大切の迷路

私は既婚者になった。
あなたを捨てて。
あなたは家族を捨てて私を追いかけてきた。
それが…とても気持ちよかった。
それだけなはずだった。

今更、会いたい


本当に今更。


あなたは私の前から
消えた

腐ったような欲望の溜まる場所キャバクラ。
私が一番を名乗れる場所はここだけだった。
自暴自棄で踏み込んだこの世界。
誰よりも見てもらえる
私がその場に立つだけで男の人は私に夢中になった。
もっともっと背筋を伸ばして。
高嶺に刺さる花のようにしゃんとするの。
大丈夫、自信を持って。
私は前を向いている。
夜でしか輝けないと言う事実を必死に埋めた。
本当の愛を手にしていないことも全部全部。
本当は太陽の下で胸張りたかった。
太陽を遮断して眠る、太陽と入れ替わりでの1日の始まり。


大丈夫。これでいいの。


たくさんの強がり。
どんどん積み重なる防御の壁。
暗いフロアで映える隙のないメイク、キラキラの真珠のハイヒール。
真実のない会話全てが防御の壁。

そんな嘘の塊。
そんな私をぶっ壊してまっすぐ前に立つのが縁高 希(hutidaka nozomi)。


すっごく女々しくて自我が強くて
だけどとっても男らしい。
誰よりも大きな愛を私にくれた。
ずっとどこにも行かないと思っていた。
私が何をしても絶対味方だと思っていた。

たくさんはぐらかしてたくさん傷つけた。
あなたの辛そうな顔を見て見ぬふりをしてきた。
あなたの覚悟をも無視をして。



始まりも終わりもあなたでしたね。

まっすぐ愛をくれてありがとう。
そしてごめんね。
ひねくれものでわがままでいっつも道を間違えるだらしない私を、あなたはいつも支えてくれた。
あなたを見ないようにしてきた私。
気づきたくなかったな。


この会いたいはなんですか?

私が夜を上がった理由は大好きな人が出来たから。
あなたにいつも会いたいと思うのに、彼氏は他に居た。
私が初めてこの人のために夜を辞めようと思えた人。
それが私の夫。


今まで希とたっくさん遠出をした。
それが私の趣味だった。
なんにも飾らなくてもいい希と居るのは居心地がよかった。
いつものラーメン屋にいつものスタバ。
行き先の決まってない遠出。
どんだけ走るんだよと車が言いたげなくらい遠くに行った。
私仕様になっていく希の車。
私のカラオケタイムの大熱唱も、私の声が好きだと言ってくれた。
全てが私のため。
自惚れてた。
他に男を作るくせに、希はいなくならない。
ずっと私を好きでいてくれる。
ずっと追ってきてくれる。
あの辛そうな顔を見てきたのに。
悲しんでるのも傷ついてるのも知っていた。
でも希を恋愛対象じゃないと思ってた。
希とキス?笑っちゃうね気持ち悪い。
手も繋ぎたいと思わなかった。
「そういうんじゃない」
と腐る程言ってきた。

匂い、声が好きじゃない。
でも、会いたい。
いなくならないで欲しい。
一緒に居たい。
だから今まで彼氏出来ても希と出かけまくった。

でもね。
初めて裏切りたくない人が出来てしまった。
希より大事。
だからもう希に会えない。


夫と結婚が決まった時そう決めた

涙がとまらなかった。
希、あの時の失恋の時より私泣いてんだけど。
希より大好きな人。
そうだよね?

希とのさようなら。


あれ。
涙止まんない。

「大晦日、地元の呑みの後実家帰ろうかな」

夫と付き合っているた頃の正月。
彼が実家に帰った。

それを聞いて私の頭の中に浮かんだのは、希の事だった。
希何してるかな。



夜を辞めて昼職に就いてから、希との時間は激減した。
今までは彼氏が出来ても仕事を辞める事なんてなかった。
だから私と希は衝突した。
「俺の気持ち知ってるよな?」
私の初めての行動にとても焦っていた希。
「さすがにつらい」
「今までのようには出来きらん。」
そう言って以来、あまり遊ばなくなった。
LINEも返ってこない事があるようになった。
それでも縁は切れていなかった。


 {希
  大晦日空いてる?

大切の迷路

大切の迷路

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-07

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