熱と歪み

22時45分
ようやく帰途に就く
凍てつく空気に
鼻をすすりあげると
ツンとくる刺激
水に潜ったときの感覚だ












そう、これは
水没した時間







                        。



       ・        



上を見上げると
月が揺らめいて
赤い光がぽつりと見えた



                               .


                     ・
              



               ・

           



                ・


                         。



光は大きならせんを描いて降りてくる




周囲が不意に暖かくなる











                     ●




赤い光は
灼熱の金属でできた巨大な魚だった


















高層ビルの天辺が熱でゆがむ
       熱に取り巻かれ
   どこにも逃げ場はない


思わずしゃがみこんだ












                   ・






l l l n ll l l



うずくまる僕のそばを
平然と通り過ぎる人々




全ては錯覚だったのか?














立ち上がると
先ほどまでの熱はすでになく
赤い魚などどこにもいなかった

しかし周りのビルの上の方は
みな一様に歪んでいた

翌日も歪んだままだった
だが誰もそれを指摘しない

彼は歪んだビルを気にしつつ
その街で40年勤めた

熱と歪み

熱と歪み

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-10

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