て掛けた。そこに油を塗り、敵が登れなくなったときに岩を落とすという寸法だ。海岸に鋭く砥いだ武器をさして柵の代わりにした。そして最後に、敵を矢で射る者と刀で戦う者と敵が島に着く前に奇襲する者に分かれた。親友は矢で僕は刀で戦うことにした。
 ついに3日目が来た。僕達は、戦う準備をして待った。敵の船を襲う者達はもうとっくに出発していた。何時間かたったと思われた頃、海の向こうから1艘の船を見つけた。しかし、それは、味方の船ではなかった。船は奇襲しに行った味方の血で染まっていた。こんなに強いやつが島に来たら、全員やられてしまうだろう。もし、やつを倒したとしても、大勢が犠牲になってしまう。
 船がとうとう海岸に着いた。敵は目にもとまらぬ速さで、武器で作った柵を抜け、前の方で構えていた者達を真っ二つに切ってしまった。幸い僕は後ろの方で待機していたから攻撃を避けることができた。
 色鮮やかなものが頭上をよぎった。翼を動かすたび、すごい風圧だ。木の上からは人間に似た何かが無駄のない動きで、仲間を捕えている。鋭い牙の見たこともない生き物が仲間に飛びかかってきた。
 強大な猛獣達は毒が入っていることを知っているのか、肉の塊に見向きもせずに襲い掛かってきた。味方がどんどん殺されていく。生き残った者達は拠点の方に逃げている。しかし、仲間の放った矢がに誤って逃げていた者に当たってしまい、僕達はパニックに陥ってしまった。
「おい! 危ないじゃないか!」
「ひいぃぃぃ! 助けて!」
「お母さん!」
辺りに叫び声が飛び交う。
 なんとか拠点に着いた者は最初にいた者の1/10に減っていた。親友は僕に大丈夫か? と声をかけてくれた。汗を拭い、僕と父さんは大丈夫と答えておいた。
僕は急いで板を立てかけ油を流した。……少し効果があったようだ。敵は拠点に近づこうとするが油で滑って登れない。僕は夢中で岩を投げた。はずした……だけど敵はもう近づこうとせずに拠点の周りをうろうろするようになった。
 その時、僕達は一瞬だけ隙をつくってしまった。空を飛べる敵の手下が僕達をつつき、拠点から落としていく。落ちて行った仲間は下で構えている敵に次々と殺されている。作戦に自信があったのにこんなにあっさり破られてしまうなんて……。
 生き残ったのは僕と親友と父さんの3人だけだった。僕たちは、空飛ぶ猛獣を倒すことを試みた。少しずつ3人で攻撃する。足に少しだけ傷を負わせることに成功した! 猛獣は怒り狂い、がむしゃらに突っ込んできた。 父さんは僕をかばい肩に重傷を負った。その先にいた親友が僕の目の前で落ちていき、刺された。急所を一発だった。あまりの速さにびっくりして呆然としてしまった。それから僕は激しい怒りをおぼえた。一気に空飛ぶ猛獣に近寄り、思いっきり刀を振った。猛獣は血を流し、落ちて行った。僕は力が抜け、その場に座り込んだ。父さんがよくやった!と言ってくれた。
 その日1日拠点で過ごした。これが父さんと過ごす最後の日なのかもしれない。油が残り少なくなってきた頃、父さんが意を決した様子で僕に語った。
「お前に一族が何をしてきたのかを教えてやろう。私たちは、成人になると着くのに約3日かかる隣の島に行き、あそこに住む者達が持つ宝をもらいに行くのだ。そして、やっているうちに鬼と呼ばれるようになった。しかしこれは我が一族の誇り高い仕事なのだ。お前が大きくなったら名誉ある仕事につかせようと思ったがそれはもう無理なようだ」
 そうか!だから父さんたちは度々島を留守にしていたのか。僕達若い衆はその間、一生懸命畑を耕し、魚を採っていたのに。
 僕は話を聞いて理不尽だと思った。こんな出来事が起こったのは大人の責任で僕や親友は関係なかったのに巻き込まれてしまった。僕は父さんに怒鳴り散りそうになるのをグッとこらえた。父さんにあたっても状況は変わらないし、父さんは大きな傷を負っている。しかもその傷は僕をかばう時に負ったものだ。
 とうとう油が無くなり、敵が攻め込んできた。父さんは片手でなんとか刀を持っていた。僕達はなるべく敵の攻撃を避け、拠点から出た。戦っているうちに海岸の近くに追い詰められてしまった。僕は刀を思いっきり振り、敵を威嚇した。そのとき横で父さんのうめき声が聞こえた。父さんを助けに行こうと近寄った瞬間、膝から上が焼けるように痛くなった。右足が無くなっていた。苦痛で顔をゆがめ、僕は地面に倒れた。目がかすんでくる。僕は最後の力を振り絞り立ち去る敵の船を見た。旗には桃太郎と書いてあった。

島が襲われた日

島が襲われた日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-03-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted