恋のおはなし

世界中にありふれた、若い男女の物語。

act1 Silent Play


「これ終わったらトランプの話してくれる?」
乱れた髪の毛を搔きあげながら真下梨花がゴムをつけている
本城皇成に尋ねる。
「いいよ。あーくっそ!なんか入んねえこれ!」
「短気だね。新しいのあるしやってあげるよ」
梨花は新しい包みを開けて皇成の先にそれを載せる。
中心がぶれないように、口でくるくるとゴムを回して皇成にかぶせてやる。
「・・・・・慣れてるね。誰にでもこうするの?」
恍惚を隠しながら皇成が梨花に尋ねる。
「皇成にだけだよ」
「それは別になにも嬉しくはないけど」
そう言いかけた言葉を皇成は慌てて飲み込んだまま
開かれた梨花の両脚に手を置く。
イクのも勿論好きだけど、この瞬間が皇成は好きだ。
ずぶずぶと自分のそれが梨花の中に侵入していく。
奥まで挿れる。
梨花の吐く吐息に興奮する。
「今日はサイレントプレイだからね。守れなかったらその度500円」
梨花もそれを忠実に守っている。
家の外では下校中の小学生がきゃっきゃとはしゃいでいる。
対して部屋の中は呼吸音だけでとても静かだ。
部屋の中が透けて見える道具ができたら、
小学生はびっくりするだろうな。
そんなことを思う。
急になにもかもどうでもよくなる。
「ねえ、皇成って呼んで」

「ねえ、皇成って呼んで」
男の子は勝手だ。
勝手にルールを敷いて、平気でそれを破る。
「皇成」
仕方なく呼んであげる。
「もっと」
皇成の腰の動きが早くなる。
もうそろそろかな。
「もっと!」
「皇成」
「皇成」
「皇成」
「・・・・・・・・・!!」
はい終わり。
男の子はほんとに勝手だ。
ゆっくり抜いてゴムの処理をする皇成に手を差し出す。
「500円」
「梨花も『皇成』って呼んだでしょ」
「あれは呼べって言うから・・・」
「あー疲れたー」
皇成が大の字になってベッドに倒れ込む。
ほんと、男の子は勝手だ。
でも好き。
本城皇成という人が、好きだ。
可哀相な聡美。
あなたの彼氏は今こうして私の部屋にいて、
こんなことになってるのを知りもしないだなんて。
本当、可哀相。
皇成が好きだ。
もっともっと一緒にいたいし、
色々な経験を皇成としたい。
カラオケに行って二人で手をつないで下校したい。
海に行ったり、お金を貯めてシーに行ったりしたい。
皇成に好きになってもらうにはどうすればいいんだろう。
皇成の処理したティッシュを親にわからないように封筒に入れて
ガムテープでぐるぐる巻きにする。
どうすれば、どうなれば、なにを努力すれば。
皇成は私のものになってくれるんだろう。
日が暮れていく部屋の中に皇成と二人。
今の私は、幸せなんだろうか。

act2 つないだ手

家に辿り着くには遠回りになる河川敷を本城皇成と長谷川聡美は
並んでゆっくりと歩く。
のんびりとした時間を、ランニングしている人、家族で来ている人、
一人の人、同じく下校中の人々がそれぞれゆったりと過ごしている。
「今月2回目だよ?さぼるの。いいの?」
聡美の胸まである真っ直ぐな茶色い髪の毛が夕日と絡まって綺麗だ。
「いいのいいの。俺どうせ補欠だし」
「やる気出したらいいのに」
「やれるだけやってあれだからいいの」
「絶対そんなことないのに・・・」
ぶうっと頬っぺたを膨らませて聡美が下を向く。
「なんで聡美が拗ねるの」
「拗ねてないもん」
立ち止まる聡美を放って皇成はそのままゆっくりと歩き続ける。
なんでも7割くらいできてたらいいんだ。俺は。
一生懸命やって、結果報われないことへの絶望したくない。
のり代は大切にしておきたい。
結局、逃げてるだけなんだけど。
「・・・・・ておい!どんだけ歩かせるの!」
振り返ったら聡美はまだ立ち止まっていた。
めんどくさい・・・けど可愛い。
聡美の元まで戻る。
「なんで歩いてこないの?」
「手つないでないから」
「おっけ。じゃ、いきましょうか姫!」
「わぁい!いきましょう殿!」
「あはは。そこは王子様でしょ。江戸かよ」
手をつないだ途端聡美は上機嫌になる。
ほんと、可愛いんですけど。
「あ!そうだ今度の日曜皇成お昼から空けといてね」
「?なんで?」
「玲奈とカラオケに行くの」
「いつも一緒にいてよく飽きないな。なんで俺も行くの?」
「玲奈に彼氏ができたから」
ごふっ。
飲んでいたカルピスを噴き出しそうになる。
「ね?すごいでしょ?」
「いや、玲奈に限ってそれはないわ。ないない」
「彼氏すごいイケメンなんだよ・・・・」
聡美は自分のスマホを学生鞄の中から取り出して
ラインの画面を皇成に見せてくる。
「ほら!」
「ほんとに?え、これほんとに?」
「イケメンでしょ?」
「なんかこれでイケボなら声優なれるな」
写真をじっくりとみながら皇成が言う。
「わっかるー!背が高かったらモデルもいいね!」
「なんか聡美はしゃいでんね」
「だって嬉しくて。嬉しくない?ドキドキしない?」
「する!俺なに着ていこうー」
さっきまで遠くにいたはずの女性ランナーがだんだんと
近づいてくる。
さっとすれ違う。
はい、もう過去。
今いるけれど、もう少し経てば、
家に帰れば聡美とのこの時間も過去の話。
日曜は楽しみだけど、過ぎてしまえば過去の話。
人生これの繰り返しだな。
隣できゃっきゃと話をする聡美の手をぎゅっと繋ぎ直して、
皇成はそんなことを思う。

act3 初恋

「はい、こちら真瀬雄大君。高3。こちら、同級生の本城皇成君と長谷川聡美ちゃん」
「こんにちは。真瀬雄大です」
皇成と聡美は一瞬言葉が出せずにいた。
「あ!俺・・・俺!本城皇成です!サッカーしてます!」
「へぇ。高ノ宮のサッカー部って強いよね。すごいなぁ」
「いや全然!全然っすよ!」
「なぜ顔赤らめるのよ皇成」
北条玲奈がメロンサイダーを飲みながらつっこみを入れる。
「うるせえな!で、こっちが聡美です」
「はじめまして。長谷川聡美です」
「敬語じゃなくていいよ。二人は付き合ってるんだよね?
どれくらい付き合ってるの?
「じゃ敬語やめるね。16ヶ月でーす!」
「長いね。すごいな。俺も玲奈とそうなりたいな。ね?」
「そ、そうだね」
覗きこまれた顔をふいと反らして玲奈が答える。
「雄大さんまじイケメンすね!」
「そんなことないって」
「いやいやイケメンですって!」
皇成が興奮しながらカルピスを飲む。
玲奈ももうメロンソーダをずびすびと飲み干してしまう。
「私行ってくるけどどうする?」
立ち上がって空いたプラスチックのグラスを顔の前でひらひらさせる。
「俺まだいい」
「私も」
「俺は行くわ」
飲んでいた烏龍茶を一気に飲み干して雄大が立ち上がる。
そのまま2人は扉を開け外へと消えていく。
皇成と聡美はお互いの顔を見つめあったまま言葉を発せずにいた。
先に沈黙を破ったのは皇成だった。
「なにあのイケメン!」
「超絶イケメンだねあれ!」
「俺結構自分のことイケメンだと思ってたけど違ったわ」
「皇成の方がイケメンだよ?」
急に
聡美の顔が真顔になる。
「ちょ、こっちこないでよ。二人が帰ってきちゃう」
向いの席にいた皇成が聡美の隣に座る。
「俺のこと、どれくらい好き?」
「・・・日本一」
「もっと詳しく」
「日本ハムくらい・・・」
「だーーー!!!!お前のその表現力の無さよ」
「じゃあ皇成はどれくらい?」
「恋愛は比べるものじゃないし測るものでもないの。
でも聡美のことは世界で一番好き」
「てっへー!」
「ゴルァ!!お前らいちゃついてんじゃねぇ!!」
メロンソーダとお茶をいれてきた玲奈が両手を絡め合っている
2人に凄む。
「お前さーその話し方雄大さんに引かれるって」
「もう知ってるけど?」
「奇特なお方だ・・・」
「玲奈、雄大さんは?」
「トイレ行ってくるって。長くなるって」
「そこ言うのな。いいな、なんか」
「ねーどこで知り合ったの?てか、なんで私にも言ってくれなかったの?」
「ごめん。なんかわかんなくて。心が気持ちに追いついてこないっていうか
気持ちが心に追いついてこないっていうか、なんかよくわかんなかったの。
日本語なんかおかしい?いやーとにかくわかんなかったの」
ガリガリと氷を噛み砕きながら玲奈がデンモクに手をやる。
「どこで知り合ったのか言ってないけど?」
「あーイベントの売り子してたら声かけられた」
「いつもは断ってんじゃん」
「べ、べ、べ、別に顔が超好みだから受け入れたわけじゃないんだからねっ!!」
「メリオ様はどうすんの?」
「メリオ様は永遠に私の嫁だけど?」
「嫁、かっこ、二次元とかっこ、リアル、か。
お互い惹かれあったんだ。いいね!」
「本城皇成は「超いいね!」を押しましたー!」
聡美がはしゃぐ。
「ね、聡美、天城越え唄ってよ。なんか聴きたい気分」
「いいよー!」
聡美がそう言って玲奈からデンモクを手渡される。

act4 離れていく君の背中が寂しい

夕暮れ時の商店街を皇成、聡美、玲奈と並んで駅前へと向かって歩く。
「もっと話したかったね」
左手を皇成の右手と絡ませながら聡美が言う。
「仕方ないよ。受験生だし」
「そうだな。つーかイケメンだったな」
「もうそれ聞き飽きた」
ラインの画面を注視しながら玲奈がぶっきらぼうに返す。
「なんかちょっと緊張したわ」
「私も」
「私もそうだよ」
玲奈がポケットにスマホを突っ込む。
「あー!明日月曜かー。やだなぁ」
「なんで?学校大好きじゃない聡美」
「恐怖の体育がテニスになるんだよ・・・」
「あはは。それはいやだわ」
「でも文化祭もうすぐだぞ?」
「その話は嫌だ」
聡美が立ち止まる。
「大丈夫だって。聡美が考えてるようなことは起こらないし。
ただの劇劇。ほら、歩いて?」
「むうううう。もうほんとやだ!テニスも劇もほんとやだ!」
聡美の声が大きくなる。
「子どもか、お前は」
ぽんぽんと頭を撫でると聡美の顔が笑顔に変わる。
「ほんと、子ども」
再び取り出したスマホでラインをしながら玲奈が呟く。
「あ!凛発見!ほら、パン屋の前の信号の向こう!」
「あ、ほんとだ。玲奈、お前ラインで凛に言って!」
「もう送った」
「凛ー!!」
聡美が凛に抱きつく。
「えー?なんでなんでぇ?なんでこんなとこで会うのぉ?」
「それよりなんだお前その荷物の山は」
「なにがってアニメDEフェスの戦利品ですよ!もぉー
なんで玲奈来なかったのさー!メリオ様コスの人いっぱいいたよ?
のの松さんなんかねーすっごい人でねー
でも全部買っちゃったもんね。
バイト代全部使っちゃったもんね!てっへー!」
「とりあえず落ち着こうか。凛。話したいこともあるし」
玲奈が凛の右腕に自分の腕を通す。
「なになになに?まさか離婚ですかぁ?
いーやそれはない!ないないない!」
凛がはしゃぐ。
「マック行こう。いい?」
玲奈が振り返って皇成と聡美に尋ねる。
「いいよー」
「4人揃ってたら貴行呼ばないと拗ねるぞあいつ」
「もうラインした。おばあちゃんち行ってるから無理だって」
「相変わらず早いねー」
「ね、ね、なになに?話ってなに?気になるお!」
「だから落ち着きなって。中入ってからね」
スマホの未読が20になっている。
全部雄大からだった。
「鬼スタンプ禁止(´;ω;`)」
そう打って玲奈は少し咳き込む振りをする。
にやけている自分が信じられない。
でも顔が平静を装ってくれない。
さらに咳き込む。
好き・・・なんだなぁ。
あまりよく知らないけど、
それはこれから知っていけばいいわけで。
私ははじめてだけど雄大は違うだろうな。
ってそんなくだらないこと考えてもしょうがないわけで。
次雄大に会うのが楽しみすぎて。
やっぱほんと、好きなんだなぁ。
「次ご注文のお客様ー」
はっとすると凛に腕組みされたまま
目の前に店員がいた。
「あ、えーと、ダブルチーズバーガーとポテトのS・・・」
慌てて現実の世界に帰ってくる。
私らしくない。
でも、早く会いたい。
会いたい。

act5 革命前夜

2-3クラスの机はほとんどが廊下に出され、クラスは大道具、小道具、衣装班に分かれて
それぞれが作業に没頭している。
貴行、岡島貴行は王子様のマントの裾の金のポンポン付けを任されている。
今日は学校での部活動は禁止されており、彼も仕方なく、
明日皇成が付けるマントのぽんぽんを一つずつ、不器用ながらも付けている。
あと8個。
「あーーーー」
誰にともなく言って貴行は大きく伸びをする。
衣装班から離れて教室前方にあるお菓子の山を目指す。
4つの机が合わさっていて、そこにはいろいろなお菓子が置かれている。
自分の分のキノコの山小分けパックと凛が好きなコロンを取ってまた集団に戻る。
「あー肩凝る。凛、お前俺のジュース買ってこいよ」
「いいよー!でも凛今日お財布持ってきてないから立て替えできない!」
「財布くらい持って来いよ。はいこれ」
吉田カバンの財布を貴行は凛に手渡す。
「じゃあいってきまっす!」
「元気だねぇ凛は」
お姫様の衣装から目を離さないまま吉岡未来が貴行に話しかける。
「馬鹿なんだよ」
「あんたもものすごく解りやすいけどね」
「は?なにが?」
「貴行が凛に惚れてるのなんかみんな知ってるからね」
「好きじゃねぇよ別に」
「あんたたちのグループであんたが一番馬鹿で解りやすい・・・
よし。できたっ!!見てこれっ!超梨花に似合いそうじゃない!?」
「見せて見せてー」
他の衣装担の女子が群がってきゃあきゃあ言っている。
その輪から外れて男子2人でやっている小道具担に混ざる。
「うっわなにそれ。そんなん縫い付ける必要なくね!?」
「だろー?ボンドでいいのにな」
「しかも皇成出なくない?ラスト出てきてキスするだけじゃん」
「それなー。あ、凛帰ってきた。お邪魔しましたー」
「うぃー」
「頑張ってこーい」
「結構混んでたー。あんまいいのなかったよーごめんね?」
凛がパックのりんごジュースを貴行に手渡す。
「おい。誰がこんなに買ってこいと言った」
「てっへー!!私も飲みたかったし未来ちゃんもおいちゃんも
蓮君もいるかなと思ってさぁ!あはは!」
「あははじゃねぇだろ俺のプリパラ代!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃん。ちゃんと出すからさ。
はい、これ私と凛の分」

恋のおはなし

恋のおはなし

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2017-01-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. act1 Silent Play
  2. act2 つないだ手
  3. act3 初恋
  4. act4 離れていく君の背中が寂しい
  5. act5 革命前夜