初詣

深夜1時
空気さえ新しい

参詣客は長蛇の列で
皆さまお酒や新春の慶びを
聞こし召してる

わたしの後ろは若くはない夫婦と
7歳くらいの男の子

男の子は言う

ねえ、パパ?

なんだい?
と父親


少年は一生懸命自分の好きな
ゲームの話をする

パパは、ふむふむなるほどと
優しい相づち

そしてまた、ねえパパ?と少年

それから少年は
ゲームのこと
(たまには一緒にやろうね)
境内のあれこれ
(例えば手水舎や屋台のお菓子や鳥居について)

など、絶えず語りかける


30分が過ぎ
父親は疲れてしまったらしく
返事が疎かになってくる
少年は、
ねえパパ聞いてるの?聞いてるの?と
寂しさをうったえた
父親はついに返事をしなくなる

すると少年は
ひときわ大きい声で

ねえパパ?

父親は我に帰ったように息子をみる

パパ、
とってもつかれてるんだね。
おつかれさま。

とにっこり笑う

父親も母親も思わず笑う

わたしは滲んでしまう微笑みなどを隠して
100円玉を用意する


優しい少年は
何を祈るだろう


小銭はつぎつぎと投函される
清んだ音をたてて

初詣

初詣

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-01

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