*星空文庫

青に染まる

あおいはる 作

 青い夢をみる、まよなか。
 となりにいるひとが、さけぶ。うめく。泣く。笑う。怒る。お酒を、がぶがぶ、のむ。また、笑う。まよなか。
 青い夢は文字通り、青い夢です。
 黄色でも、赤でも、緑でも、黒でもない。
 あお。
 となりにいるひとは、はて、どちらさまだったかな。まよなか。
 お酒は、おいしい。
 お酒は、気持ちいい。
 お酒は、いやなことを忘れさせてくれる。
 お酒は、にんげんを素直にさせる。
 お酒は、涙をさそう。
 お酒は、怒りを呼び起こす。
 お酒は、笑いをうむ。
 ぼくは、お酒をのまないで、オレンジジュースをのむ。まよなか。じゅうななさい、だから。
 青。
 蒼。
 碧。
 あお。
 からだのなかが、あおに満たされてゆく。気がする。オレンジジュースをのみながら、となりでお酒をのんでいるひとのことを、たのしそうだな、と思う。お酒をのんでみたいな、とも思う。でも、こわいな、とも思う。となりにいるひとが、どなたさまだったか、忘れてしまったけれど、まよなか、しらないひとでも、孤独よりは、まし。
 青い夢。
 夢。
 ゆめ、だよ。
 青い絵の具を溶かした、水のなかにいる。
 海のなかを、さまよっている。
 皮膚のすきまから、青が侵入してくる。からだじゅうにいきわたる、浸透する、感覚は、心地よく、それでいて、ちょっとだけ、こわい。
 となりにいるひとは、どんどん、どんどん、お酒をのむ。ごくごく、がぶがぶ、のむ。まよなか。たばこのけむりが、しみこんだ、お店のソファ。まよなか。となりにいるひとは、なにか、相当いやなことがあったのだろう、さけんで、うめいて、泣いて、怒って、とつぜん笑いだしたと思ったら、また怒りだす。
 青い夢のなかで、ぼくは、青い海の底で、青いワンピースをきた女の子と、青いソーダをのんで、ブルーハワイ味(といいながら、その実態はいちごやレモンとおなじ味という)のかき氷を、たべている。
 染まる。

『青に染まる』

『青に染まる』 あおいはる 作

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-02-07
CC BY-NC-ND

CC BY-NC-ND
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