きっかけ

毎日同じ事の繰り返しでつまらない。
死んでしまいたい。
私は冷めた人間なのだろうか?

ちっちゃくて何も出来ない君。私の守るべきもの。

毎日毎日同じようなことばかりで何の為に生きているのかわからなくなる時がある。
私みたいな人間を時間を無駄にしている人間っていうのだろうね?笑

でもこんな人生でもたった一つだけ楽しみなことがある。
大好きな彼に会える日はすごく幸せだ。
彼って言っても彼氏ではない。
相手は結婚しているから、いわゆる不倫というやつだ。
いけないことだって分かっている。
だけど私は彼なしでは生きていけないところまで彼の事を愛してしまってたんだ。

でも彼はいなくなった。
急に転勤になり、家族総出で引っ越すことになってしまったんだ。
私はあまりに急な話すぎて一瞬では受け入れることができなかった。
彼にありったけの文句を言った。
後から考えたら後悔するようなことばかり言って彼を責めた。
彼とはこの言い合いが最後だった。

それから一切連絡が取れなくなり
私はもう死のうと思った
ビルの屋上に登り下を見ていた。
気分が悪くなってきた。

高所が大好きなのになぜだろう??

死ぬ間際そんな事を考えたのを覚えている。

目が覚めた時、私は病室にいた。
周りなんか誰一人いなかった。
死ねなかったという悔しさと虚しさでいっぱいになった。

看護師さんがきて

目が覚めたんですね♩よかったです♩
先生を呼んできますね♩

笑顔の看護師さんに聞いた。

一体どれくらい眠ってたんでしょうか?

一ヶ月くらいですね。生死をさまよっていましたので生還されたことが奇跡です!

そうですか。死ねなかったんですね。私はこれから何を頼って生きていけばいいんですか?いっそ、殺してください。

看護師さんは黙った。

先生には言うなって言われてたのですが・・・

サナさんのお腹の中には赤ちゃんがいるんですよ。それでも死にたいと思うのですか?きっとお腹の中の赤ちゃんは生きたいと思っているはずです。赤ちゃんのために生きることはできないんですか?

唖然となった。
理解するのにものすごく時間がかかった。

赤ちゃん??
私が?
誰かの間違いじゃ?

間違いなんかじゃありませんよ

後ろから声が聞こえた。
私の担当医と言う先生だった。

エコー写真や血液検査の結果を見せてもらってようやく自分に子供ができた事を自覚することができた。


この子とこれからの人生を生きていこう

心からそう思うことができた。

退院して経済問題という現実が待っていた。
仕事を探して探してカフェのパートで採用されることになった。
毎日必死に働いた。
元大好きだった人のことなんか忘れていた。

ある日仕事をしていると見覚えのある人影とすれ違った。
元大好きだった人。忘れていたがこの子の父親。
言うべきか言わないべきか悩んだ。
でも、一言だけ伝えておこうと思い、その人影をおった。

あの・・・

はい?

覚えてますか??

サナじゃん!こんなとこで何してんの??

お久しぶりです。少しだけお話いいですか?

いーよ

妊娠しました。貴女との子を。今八ヶ月です。

は?

産むつもりです。一人で育てます。貴女に迷惑をおかけすることはしません。
むしろ、感謝しているのです。私に生きる希望を残してくれた事に。
ただ、これから生まれてくるこの子の事を知ってて欲しかったから伝えました。

そっか。
ごめんな、サナ・・

それから無事出産して子供と楽しい毎日を過ごしています。
子供の名前は奈那。
自分の名前とこの子の父親の名前からとりました。
少し複雑だったけど、この子が生まれてきてくれたのはあの人のおかげでもあるから。
もちろん辛い事だってたくさんあります。
でも奈那がいるから私は前に進むことができているのです。

奈那、サナのところに生まれてきてくれてありがとう。
奈那はサナの人生の宝物だよ。
奈那はサナに必要な物を運んでくれた。
こんなに小さな体で頑張ったね
偉いよ
大好きだよ

きっかけ

きっかけって身近にあるんだね。
何も知らない君に教えてもらったよ、ありがとう♩

きっかけ

生きることに愛想が尽きていた私を変えてくれたのは他でもない君の笑顔だった。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted