「ありふれた女よ なにを狙ったの?」

「ありふれた女よ なにを狙ったの?」

 







    






  


夜に泣かされ 朝を嗤っていた少女 林檎を抱いて 眠る昼時



朝焼けに 騙されたのさ 棄てたのさ 拾うだろうさ 他の誰かが



「クソったれ」 「クソとはなによ  無礼じゃない  あたし、パンダの鼻くそなのよ」



アマゾンの ワニの目ヤニは 切なくて とり残されて 忘れられゆく



アフリカンビートに散文の芯を見る 無 政 府 主 義 が 追 い 駆 け て く る



午睡の後 ゴールデンバット 世界 聴く 世界が 続く 紫煙の 哲学



孤高の知 一人眺める 荒廃は 詩の誕生日 詩が生きる午後



「切なくて」 リピートの文字 持て余し 豆乳のなか 浮かべてみよう



膨らんだ 消化不良の 語彙落とし 人々と待つ バス停の雨



放たれた 世界の重さ 耐えられず やけくそに切る 数ミリの髪



誰でもいい 教えてくれよ 創世記 俺の歯ブラシ どこに隠した?



詩人なら 山ほどいるよ バス停に みな青ざめて 時計気にした



胡蝶蘭 誰か手向けた 歌の墓地 何回か書き 難解に死す



血眼で 憲兵 夜に 捜してる ブラック・バードが 残す余韻を



イメージの 弾 尽き果てた 戦場で オムレツ 作る 恋人が待つ



生き急ぎ 難解な 詩を 描く人よ まあ座って 饅頭を 食え



近未来 この世の終わり バイオリン デビッド・バーンが くるくる 回る



つまんない 人生だったさ ゴダールの 映画眺めて ひとを待つ 夜



半生を 描いた語彙が 泣いていた ポップコーンが うらやましいと



退屈な 午後だったのよ 半殺し パステルカラーで 墓場 描いてる



君が描き 僕が書いてる 青リンゴ 食べずに 僕ら 食べられている



詩が眠る 金庫破った この実存 プジョーで逃げる 霧が晴れたら



誰よりも 澄んだ巻き毛が 無垢になる 哀れみの朝 手紙でもくれ



約束の 地平の上で 誰か泣く 跡には夜の 遺骸残るよ



苦戦する 詩の前線の 膠着は バナナが朝に 泣いていたから



包囲され インスピレーション 詩の一秒 忘れた言葉に 背後 撃たれる



人が去り あの語句の意味 死んだなら カトレアの そば 葬ってくれ



僕がいま 泣いたら きみは 許すかな 狙い定めて 鰯を捌く



機知もなく ユーモアもなく 黒光り たださみしげに 突っ立っている



物語 疾走する街 彼 彼女 衝動だけを 携えて



詩の瞬間 一度きりなの 命がけ “L” で駄目なら “E” で終わるの



一 か 八 賭けてみるのさ この比喩で 駄目なら 世界を すれ違うだけ



棄てちまえ 運を試して 韻を踏む 死ねば おしまい 後腐れなし



ミスったら 拾ってやるさ その一行 魂だけで チャラになるのさ



漆黒で 晩年を描く パレットが 髪 吹き上げる 埋葬の 朝



喪失の 隠喩の廃墟 銃を取り 君 誇らしく 前髪を 裂く



雪崩来る 人 見失う 雪の中 冬には冬の 哲学がある



????? ??????? ????? なぜの挙句は なぜだけ残った



ペテロより ユダになりたかった 教会 ゲヘナは人の 道に思えた



教会は 既に末期の 匂いした ハルマゲドンを 希う人々



なにもかも 諦めたのさ ジーザスより なじみの絶望 優しかったんだ



片道で 歩いて逝くさ 地獄まで ナザレで会ったら あばよと言うさ



愛を説き 裁きも説いた 宣教師 ユダは確かに イエスを愛した



バイブルの 虚ろな救い つらかった なじみの苦悩 こよなく抱いて



「ありふれた女よ なにを狙ったの?」      まだ メイ・ティンの 写真 見ている



瞬きで 運命の日の 賭けに死す きみこそ 僕の チャイナガール



背中向け 寂しかったのは 僕だった 背中を見てた あのファムファタル



「今生の別れね 国は人を縛るから」   夜景の中へ      メイ・ティン            消える



恩寵の あの11月 河原町 切なく消えた 中国女



愛してた      自分の国より   ずっと     きみの国の       敵になっても



泣けてくる 君が残した 繁体字 聴いてやるんだ         “China girl” を



秋 紅し 中国女の 頬 触れて いまさよならの 謝謝を聞く



「国よりも あなたが好きよ」      メイ・ティンに 片言でいい 謝謝と言う



国 棄てぬ ただ 一日の 恋だった 香港の灯は きっと せつない



「南京は 忘れた あなたの せいじゃない」    "China girl" を 聴いている 夜



一度だけ 握った感触 その温度 思い出してる 恩寵の日を



時差を越え 君と繋がる   Depression   2時間早く 僕は哀しむ



染み残し 筆談のメモ 繁体字   China girl の   痕跡探す



「あたしより バカな女は いないけど 特別になる ここを去ったら」



振り返らず    五条通を    貫いた     棄てられもせず 人は国家を



残された 筆談の文字 痩せていて あの terrible の 国で生きてる




 







    






  

「ありふれた女よ なにを狙ったの?」

「歌集」第3作目。2月6日に詠んだもの。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

「ありふれた女よ なにを狙ったの?」

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-07

Copyrighted
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