独占欲。

可愛くない独占欲を、私はどこまで貴方に見せていいのでしょう。

胸の中に溢れた黒は、何処までいったって独占欲にかわりない。


私は、恋人のことが大好きだ。優しくて暖かくて、そばにいるだけで落ち着く。そんな素敵な恋人をもっているからこそ、私は日々、自分の胸の中に生まれる独占欲と闘っている。




最近暖かくなって来たからかな。彼の服が少し春に寄せたものになって来ていた。黒に染まっていたコートではなく、最近は優しいイメージを与える茶色コートを着ているし、シャツのボタンも二つ開けていた。それが彼のファッションである事を私は知っているし理解しているけど、何故か少し胸がもやもやした。



開けた胸元から見える素肌は綺麗で、柔らかそうで、滑らかで。思わず触れてしまいたくなる。でも私は気づいてしまった。きっと、そう思うのは私だけではないと。

この肌に触れたいと願うのは、きっと、私だけじゃない。


そう気付いてしまえば後は早い。胸にまた、黒いどろどろとした独占欲が生まれる。


誰も彼に触れないで。触れさせないで。
誰も見ないで。魅了されないで。好きにならないで。


可愛くもない独占欲は、簡単に生まれていく。そして、私の胸を満たしていく。




春の装いで仕事に向かう彼を見送るのは私のお仕事。今日もそのお仕事をするけど、手が勝手に動いてしまう。そして、開けた胸元から見えた素肌に触れてしまった。
「…っ、どうかしたの?」
驚いた彼は目を軽く見開きながら問い掛けて来たけど、ううん。と首を振るだけに留めた。







可愛くもない独占欲は日々生まれていく。私は、この独占欲と共に生きている。
伝えてはいけない言葉たち。伝えてしまったらきっと、貴方の事を困らせてしまう。嫌われたくない。


だから今日も、私は自分の唇に心に、小さな鍵をかけるんだ。

独占欲。

生まれてくる独占欲との向き合い方がわからなくて、衝動的に書いてしまいました。共感していただけたら嬉しいですが、何かアドバイスがあれば教えて欲しいです。切実に。

次回作も是非、宜しくお願いします。

独占欲。

  • 小説
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  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-05

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