かわいくなりたい

可愛くなりたい。そう願うのは悪い事じゃなくて、誰でも願っていい願いなんだ。

貴方の為に可愛くなりたい

私には誰よりも大切で大好きな恋人がいる。でも素直じゃない私は可愛くなくて、きっと直ぐに貴方に呆れられてしまうんじゃないか。そんな不安と毎日見つめ合っているのも事実なの。
大好きだからこそ、嫌われたくない。可愛いと思われたい。そう思っているけど、可愛さなんて私にはないの。








「ねぇ、好きだよ」
ソファに揃って座り、久しぶりに被ったお互いの休みを楽しもうとテレビを見ていた時、突然彼にそう告げられた。心からの言葉だって勿論知っているけど、愛の言葉を簡単に告げられる彼は凄いと思うし、色んな意味で大人だと思う。
「……ん。」好きの言葉に私が返せたのはたった一文字。恥ずかしいからってこれはないと私自身も思ったけど、【好き】の一言が恥ずかしくて言えないから仕方ない。
でも彼は私が恥ずかしくて言えない事を知っているから優しく笑ってくれる。そして、
「…かわいい」なんて言ってくれるんだ。
その優しさが偶に胸にちくり、と刺さってしまう事もあるけれど、今日はその優しさがとても心地よくて胸が高鳴る。











【好き】の一言が言えたら、彼はもっと可愛いって言ってくれるのかな。それとも可愛いって言ってくれた後にそっとキスをしてくれるのかな。言えない言葉を言えた時を想像してドキドキして喜んでしまう私は【臆病者】だ。【好き】の言葉を口にしてしまったらきっともう止められない。沢山の好きが溢れて止まらなくなって、貴方が誰にも触れられないように、私から目を逸らしてしまわないように【拘束】してしまう。そんな私になってしまうのが怖くて、私は肝心な言葉を何時になっても紡げないんだ。

呆れないで。嫌いにならないで。そう願ってしまうのは我儘だって分かっているけれど願ってしまう私をどうか、許して。



好き過ぎるがゆえに言葉に出来ない可愛くない私。そしてそんな私を好きで居続けてくれる優しい彼。…私はいつまでも、この人の隣に居たい。そして贈ってもらえるこの愛を、ずっと私だけが受け取っていたい。










………可愛い子を食べることが出来たら、そして可愛くなれたら、いいのに。

かわいくなりたい

自分の素直じゃない部分と闘い続け、そして惨敗記録を更新し続けている私と、大好きな恋人に素直になれない架空の少女を小説という硝子の入れ物に入れ混ぜ、一人の少女を作り、その少女を主人公にして今回の小説を書きました。素直になれないところもあなたの【魅力】だという事を、そして、心を許しているからこそそんな【自分】を誰かに見せられるあなたは【素直】で【愛おしい】という事を知っていて下さい。
次回作も是非、宜しくお願いします。

かわいくなりたい

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-08

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