零下の部屋

「心臓に、魚の小骨が刺さったの」



ちくちく、     血管      ちくちく。



寝間着のままゴミ出しに行く月曜の朝


僕はテーブルに置かれた弁当を手に取り

家を、出る


    夕方



僕が帰ってきたら、今度は彼女が出て行く


僕がいない間寝ていた彼女

彼女がいない間寝ていた僕



部屋に舞う白い息   漂う埃   失う誇り


口には出せない感傷  綯交ぜの感情


空っぽの部屋にこだまする溜め息が、

独りでに、増殖している


脱ぎ捨てた下着       縫い掛けた雑巾


   シンクに積まれた食器   斑らに空く戸棚


    冷たくなった服で満たされた洗濯機


 を、回すのは3日後     ぐちゃぐちゃの布団


    散在する重要書類    や   チラシ


 要るモノ    要らないモノ   捨てるモノ



ぜんぶ、 ぜんぶ、 ごちゃごちゃと、 綯交ぜ。


休み無しの 安月給で暮らす 毎日



僕らは共に生きているだけで

生き生きとしていない 毎日


万年冬の世界で暮らす2人


今日も、綺麗な雪が降る。

零下の部屋

零下の部屋

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted