One for all

 なぁ、相談があるんだ。俺の代理で旅行に行ってくれないか? どういうことだって? 分かってる、これから説明するよ。
 ほら、昔、俺がよくネットゲームしてたの知ってるだろ? そこでさ、凄く仲良くなったヤツらが居るんだ。二人居てさ、そいつらとはもうLINEの交換もしてる。ほら、よく俺が授業中にケータイいじってるの知ってるだろ? そう、そういうこと。もう最近じゃゲームそっちのけだよ。ずっと三人で駄弁ってる。昔は三人でギルド立ててミッションクリアとかしてたけど、最近は全然だ。そう、で、出たんだよ。旅行の話。
 いつだったか、「一度会って皆で旅行に行かないか」ってね。いわゆるオフ会さ。最初は冗談半分だったんだけど、話してるうちに段々みんなその気になっていってさ。もう宿の予約もしてあるんだ。それが三日後。……そう、被ったんだよ。練習試合の日程とさ。
 俺だって旅行は行きたいよ。宿の予約とかを率先してやってたのも俺だしな。そっちにばっかり目が行ってて、練習試合のことすっかり忘れてた訳なんだけどさ……。なぁ、頼むよ。顔も知らない相手との旅行の約束ドタキャンしたら、流石にバツが悪いだろ。大丈夫、さっきも言ったけど、オフ会はこれが初めてなんだ。俺の代わりにお前が行ってもバレないって。費用は払うし、普段話してる内容とかも伝えるからさ……頼むよ、友達を助けると思って! な?



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 ね、お願い。こんなこと頼めるの、あんたしか居ないの。そりゃ、あたしだって最初は行きたかったけどさ。でも、よくよく考えてみれば、どんな人が来るか全然分かんないじゃん? え? そんなの最初から考えておくべきだったって? そりゃそうだけど、その場の雰囲気とかノリとか勢いとかあるじゃん。
 でもさ、やっぱ変なオッサンとか来られて絡まれたりしたら嫌だし。かといって、折角仲良くなったのにドタキャンするのもさぁ……だって、もう二日後だよ? フツー、もうみんな準備してるよね。さっきもLINEしてたけど、みんな楽しみだって言ってるし。やっぱやめたい、なんて言い出せるわけないよ。
 だからさ、ホンットお願い! ホラ、あたし、ネット上じゃ男で通してるからさ。あんたが行ってもバレないんだって。大丈夫、代役だなんてバレないように、普段話してることとか教えるからさ……お願い、友達を助けると思って! ね?
 ……え、ちょっと待ってくれ? ちょっとってどれくらい? さっきも言ったよね、あたし。もう明後日なんだよ? 待ってって言われても、あんたに断られたらもう後が――は? 多分大丈夫? ホントに? じゃあ何で即答してくれないの? ほぼ行くってなら、もうここでそう言ってくれればいいじゃん。はぁ……ま、無理言ってるのはあたしだし、ほぼ確、ってならいいけど。明日になって無理とか言ったら、恨むからね。え、費用? そりゃ、行ってくれたら払うけど……無駄に派手に遊ぶとかは止めてよね。変なお店行ったりとかさ。


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 そうそう、もう明日なんだよ。よく覚えてたな、お前。でもさぁ、正直さぁ、やっぱ面倒くせえわ。いや、マジな話、何で顔も知らねえ奴と会わなきゃならんわけ? って思うわけよ。キモいオッサンとか来たら最悪だぜ? どんな顔して観光しろっつうんだよ。話合わせてただけなのに勝手に宿も予約されるしさぁ。マジ最悪だわ。
 ……あ? 代理? マジで? お前、神かよ。いやぁ、それ助かるわぁ。じゃ、頼むわ! まぁ適当にしてりゃバレやしねえだろ。費用? 何だよ、タカる気かよ。お前、もしかして人の金で遠出したいだけ? 違う? じゃあ何で――あー、まぁいいや、それくらい。どうせ野郎ばっかだしな。ただ、変なことしたら金払わねーからな。出すのは宿代と飯代くらいだぞ、マジで。領収書貰って来い、領収書。ま、それ以外は適当にやってくれや。いやぁー、先輩想いの後輩持てて幸せだわー、俺。
 ……ん? 条件? お前、お世話になってる先輩に対して条件とか……は? 『楽しかった』って旅行後に言え? 何だそりゃ。あー、まぁ、別にそれくらいならいいけどよ。
 しっかしお前、それどういう意味での発言なの? 俺の今後を気遣って? 菩薩かよお前。あー、いやでも助かるわ―、マジ助かるわー。



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 その後の調子は? いい感じ? 良かったじゃん。代役の話もバレてなさそうだろ? そりゃそうだろうよ。バレるワケねえもん。え? 何でそんなこと言い切れるんだって? さて、何でかね?
 それよりさ、費用の件だけど……ああ、うん、じゃあその額で。何だか悪いな、タダで旅行させてもらって。おまけに――あ、いや、なんでもない。
 で、『また一緒に行こうぜ』って言われてるって? 良かったじゃん。俺も鼻が高いよ、満足度問題ナシでさ。でも、次はどうすんの? ……また俺が行こうか? うん、いいよいいよ、俺は楽しかったし。……また金さえ払ってくれればさ。
 ……ん? 写真? 送ったじゃん、いっぱい。え? メンバーが誰も映ってない? そりゃそうだろ、俺、風景ばっかり撮ってたし。あ、そっか、気になるよな、他のメンバーがどんな奴なのか。悪い悪い。いや、全員オトコだったし、興味ないかなって。次は撮って来てくれって? あー、はいはい、分かった分かった。善処しますよ。覚えてたら、だけど。
 それより、どこか飯行かない? ちょっとくらいなら奢るよ、俺、うん。いやなに、ステキでホカホカな臨時収入があったからさ――。

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【第125回フリーワンライ】 使用お題:言葉とは裏腹に ジャンル:オリジナル 備考:Twitterで開催しているフリーワンライに参加した際の作品です。しょーもない笑い話です。さくっと読めますので宜しければどうぞ。 超備考:新作書いたらTwitterで告知してます。宜しければ。http://twitter.com/drawingwriting

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-19

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