死ぬことがこわい

いち

『○月×日、○○市で男の子が遺体として発見され──・・・』

また死んだ

毎日誰かが死んでいる

僕もいつかは死ぬだろう

もしかしたら今日かもしれない

だって僕も"今日死ぬかもしれない人"の1人なのだから

生きたい理由も無い

父は女を作って出ていき、母は新しい男の家に今日も泊まるのだろう

暗い部屋

ラップのかかった不味そうな夕飯

そろそろテレビの画面も砂嵐に変わる

テレビを消す

時計のカチカチと言う音だけが部屋に響く

この時間が1番嫌いだ

朝が来たらこの時間寝てない自分に後悔するだろう

夕飯のラップを外し、生ゴミに捨てる

これを見ても母は何も知らない顔をするだろう



「寝ないとな」

夜は眠れない

睡眠薬を飲んで布団に潜る

目を瞑る

今日もつまんない1日だった

明日も特に何も無く、どこかで人が死ぬのだろう

明日は殺人か、それとも事故か

明日死ぬのが僕の番だったら、寝ている間に死にたいなあ

意識が遠のき僕は寝た


朝が来た

冷蔵庫を開けヨーグルトを食べる

母の姿は無い。やっぱり男の家に泊まったのだろう

シャワーを浴びて、制服に着替えて、鏡を見る

くまが濃くなった

元々肌が白いからか、凄く目立つ

・・・不健康な顔だなあ


支度を済ませ、家を出る

ずっとカーテンを閉めているから、太陽が眩しく感じた

駅は人で混んでいた

いつもより騒がしい

遠くからパトカーが来ている

「人身事故ですって。女の人。やだわぁー」

事故

どうやら今日死んだ人は、電車に跳ねられたらしい

自殺なのかな・・・


"見たい"

ふと、見たいと思ってしまった

不謹慎だな、自分でも凄く思う

人混みを掻き分け、前に行く


手・・・が見えた

血が付きまくって赤い手

吐き気がした

と同時に何故か興奮を覚えた




──僕も死んだら人に見てもらえる?


笑みがこぼれた

死ぬときは公共の場で死のうかな

電車は遅れている

学校、これは遅刻だなあ

遅延証を貰い、電車を待つ

まだまだ騒がしい駅

はぁ、うるさいな

「ったく、死ぬなら他所で死んでくれ」

「かわいそうにねぇー」

色んな言葉が飛んでいる

僕は彼女に何を言ってあげれるだろうか

自販機でホットミルクティ一を買い、椅子に座る

1口飲んで、空を見る

「・・・お疲れ様、かな」

死人を見た時、ゾクゾクした

こんな事を言うと将来殺人犯になるんじゃないかと心配されそうだ

違う

僕も死んだらああなるのかと思ってゾクゾクしたんだ・・・

殺されたい

自殺はちょっと怖いし、誰か僕を線路に落としてよ

死ぬことがこわい

死ぬことがこわい

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-10

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