*星空文庫

裂傷

桐原 水刃 作

砕け散る一瞬に 
複雑に分裂する暗褐色
赤々と滅びゆく夕景に照らされ
刺しあう二人は絡まりあい
瞳を覗き込みあいながら
縺れては解れて
殺しあう
触って欲しいのに
心臓をくっつけたくて
二人頸を絞め合う夕暮れ

膣を許すのは今夜死にたいから
妾のナイフはお気に召すかしら?
靴を舐めるたびに
脳細胞が溶けてゆく快楽に溺れて
ギザギザの反復運動
脱がされて取り残された私が
誰でもなくなっていく夕暮れ

それでも
犯されて剥がれ落ちる一瞬に 
幾多にも分裂する
暗褐色の
群れと群れと群れのひかり
ひび割れて尖る翅
赤らむ硝子破片の散乱
それら褐色の閃光が滲んで屈折した残像
生と死の狭間の
妾の膣とナイフの裂傷
煙草の落とす灰のように
身を任せた代償に何を生む?

顔に精液をかけられても
少なくともまだ生きているうちは
滅びゆく夕暮れの感傷に溺れてしまわないように
やれるところまでやってやる
私の体をめちゃくちゃに汚しても別にいいから
ちゃんと触って
全部出して (話して)
やるだけやって捨てないでね

『裂傷』

『裂傷』 桐原 水刃 作

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2016-12-27
Copyrighted

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