正逆ラスカ(51~)

正逆ラスカの51話から後半のストーリー。
前編をぜひ読んでからのほうがより楽しめると思います!

第51話クリスマスの奇跡

12月25日。
世間ではクリスマスという日だ。
クリスマスというのはキリスト教の誕生日とかよく言われるがここ日本では教会に行ってお祈りするとか盛大なパーティーをするとかそんなことはなかった。ただ言うなら、外には大勢の人とクリスマスの飾りで彩られた町並みがあるわけだ。その、クリスマスという日にオレは…というと

「ごめん、待った?」
「んん、私も今来たばっかだよ。」
待ち合わせ場所にいた一人の女性とオレは話していた。
「じゃあ、行こうかっ。」
「ん!」
オレとその女性は駅の方に向かい歩いていった。
改めて紹介をするとオレの名は瀬戸成世。高校一年生でただいま冬休み中。ゴロゴロライフを楽しみに今日という今日を生きているオレにとって長期休みは有難いものだ。そして、隣にいる女性は同じクラスの双葉蒼。今日は長い髪をおろして黒のコートに赤っぽいニットのワンピースを着ていた。いつ見ても彼女はかわいいが今日は一段とかわいい。で、オレと彼女は今から隣のその隣の街に行く。冬休み直前にオレは彼女にイルミネーションを見に行こうと誘ったのだ。それで今から電車でその所に向かう。
「やっぱ、クリスマスだから人多いね。」
「そうだなー。」
「イルミネーションは夜だから…それまでに何する?」
「オレは何でもいいんだけど蒼は何かある?」
「お買い物したいかな…。」
「それじゃあ、近くにショッピングモールが確かあったからそこに行く?」
「ん、いいよ。」
「あ、電車来た。」
駅のホームに電車が来てオレと双葉は乗った。隣のその隣の街までさほど遠いわけではなかったから案外早く着いた。
駅から出ると外にはたくさんの人が行き交っていた。オレと双葉は近くのショッピングモールに立ち寄った。
「ここのショッピングモールたまに行くんだよね。」
「私…来たことないかも。」
「とりあえず、上から見ていく?」
エスカレーターで5階まで上がりオレと双葉は夜になるまで時間を潰すことに。5階のフロアは主に雑貨とかゲームセンターとかの類があった。
とりあえず、時間もあるからゆっくりまわることに。
「いろいろなお店があるね。」
「まあな。」
「ここいい?」
双葉はアクセサリーが売っているお店に入った。キラキラしたかわいいらしいアクセサリーが多数揃っているお店だった。双葉は一つ一つじっくり見ていた。時折、手に取って似合うかなーとか鏡を見ながら言ってた。それを横で見ていたオレはあなたに似合わない物はない!と言いたい衝動があった。
双葉は満足して次のお店に行こうと言った。いろんなお店に立ち寄っては双葉が楽しそうにしていてそれを間近で見れてすごく幸せな気分に浸ってた。
「わぁーこれおもしろい!」
「ほんとだね。」
「成世くん、被ってみて。」
「お、オレ?」
双葉に被ってと言われたものをオレは被ってみたがその時双葉はかなり笑っていた。オレは恥ずかしくなってすぐ取った。
「似合ってたよ。」
「蒼もいたずらっぽいところあるのね。」
「そんなつもりじゃなかったんだけどなー。」
「アハハ。」
「次、見ていい?」
「うん、いいよ。」
5階のフロアのお店をほとんど見たところで最後にゲームセンターに。相変わらず、ここのゲームセンターは人が多かった。
ユーホーキャッチャーのコーナーを見てたら双葉がこれかわいいと言って立ち止まった。
「やってみようかな。」
「がんばれ!」
双葉はお金を入れボタンを押して操作した。双葉が狙っていたのは大きなピンクのリボンをつけた犬のキャラクターのキーホルダーだった。ものすごく集中してたからオレは黙ってみていた。
「えい。」
ボタンを押すとアームが降りてターゲットの物をめがけて…
「ん…難しいね。」
残念ながら落ちることはなかった。でも、商品そのものが出入り口付近にあったから取ろうと思えば取れそうだった。それで、オレがやってみると言ってお金を投入。
「ここはこっち…。」
オレも慎重に操作していた。アームが降りてうまくいったのか見事そのキーホルダーをゲットした。
「はい、どうぞ。」
「わぁー成世くん、ありがとう。」
「いいえ。」
「成世くん、ユーホーキャッチャー得意なの?」
「いや、そうでもないよ。」
「大事にするね。」
双葉は嬉しそうだった。オレも好きな子にそう言ってもらえて顔がニヤケていた。

「そうだ、ねぇねぇ、成世くん。」
「ん?」
「プリクラ撮ろ?」
双葉はプリクラの機械が並ぶコーナーにオレを連れて行った。中学生、高校生ぐらいの女の子がそのコーナーにたくさんいた。こんなところ普段来ないから新鮮な気持ちだった。
「成世くん、ここにしよ。」
双葉に言われオレもその機械の中に入った。プリクラなんて久々な気がした。双葉はお金を入れ画面をタッチしてなんかいろいろしてた。
『準備はできたかな?かわいくピースしてみて。』
プリクラの機械から音声が聞こえオレは慌ててピースをした。
『さん、に、いち、』

『こんなふうに撮れたよ。』
「あれ?オレ目つぶってる。」
「ほんとだ。」
『二枚目を撮るよ。』
「えーと、」
オレはなんだかよくわからないポーズを取っていた。あっという間に6枚撮影が終わり次はラクガキだよと言われ移動した。
「成世くん、好きなようにラクガキしてね。

「おっけー。」
オレと双葉はそれぞれペンを持って撮った写真にラクガキした。最近のプリクラの加工はすごいなーとオレは思った。肌白いし目がでかいし。オレこんな顔だっけ?と自分で疑ってしまった。隣の双葉は楽しそうにラクガキしていた。
「えーと、こんなんでいいかな。」
オレにセンスとか画力とかそんなものなかったからどうすればいいのか悩みながらやっていた。
『残り、30秒だよ。時間がないときは一発ラクガキがオススメだよ。』
「一発ラクガキ?」
オレには全然わからないことだらけだった。とりあえず、ラクガキして双葉も終わったそうでラクガキはこれにて終了。分割数とケータイ送信をするかしないかとか決めて出来上がるのを待った。
「久々にプリクラ撮ったからなんかおもしろかったな。」
「成世くん、ぎこちない顔だったよ。」
「まじか。。」
「フフッ。」
「あ、出てきた。」
オレは出来上がったプリクラを見て確かにぎこちない顔してるなと思った。近くにあったハサミで切って半分双葉に渡した。
「次は4階に行く?」
「うん、行こっ。」
オレと双葉は4階に降りた。4階は主にファッション系のフロアで服を売っているお店が多く立ち並ぶ。双葉はどうやら、お気に入りのお店があるようでそこに向かった。
「私ね、ここのお店好きなんだ。」
「へぇーかわいいね。」
「セーターが欲しいんだよね。」
双葉はさまざまな服が置いてある中セーターを探していた。
「これもいいけど…んー。」
鏡の前でいろいろ合わせていた。オレは少し離れ他にどんな服があるのか見ていた。
グルッとしてたらいつの間にか双葉の姿が消えていた。オレは迷子にでもなったのか置いていかれたのかと思った。
「成世くん、ここだよ。」
試着室から双葉は顔を出しオレを呼んだ。
「あぁ、ごめんごめん。」
「どうかな…?」
双葉は先ほど選んでだセーターを着ていた。薄いピンク色で首元に装飾がついたものだった。
「かわいい!似合ってるよ!」
「ありがとう…。」
双葉は少し照れていた。それで、元の服に戻って試着室から出てきた。そして、カゴを持ってお会計のところに。
「さっきのセーター?」
「ん、成世くんがかわいいって言ってくれたから…。」
「あ、い、」
そんなこと言われるとすごくドキドキするんだけどおおおとオレはなっていた。
「成世くんは何か見たいものあるの?」
「オレはとくに…。」
「じゃあ、もう一ヶ所いい?」
「うん、いいよ!」
次のお店でもかわいいらしい服が置いてあったがさっきと違って少し変わったデザインの服が多いところだ。
「ここのお店で気になってた服があるんだけどー。」
双葉はウロウロして自分が気になっている物を探した。
「あ、これ。」
双葉は探していた服を見つけたようでそれを持って試着室に入って行った。
オレは外で待っていた。双葉は別の袋を提げ帰ってきた。どうやら、購入したようだ。
「おかえり。」
「待っててくれてありがとう。」
「いいえ、どうする?まだある?といきたい所。」
「んーもういいかな。今何時かな?」
オレはスマホを取り出し時間をみた。現在は11時すぎだった。
「お昼ご飯食べる?たぶん、人多くなるだろくし。」
「ん、そうしよ。」
オレと双葉はフードコートが立ち並ぶ3階に降りていった。既にたくさんの人が席に座っててとりあえず空いている席を探していた。
が、結構もう埋まってた。
「空いてる席…。」

「あれ?瀬戸?」
「え、はい?」
オレが席を探していたら声をかけられた。見ると知っている顔が2人。
「こんなところで何してんだ?」
「何って…買い物です。」
「誰と?」
「えーと、」
「あれ?副会長さん?」
「双葉…ということは。」
「いえ、そんなんじゃないです。」
知っている顔とは同じ高校の副会長とその彼氏の一風先輩だった。2人ともお昼ご飯を食べていた最中だった。
「ここ座る?」
「え、いいんですか?…」
「もうすぐ、終わるからいいよ。」
副会長はオレと双葉のために席を開けてくれた。お礼を言って座った。
「瀬戸。」
「はい。」
一風先輩に何か言われオレはぺこぺこ頷いた。そして、またなと言って先輩は去っていった。
「あぁ、ごめん。何食べる?」
「見てきていい?」
双葉は立ち上がって何があるのか見に行った。その間オレは考え事をしていた。

そもそも、今回のデート?というのはオレが双葉のことを好きだというのももうおわかりだろうが、彼女とはまだ付き合ってもないし告白もしてない。早く告白しようとは思っていたがなかなかできない。というか、オレはチキン…?ヘタレ?何でもいいけど、とりあえず告白してないというのは本当。それで、今回こそはと、思ってデートに誘い告白の機会を狙っていた。一風先輩にがんばれよと応援されたが先輩のようにサラッとはできないのが事実。どうすれば…と悩んでいた。

「成世くん?」
「は、はい。」
「私買ってきたから成世くんも言ってきたら?」
「あ、わかった。」
オレは財布を持って自分の食べ物を探しに行った。

「ただいま。」
「おかえり、早いね。」
「まぁ、いつもだいたい決まってるから。」
「じゃあ、食べよっか。」
「うん。」
オレと双葉は昼食を取った。食べながら次はどこへ向かうか話し合った。イルミネーションは外が暗くなりだしてからライトアップされるのでまだまだ時間があった。このまま次の2階のフロアを探索するのでもよかった。けれど、せっかくだから外を歩いてみようかというふうになった。
ご飯を食べ終わったときにオレは1つどうしても買いたいものを思い出した。それで、双葉にここで待ってもらってオレは急いで5階のフロアに戻った。

「んーこっちか…いや、こっちか…。」
オレは迷ってた。しかし、長く待たせるのもよくないので早く決めなければならなかった。それで、店内を歩いていたら双葉にぴったりの商品を見つけた。オレはそれを急いで会計のところに持っていきラッピングをしてもらった。そして、急いで3階に戻った。
「ごめん、終わったから行こっか。」
「何買ったの?」
「秘密。」
「秘密なの?」
「うん。」
「じゃあ、仕方ないね。行こ。」
双葉は席から立ち上がった。1階まで降りて外に出た。少し風が吹いていて寒さを感じた。
「どこ行く?」
「そーだね。。」
オレも半ば思いつきで外の散策をしようとか言ったからどこへ行くかまでは何も決めてなかった。
「イルミネーションの付近に公園があるらしいからそこまで歩こ。」
「わかった。」
オレと双葉は人混みをかき分けながら前に進んでいく。少しすると住宅街に入った。
「蒼は、お正月はどうするの?」
「だいたい、おばあちゃんの家に行ってお節料理食べたりしてるかな?」
「そうなんだ。」
「成世くんは?」
「オレは…とくに。まぁ、おばあちゃんの家もちょっと遠いから。」
「そっか…。」
「毎年、初詣は行くよ。近くの神社に。」
「確か…幸の宮神社だっけ?」
「そうそう、あそこは学問の神様と恋愛の神様で有名なんだって。」
「私も行ってみようかな。」
「なんなら、…一緒に…。」
一緒に、一緒に行きたい!!と心の叫びがもれそうだった。双葉はオレが何を言おうとしたのかわかったのかいいの?と聞いてきた。オレはもちろんぜひとも、お願いしますと道端で土下座する勢いで返答した。それを見て双葉は笑っていた。
「あ、あれじゃない?」
「結構大きい公園だね。」
住宅街を抜けて15分歩いたところに公園を発見した。さすがに寒いのかあまり人はいなかったが子供が走ってたり犬の散歩をしている人がいた。
「ベンチに座る?」
「そうだね。」
ベンチに座ってボーッとしてた。隣にいる双葉のことを意識すると心臓がドキドキしてしまい落ち着けなくなりそうだったから。双葉は犬の散歩をしていた人のほうへちょっと行って犬の頭をなでいた。子供がくれば一緒に遊んでた。あることを思い出した。数ヶ月前、というかオレが双葉と出会ってそんなに月日が経ってない時に公園で一緒に過ごしたことがあった。その時は双葉は子供に声をかけられても何も言えなかったが今は違う。彼女自身も成長したように思える。人見知りな彼女は今ではだいぶ心を開いているようにも見えた。
「成世くんも来ないのー?」
「え、オレ?」
「早くー。」
「わ、わかった。」
双葉に呼ばれオレも子供と一緒に遊んだ。一緒にショッピングモールで買い物をするのも楽しかったがこういうのも全然アリだなと思えた。しばらくして、空が赤色に変わってきた。子供たちもお家に帰るとのことでさよならをした。
「楽しかったね。」
「寒いけど走ったら暖かくなったな。」
「だね。私も暑いかも。」
「どうする?行ってみる?」
「ゆっくり行けばいいんじゃないかな?」
「そうだね。」
荷物を持ってオレと双葉は公園からイルミネーションがある通りのほうへ行った。
夕方になると日中より冷え込んでくる。
「まだ、暗くならないから…晩ご飯食べてからにする?」
「そのほうがいいかな。」
「帰り遅くなるといけないんじゃない?」
「一応、お母さんには連絡してるよ。」
「時間あるし飯食いに行こ。」
まだ日が完全に落ちてないため先に晩ご飯を食べることに。通りにちょうどオシャレな洋食店のお店がありそこへ入った。中はいい匂いがして余計にお腹が空いてくる。
「何食べようかなー。」
「私、決まったよ。」
「え?早くない?」
「えへへ、このふわとろオムライストマトチーズがおいしそうだったからそれに。」
「確かに、おいしそうだな。」
オレもメニューをザッと見て正直何でもよかったからステーキセットに決めた。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい。」
「少々お待ちください。」
「成世くん。」
「ん?」
「今日は楽しかったね。」
「…まだ、メインは終わってないぞ。」
「だけど、たぶん、楽しいのに間違いはないよ。」
「ならよかった。オレも楽しかった。」
「うん。」
彼女の笑顔が本当にオレは好きだった。楽しいと言ってもらえて幸せ者だと感じたし。しばらく待っていると料理が運ばれてきてオレも双葉も料理を堪能した。

お店を出ると外はすっかり日が落ちて暗くなっていた。相変わらず人の多さは変わりなかった。
「ちょっと寒いね。」
「だね。」
会話してると口から白い息がほわっと出ているのがわかる。オレと双葉は通りを歩く。歩いていると少しずつイルミネーションがされた建物が並んでいた。赤や青、緑さまざまな色がキラキラと光っていた。中にはハート型やサンタの形のイルミネーションもあり見るだけでウキウキした気分になれる。
「わぁ…きれい。」
オレと双葉の目の前にはおそらく万は超えてるだろう、ものすごくたくさんのイルミネーションの電球で飾られてたクリスマスツリーがあった。
「写真撮ろ。」
双葉はスマホを取り出しそのクリスマスツリーを撮った。オレも記念にと思って写真を撮った。他にもいろいろなイルミネーションがあり一緒に見て回った。時折、カップルの人たちとすれ違ってその度に早く言わなきゃと内心焦りもあった。でも、どう持ち出せばいいのかやはり悩む。
「本当に来てよかった。」
「そうだね。」
「成世くん、ありがとう。」
「んん、こちらこそありがとう。」
「寒いね、そろそろ帰る?」
「そうだね。」
オレと双葉は駅に向かって帰ろうとした。けれど、帰ったらダメだ。言わなきゃ…。オレは自分を奮い立たせた。双葉は先に歩き出した。
「成世くん、行かないの?」
「蒼、は、話が…あ、あるんだ。」
オレの声は震えていて滑舌も悪すぎて緊張しているのがバレバレだった。
彼女は振り返った。オレのほうをじっと見つめた。余計緊張する。それでも、勇気を出して言わなければならない。深呼吸をする。

「蒼、今日は本当にありがとう。オレすごく楽しかった。」
「私も。」
「それと…オレ、オレ、実は前から…蒼のこと…気になってた。」
「気になってた…?」
「学校に復帰してから蒼と出会って…一緒に公園で遊んだり、生徒会室で仕事したり…体育祭、文化祭もすごくすごく楽しかった。」

「これからも、ずっと友達でいたい。」
「もちろんだよ。」
「けど、オレ…友達じゃなくって…。」
友達じゃイヤだった。あなたの一番になりたかった。そうじゃなきゃ、この気持ちが抑えられなかった。
「オレは蒼のことが好き。友達じゃなくってオレは…。」
「…。」
そして、オレはショッピングモールで買ったあのプレゼントを取り出して双葉の目の前に立った。
「これが、オレの気持ちです。」
双葉はびっくりしていた。オレは頭を下げていたからどんな顔をしているかわからなかった。振られるかもしれない、それでもよかった。自分の気持ちちゃんと伝えられたから。
しばらくしていると、握っていたプレゼントがなくなったような感覚があった。オレは顔を挙げた。双葉がオレのプレゼントを持っていた。そして、オレに向かって言った。

「私も成世くんのこと好きだよ。」

それ以上オレは何もいらないと思えた。オレはとっさに彼女を抱きしめた。双葉も何も言わなかった。キラキラとイルミネーションが輝いている中このクリスマスの日に一組のカップルが誕生したのだった。

その後、家に帰宅したオレは未だ夢の世界にいるような感覚だった。うれしさと驚きと…けれど、オレは後悔しなくってよかったと思った。ウィズはもう寝ていてオレが付き合ったことなんか全く知らないだろう。言うつもりはあるようなないような。どのみち、すぐ気づきそうな気もした。オレも早く寝ようと思った。この幸せな気分が消えないうちに。
「おやすみ。」
ウィズにそう言って部屋の電気を消した。
今日はクリスマス。
そして、オレの記念日。
やっと叶った恋。
サンタクロースからの最高のプレゼントかもしれなかった。

そう、


あの日までは…。

運命は幸せを壊すのも簡単にしてしまうのだった。新しい物語が今動きだそうとしていた―。

第52話 お正月特別編①

「本番いきますよー。」

「さん、にぃ、…」


「あけましておめでとうございます!!」
成世「みなさん、こんにちは!そして、あけましておめでとうございます。今日はお正月ということで、正逆ラスカも特別に会話形式で進めて行きたいと思います。」
蒼「司会は私、双葉蒼と」
成世「オレ、瀬戸成世でお送りします!」
蒼「もうお正月なんだねー。」
成世「そうだね、あっという間だね。」
蒼「成世くんにとっては去年はどんな年だった?」
成世「んーいろいろあったな…。学校にちゃんと行けてる自分がびっくりだったなw」
蒼「そうよね…成世くん、不登校だったもんね。」
成世「アハハ、今は楽しいよ。蒼はどう?」
蒼「私も自分が変われた1年だったかな。」
成世「そうだね、それも…。」
蒼「ん?」
成世「やや、なんでもないよ!」
蒼「じゃぁ、そろそろ。」
成世「そうだね!」

成世「それでは、正逆ラスカお正月特別編始まります!」

蒼「最初の企画は今まで登場したキャラクター達を見ていきましょう!」
成世「とりあえず、オレからかな?北海学園1年の瀬戸成世です。好きなことはもちろん、ゴロゴロすること。あと…(蒼を見る。)」
蒼「え、え…と。」
成世「クリスマスの日に告白しました…。」
蒼「うん…。(赤面)」
成世「い、以上です!」
蒼「え、えと、北海学園1年の双葉蒼です。趣味は料理です。来年も楽しい1年にしたいです。」
成世「次は…」
ウィズ「ん…眠い。」
成世「本番だよ、ウィズ。」
ウィズ「うん。うん?」
成世「えーと、自己紹介!」
ウィズ「ウィズ…。終わり。」
成世「…え、えーと、彼はウィズ。オレのパートナーです!肉まんが大好きです。」
蒼「ウィズくんは眠そうだね。」
成世「いつもだけどな。じゃぁ、次は」
プリス「私だわ、みなさんこんにちは。私の名前はプリス・エルダム。地球のお正月はすごいものね。どう、似合うかしら~(着物姿)」
蒼「プリスステキだよ!」
プリス「ウフフ。」
成世「プリスの次は…。あ、生徒会長ですね。」
一颯「やぁーみんな、あけおめ!北海学園の生徒会長日渡一颯だぜ。今年のお正月もおもち10個食べるぜ~!」
成世「会長そんなに食べるんですか…?」
一颯「あーと、5個ぐらい!」
成世「ですよね…。」
彩里「あけましておめでとうございます。副部長の四津彩里です。みなさん、今年もどうぞ良いお年をお過ごしください。」
蒼「副部長さん、あけましておめでとうございます。」
彩里「にぎやかなお正月だね。」
一颯「これぐらいじゃないと盛り上がらないぜ!」
瞬矢「あけましておめでとうございます。一風瞬矢です。」
成世「一風先輩もいらっしゃいです。」
瞬矢「おー瀬戸、そう言えば告白したんだな。」
成世「あーあ…その話はまたでもいいですか…。」
瞬矢「いいぜ。」
叶美「遅くなりました。あ、みなさん、あけましておめでとうございます。1年生の羽山叶美です。」
蒼「叶美ちゃん!」
叶美「ごめんね、寝坊しちゃった。」
成世「大丈夫だよ。あとは…。」
やよい「あけおめ!!やよいだよー。」
成世「小枝先輩、おめでとうございます。」
やよい「もしかして、うちが最後?」
蒼「そうですね。」
やよい「えへへ、ごめんね。」
スター「あけおめっーここで、問題!今年の干支は何でしょ!」
ムーン「あけましておめでとうございます。今年は酉ですよ、姉さん。」
スター「そう、酉!イッツ、バード~。」
ジャスミン「おめでとうございます。今年の1年もすばらしいものにしてください。私はジャスミンです。」
レンクス「おめでとうございます。」
ラブ「おめでとうございます~ラブです!私も着物着てみたの~」
叶美「ラブかわいいよ。」
ラブ「でも、ちょっと胸がつまる感じ…。」
プリス「それは脂肪の塊でしょ~?」
ラブ「ん?あなたはぺーったんこでしょ?」
プリス「誰がp…」
成世「は、はい!みなさんそろいましたので!次行きます!」
蒼「次は、これまでのお話を振り返りたいと思います!」
成世「今のところ正逆ラスカは51話まで連載してるんだよね?」
彩里「そうね。」
蒼「いろんな出会いがありましたね。」
一颯「俺も会長として一年やってきたけどやー早いね~終わるの。」
彩里「まだ、卒業してませんけどね。」
叶美「私もみなさんに出会えてほんと、よかったです。」
成世「それでは、簡単ですが今までのストーリーをざっと説明していきます!」

成世「第1話ではオレとウィズの出会い。オレが不登校だったころの生活の様子が…わかると思います。」
ウィズ「ほんとな。」
成世「ウィズと出会いいろんなことが巻き起こるわけだけど、一番びっくりしたのはウィズが裸で現れたことかな…。」
ウィズ「そうだっけ?」
成世「うん。」
ウィズ「肉まんのほうが記憶に。」
成世「…やっぱ…そうだよね。は、はい、じゃぁ、次。2話からだいたい8話ぐらいでオレと蒼が出会っていろいろあって。」
蒼「私も最初、プリスと出会ったときはびっくりしたな~。」
プリス「あの時より蒼だいぶ変わってると思うわ。」
蒼「本当に?」
成世「オレも最初のころの蒼と今の蒼変わったと思う!」
蒼「人見知り少しは直ったのかな…。」
成世「なんか、タロットカード探しもしたなー。」
プリス「夏の時期にね。」
成世「あれは暑かった。」
蒼「そうだね…。夏祭りにも一緒に行ったよね。」
成世「あーそうだね。」
蒼「いろいろな思い出が詰まってる。」
成世「それから…会長や、副部長と出会って、」
一颯「俺たち実は兄妹でしたーっていうね。」
成世「アレには驚きました。」
一颯「俺も知ってたけど改めて思うといや~偶然が偶然じゃないみたいだ。」
彩里「あたしも自分の家族に会えるなんて思ってもなかったわ。」
スター「私も登場したよー。」
ムーン「そうですね。僕たちは双子なんです。」
スター「兄もいるけど…今はいないの…。」
彩里「早く見つかるといいね。」
スター「うん…。」
成世「そうだね、探さなきゃね…。」
スター「まぁ、見つかるよ!きっと!」
成世「うん。それから、文化祭があって」
叶美「あの時は本当にごめんなさい。」
蒼「終わったことはもういいよ。叶美ちゃん、悪い子じゃなかった。」
成世「オレも大丈夫だよ。」
叶美「ありがとう。」
ラブ「私も愛しのウィズに会えてうれしかったなー。あーでも、先にプリスがいたなんて知らなかったわ。」
プリス「私もあなたが来るなんて聞いてませんわよー。」
成世「また…始まった…。文化祭が終わって次の体育祭で」
瞬矢「俺だな。」
彩里「お悩み相談箱の効果はすごかったわね。」
叶美「そうですよね…。たくさんのお悩みを解決した気がします。」
蒼「副部長さんは働き者ですよね…尊敬します!」
彩里「そんなことないさ。会長が全然してくれないからね。」
一颯「俺はやる時はやるけどなー。」
成世「アハハ…。」
瞬矢「今思うと彩里が俺の告白OKしたのもこの時期だったな。」
彩里「そうだね。」
瞬矢「照れてんの?」
彩里「そんなことない。」
成世「え、えーと、で、同じくお悩み相談箱のほうでの依頼で」
やよい「うちのとーじょーやね!」
叶美「先輩あの時とは本当に違いますよね…。」
やよい「メガネと三つ編みでしょ?あれはキャラ作りよ、キャラ作り!」
成世「先輩らしさを見つけれてよかったですよね。」
やよい「瀬戸っちと羽山ちゃんのおかげだよー!」
叶美「ありがとうございます。」
成世「それからクリスマスの話もあったね。」
やよい「瀬戸っちおめでと!!(拍手)」
一颯「やー俺もみたかったなー。」
成世「見なくっていいですよ…。」
叶美「蒼ちゃんもおめでと。」
蒼「ありがとうね。」
やよい「と、なると…このメンバーにはカップルが2組もいるんだね!みんなリア充してんだなー。」
瞬矢「わるかったな。」
叶美「けど、なんかカップルていうかずっと一緒にいるからあまり実感が…なさそう?」
成世「あー確かに。」
彩里「あたしも彼氏というか…このメンバーの一人みたいなほうがあるかも。」
瞬矢「やや、そこは彼氏って言うべきでしょ?」
成世「それもそうですね、はい。ストーリーのほうはまた時間がある時にぜひ読んでみてください!それでは次のコーナーに移ります。」
蒼「次は2016年私のベストメモリーはKO☆RE☆DA☆です!」
成世「なんで、KO☆RE☆DA☆なんでしょうね…。」
やよい「いぇーい!!(拍手)」
蒼「2016年いろいろありましたがみなさんが思うベストメモリーをそれぞれ発表していただきます。まずは…小枝先輩。」
やよい「そうだねーうちはみんなに出会えたことかな?」
成世「おおー」
やよい「特に、羽山ちゃんっていうかわいい後輩見つけれたし(抱きつく)」
叶美「せ、先輩(あたふた)」
蒼「よかったですね~。」
成世「じゃぁ、次は羽山さん。」
叶美「私は…みなさんに出会えたのも思い出ですし自分自身が変われたのが一番大きいかな。」
成世「そうだね。」
叶美「あの時の自分が今では信じられない。」
蒼「みんな誰しもそういうのあるから大丈夫だよ。」
叶美「ありがとう。」
成世「次はー一風先輩。」
瞬矢「俺はまた走れるようになったことかな。」
蒼「陸上部ですもんね、先輩。」
瞬矢「今はだいぶコンディションもいいし。走るのが楽しいさ。あとは、彼女と付き合えたことかな。(彩里を抱き寄せる)」
やよい「ヒューヒュー!」
彩里「ちょ、今本番だから…(赤面)」
一颯「あ、コラっ、妹に手を出すと俺が許さない!!」
瞬矢「ごめんごめん。」
成世「相変わらず、ここもここで大変そうですね…。」
蒼「次は…副会長さん。」
彩里「私は自分の家族を見つけれたことかな。」
一颯「俺もだよー。」
成世「そうですよね、2人は実は兄妹ですもんね。周りの人は知ってるのかな。」
彩里「この間、公表したがあまりそう思われないがな。」
蒼「普通に会長と副部長みたいな感じなんですかね…?」
一颯「たぶんなー。」
成世「あとは…蒼かな。」
蒼「私は…んーたくさんあるけど、文化祭や体育祭も楽しかったな。」
成世「確かにな。」
蒼「男装も初めてやったけどやってみると楽しいね。」
やよい「うちも見たかったなー。」
蒼「写真ならありますよ?」
やよい「ほんと!?」
蒼「あとでもいいですか?」
やよい「うん!」
蒼「あとは、このメンバーの一員になれたこと。やっぱりずっと一緒にいるとここが居場所みたいに思えます。」
彩里「そうだな、あたしもそう思う。」
蒼「はい、じゃぁ、最後に成世くん。」
成世「オレは…んー学校復帰できたことかな。」
一颯「脱不登校。」
瞬矢「それがなかったらここにはいないもんな。」
成世「ですね…。今はすごく後悔してます。」
蒼「みんないろいろな思い出があるんだね。」
成世「そうだね、一年はあっという間に終わってしまったけど。」
叶美「また、今年も素敵な思い出作りたいね。」
蒼「じゃぁ、次のコーナーに行きます!」
成世「その前に…CMに入ります~。」

続きはお正月特別編②を見てください!

第52話 お正月特別編②

第52話 お正月特別編②

蒼「次のコーナーは」
成世「2017年の干支酉にちなんで、レッツお絵かきバトル~。」
蒼「みなさんには事前に今年の干支の酉を描いてきてもらってます。」
成世「誰が描いたものか当てていきましょう!」
蒼「はい、ではパネルをー。」

やよい「アッハハ、やばくない?」
成世「若干、よくわかんないのもありますね。」
叶美「個性的…だね。」
蒼「じゃぁ、まず一枚目から。かわいらしい、ひよこですかね?」
彩里「酉といえばニワトリだがニワトリよりはひよこのほうがかわいらしい感はあるな。」
叶美「じゃぁ、これは女の子が描いたものかな?」
やよい「男子でこんなかわいい絵描く人いるんかね?」
成世「じゃぁ、これを描いた人は挙手してください。」
蒼が挙手
やよい「ほら、やっぱ、女の子の絵だね。」
蒼「私、あまり絵心ないです…。」
成世「そんなことないよ。」
蒼「ありがとうね、二枚目に移りますが…。」
一颯「なんか、強そうだな。」
瞬矢「だな。」
成世「一応、ニワトリには見えますね。」
叶美「誰かな~?」
蒼「この絵を描いた人は誰ですか。」
彩里が挙手
一颯「えっ?」
やよい「マジで、副部長?」
成世「なんです。」
彩里「絵心なくってすいませんね!」
瞬矢「強くってかっこいい鳥だと思うぜ!」
一颯「だよな!彩里すっげー上手いぜ!」
彩里「それはどーもー!」
成世「二枚目は副部長の絵でした。それでは三枚目。」
叶美「これは…。」
蒼「すずめとか?」
瞬矢「羽はついてるな。」
成世「これを描いた人は誰ですか。」
一颯挙手
一颯「これ俺の絵!」
やよい「会長もなかなかだね。」
一颯「それどーいう意味?」
蒼「目がかわいらしいですね。」
一颯「だろ?双葉ちゃんさすがわかってるね!」
蒼「え、え…と。」
成世「会長さんもかわいらしい鳥の絵でした!四枚目を見てみましょう。」
彩里「これもニワトリだね。」
瞬矢「バランスがなんか。」
蒼「みなさん、目がかわいらしいですよね。」
成世「では、これを描いた人は手をあげてください。」
叶美が挙手
叶美「わ、私のです…。」
やよい「羽山ちゃんめっちゃ上手!!」
叶美「そうですか…?」
やよい「うん、うん。」
成世「ちゃんと、ニワトリに見えるよ!」
彩里「足のバランスが直れば結構リアルなニワトリに近づきそうだな。」
蒼「それでは、五枚目を。」
瞬矢「頭の奴なんだ?」
叶美「おそらく…たまご?」
一颯「たまごからひよこが出てきたぜーみたいな絵だな。」
蒼「それではこれを描いた人は挙手してください。」
成世が挙手
成世「あれはたまごの殻です!」
一颯「やーなかなかハイセンスだな。」
成世「褒めてますか?」
彩里「ただ、目が少し怖くないか?」
成世「そうですか?」
やよい「なんかギランってしてる。」
成世「な、なんか恥ずかしくなってきたから次行こう!」
蒼「これも、ニワトリだね。」
やよい「正面からのだと足は描かなくっていいの?」
成世「人それぞれでしょう…たぶん。」
蒼「結構上手ですよね。」
一颯「これ描いた人の絵は女の子かな?」
蒼「じゃぁ、描いた人は挙手してください。」
瞬矢が挙手
瞬矢「俺は女じゃねーぞ。」
成世「先輩、絵お上手ですね!」
彩里「なんだ、あたしより上手じゃん。」
瞬矢「え、彩里のほうが上手いって。」
やよい「でたよ~お惚気カップル。」
蒼「先輩は美術も得意なんですね。」
瞬矢「いや、たまたまだよ。」
成世「それでは、七枚目…これは…。」
一颯「ホラーだな。」
成世「妖怪っぽい…。」
叶美「頭のは…髪の毛?」
やよい「違うよーねぐせだよ?」
彩里「鳥にねぐせなんかあるのか?」
蒼「これを描いたのは誰ですか?」
やよい「はいはい!うちだよー!」
瞬矢「これ鳥ではなくね?」
やよい「鳥だよー!自分がうまいからって馬バカにするなよー。」
叶美「先輩、ちゃんと鳥に見えますよ。」
やよい「ほら、やっぱ、鳥に見えるでしょ?」
成世「鳥だと言われたらそうかもしれないです。」
やよい「でしょ?でしょ?」
蒼「これで、みなさん手を挙げたことになりますが…最後のは誰ですかね。」
瞬矢「や、リアルすぎだろ。」
彩里「スケッチみたい。」
叶美「私たちじゃないから…」
蒼「あちらの…。」
ウィズ「ふぁぁ…。」
成世「ウィズこの絵誰が描いたか知ってる~?」
ウィズ「うん?」
成世「これだよ、これ。」
ウィズ「…俺。」
成世「ん?誰?」
ウィズ「俺だって。」
一同「ええええ!?」
蒼「ウィズくん…すごいね。」
叶美「向こうの世界にはニワトリがいるんですかね…。」
成世「や、たぶんいないでしょ。」
彩里「これは…びっくり。」
瞬矢「絵心はアルカナ族のほうがあるってことか?」
一颯「すっげー。」
ウィズ「なに?なんかくれるの?」
成世「え?」
ウィズ「成世あとで、肉まんなー。」
成世「またかよ…。」
蒼「ラストの絵はウィズくんでした!」
成世「さて、最後のコーナーは今年の目標をみなさんから教えていただきたいと思います。」
一颯「そうだなー俺は大学生になるから新しい生活に慣れてエンジョイすることかな?」
瞬矢「俺は、最後のインターハイ出場を目指して部活がんばりたい。」
叶美「私は自分に正直になれる1年にしたいな。」
やよい「うちは勉強がんばるぞー!」
彩里「あたしも受験生になるので勉強がんばりたいしあと生徒会のほうも。」
蒼「私は…みんなと仲良くまた一年過ごしたいです。」
成世「オレも同じく。あとは、学校にちゃんと行く。」
叶美「みなさんステキな目標ですね。」
一颯「卒業したくなーいぜ。」
彩里「留年しますか?」
一颯「それもやだ。」
瞬矢「贅沢な先輩だな。」
やよい「うちも勉強ばっかはいやだなー。」
成世「なんかもう目標というかなんか違う気もしますが…とりあえず、みんなの今年の目標はこのような感じです。」
蒼「ちなみに作者さんの目標はがんばってラストシーンにたどり着くことだそうです。」
成世「そうじゃないと困りますがね…。」
彩里「あたし達の活躍はまだまだ続くからね。」
瞬矢「だな。」
成世「では、これですべてのコーナーが終わりましたので。」
蒼「終わりにしようと思います。みなさん、お正月楽しんでください!」
叶美「このあと、初詣にみなさんで行きませんか?」
やよい「さんせーい!」
一颯「その後はみんなでご飯食べようぜー。」
彩里「そう言えば、おせちは…」
蒼「私が作りました!」
成世「おおー蒼準備がいいね。」
蒼「えへへ。」
瞬矢「じゃぁ、とりあえず神社に行くか。」
やよい「レッツゴー。」
成世「では、みなさん。今年も正逆ラストカードのほうをよろしくお願いします。」
一同「よろしくお願いします!」
蒼「お正月のあとは普通に本編に戻ります。ここから先の話もたくさん注目すべきところがあるそうです。」
成世「オレの過去についてもだんだんわかってくるそうで…一体何があるんでしょうね。」
蒼「それはお楽しみです。」
成世「これに正逆ラスカてお正月特別編は終わりです。良いお年をお過ごしください!」

このあと、メンバーは初詣に行きわいわいがやがやと楽しいお正月を過ごした。
新しい1年が今ここに始まるのであった。
運命の歯車がまた1から動きだした―。

第53話 三学期

「みなさん、楽しいお正月は過ごせましたか?今日からは三学期ですよ。正月ボケしないようにしてください。」

もう三学期か…早いこった…。
冬休みが終わり今日から三学期になった。みんな相変わらず元気でたった二週間程度の休みじゃぁちっとも変わっていなかった。もちろん、オレも大して変わってない。変わっていうなら…そうだな、あれぐらいかな。

「成世くん。」
「何?蒼。」
「んん、呼んだだけ。」
そう、オレの隣にいる女の子との関係。彼女は双葉蒼。オレのクラスメート兼ついこの間オレの彼女に!クリスマスの夜オレは彼女に思いをなんとか伝え幸いにもオレの気持ちが届き見事ゴールイン!!晴れてオレもリア充の仲間入りを果たしたのだ。
「成世ー鼻の下が伸びてるぞー。」
「痛ぇよ、オマエら!」
「成世がリア充とか俺辛いんだわ…。」
「ひでぇ…。」
「まぁ、お幸せになー。」
「どーも。」
こーやって友人にからかわれるのも目に見えていた。嫌なわけではなかったが。
三学期はもうほとんど行事もなく勉強とテストをがんばって二年に備えるというわけ…
「みなさん、1月の間に文理選択について考えておいてくださいよ。」
「そんな物が…あったのか!?」
「成世くんはやっぱ理系?」
「蒼…は文系だよね…?」
「一応はね。」
ここにきて、瀬戸成世ピンチ。大好きな彼女と二年から離れる可能性大。自分の進路を決めるのに文理選択は大切かもしれないがオレにとっては彼女とクラスが別になるほうが数倍よくないことだった。だから、オレは迷わず文系に行くつもり。文系の数学ぐらいならトップを狙えるくない?と安易なことも考えていたがそれはいかに。。
今日は始業式と連絡事項の伝達のみということでもう帰ることができる時間になった。オレと双葉は新年早々生徒会からお呼ばれしていた。副会長のことだろう、どうせまた仕事の手伝いとかかなとオレは思っていた。
「こんにちはー。」
「おー成世と双葉ちゃん!」
「こんにちは、会長さん。」
「適当に座ってくれ。」
副会長に言われオレと双葉はその辺にあったいすに座った。すると、ドアがまた開き
「お邪魔します。」
「やほー。」
羽山と小枝先輩がやってきた。どうやら、みんな呼ばれたようだった。もう一人来るはずなのだが…
「すまん、先に陸上部のほう行ってくる。」
一風先輩がドアから顔だけだしそう言って走り去った。彼は陸上部のエースだからいろいろ大変そうな感じではあった。
「さて、今日集まってもらったのは。」
副会長が黒板に何か書き始めた。黒板には
『生徒会役員選挙について』
と、書かれていた。
「みんなもわかると思うが会長は三年だから卒業したらいなくなる。それで、会長が新しく就任されるわけだが」
「何か問題でもあるんですか?」
「大あり。」
副会長はオレの質問に少し呆れた顔をした。オレは何かマズイことを言ってしまったのかと思う。
「今、ここにいるメンバーはみんなタロットカード保持者であるわけ。すると、次就任する会長がタロットカード保持者でなければどうだ?関係ない人を巻き込んだって話について行けないだけだろ?」
「あー…そうですね。」
「会長さんも副会長さんもタロットカード保持者ですからこうやって集まることも出来るんですよね…。」
「そういうわけ。だから、次就任する会長は重大。」
「なるほどねー。」
「それで、それを見越して本来出るつもりはなかったがあたしは会長選挙に出ようと思う。」
「本当ですか!?」
「仕方ない。話がスムーズに進むにはこうするしかないだろう。」
「でも、副会長さん人気ですし大丈夫ですよ!」
「オレも副会長が会長だと安心できます。」
「それ、俺には安心感がないってこと?」
「会長さん、違いますよ。そういうことでは。」
「成世だけはいい後輩だと思ってたのに。」
「えぇ、ごめんなさい。」
「それで、副会長にもできたらこのメンバーから就任してほしいわけだが…強制するわけではない。」
「オレは…そんなことできるほどないしな。」
「私も…人見知りだし。」
「まぁ、難しいなら一風に頼むつもりだがあいつも陸上部のほうで手がいっぱいだから…な。」
「でも、副会長の選挙は4月以降なんですよね?」
「あぁ、会長が決まってからだからな。」
「じゃぁ、少し時間くれませんか?私も突然言われるとどうしたらいいのか…。」
「すまんな、考えてくれたらうれしい。」
「わかりました。」
「とりあえず、今日はこの話がしたかっただけだからあとは自由に。」
「蒼、帰る?」
「うん。」
「お先に失礼します。」
「成世、双葉ちゃんばいばーい。」
「失礼します。」

「羽山ちゃんは帰る?」
「私はちょっと教室に忘れ物したので。」
「わかったー。うちも帰ります、バーイ。」
「先輩、お疲れ様でした。」
「私も失礼します。」

こうして、生徒会室には会長と副会長の二人だけになった。
「彩里、ごめんな。」
「何が?」
「いや…その」
「別に、副会長が会長になったって仕事は今と変わらないし。」
「だけど。」
「大丈夫、お兄ちゃん。あたしを信じてくれないの?」
「…そうだな。」
「だから、あたしの仕事が少しでも楽になるように今働いてください。」
「えぇ、そういうのアリ?」
「問答無用。」
「しゃーねな。」
生徒会室では微笑ましい兄妹の会話で賑やかな様子だった。四津も本当は会長がいなくなるのは寂しいと思っているに違いなかった。それに、自分が会長になることも不安に感じでいる気がした。それが兄日渡には知らないうちに伝わっていたのかもしれない。

「生徒会選挙か…。」
「そう言えば、会長さんが卒業してしまうこと忘れていました…。」
「会長いなくなるのはやっぱ寂しいな。」
「うん…。」
「てかさ、思ったんだけど。」
「ん?」
「会長と副会長はいるけど他の人は?」
「書記とか会計さん?…確かいるにはいるけどたぶん、私たちがいる時は来てないだけかも?」
「あーなるほどな。オレ達の話ってだいたいタロットカードのことばっかだしな。」
「うん。」
「まだ、見つかってないカードもあるわけだしな。」
「だね…。」

『アレは…。』

「スターのお兄さんもまだ見つかってないし…。」

『スター…』

「成世くん、また明日ね。」
「ん、また明日。」

『成世…。』
『後を着いて行くべきか…。』

「さて、帰ったらねよー。」

「ただいまー。」
オレは家に入り早々自分の部屋に向かった。部屋にはベッドの上で枕を抱き抱えたオレのパートナーのウィズが座っていた。
「何してんの?」
「何も。」
「オレが今からそこで寝るから。」
「どけろと?」
「そうだ。」
「イヤだ。」
「イヤだって子供かよ。」
「成世に言われるとムカつくな。」
「はぁ!?何それ、いいからどけろ!」
「成世、それ以上すると痛い目に遭うのはおまえだ。」
「…もういいよ。肉まんあげなーい。」
「…。」
すると、ウィズは黙ってオレのベッドから退散した。ふてくされてんのか怒ってんのかわからないけど『肉まん』という単語は絶大な力を持っていた。たかが肉まん、されど肉まん、それでも彼にとって肉まんは大好物の代物だから仕方なかった。

『ウィズ…。』

「!?」
「どうしたの?」
「いや、何でもない。」
ウィズは誰かの気配を感じたのか窓の外を見つめる。しかし、そこには誰もいなかった。

『あいつは…気づいてるかもな。』
ウィズが感じ取った気配の人物は何かを確認したのかまたどこかへ走り去った。

『もうすぐ…で。』
彼は誰かを探しているようだった。



そう、この人物こそが…―だった。

第54話 助けに来た?

「こっちこっちー。」
「はい!」
「ナイス!!」
ここ、北海学園の体育館では女子バスケ部の活気溢れる声でいっぱいだった。北海学園では勉強はもちろんだが部活にも力を入れている。女子バスケ部は毎年全国大会に出場するほどの実力を持っていた。そして、その女子バスケ部のキャプテンである彼女…
「彩里、今日もナイスパス回し!」
「もちろんよ、周りを見て判断しなきゃ敵にボール取られてしまう。」
「四津先輩、先程はアシスタントありがとうございます。」
「んん、あなたもナイスシュートだったわ。」
「ありがとうございます!」
四津彩里、彼女がこの女子バスケ部のキャプテンだった。四津は北海学園の副会長でもあり毎日忙しい中、部活も気を抜かず取り組んでるわけ。まさに文武両道と言える人物。
「今日の練習はここまで。今日は2年生が掃除の日だから。」
「はい!お疲れ様でした!」

「彩里、今日も大変だな~。」
ギャラリーから四津の様子を見ていたパートナーのスターは彼女のことを少しばかり心配していた。ハードスケジュールを毎日こなしている四津は一体いつ休んでいるんだろうと思っていた。もう少しゆっくりすればいいのにと思っていても四津は自分に人一倍厳しい性格でもあったからなかなかそうはいかない。
「私もお兄さん探すのがんばらなきゃなー。」
スターはギャラリーから立ち去りどこかへ行ってしまった。

「今日のやることは終わった。」
外はすっかり暗くなりほとんど人がいない道を四津は一人歩いていた。バスケ部の掃除も終わりやっと帰宅できる。
「にしても、今日も寒いな。」
一月の夜の外は冷え込んでいて防寒着やマフラーなどが必需品だった。

『…あれが。』
四津の後ろを離れたところから着いてきていた人物がいた。気づかれないように少しずつ距離を縮めていく。四津が途中で曲がり角に入ったとき、その人物は彼女にだいぶ急接近した。四津はたぶん気づいていない。
それから四津は自宅のマンションに入っていった。さすがに、マンションまでは入れず仕方なく上から彼女の様子を伺うことにした。

「さて、ご飯作る…か。」
四津は母と二人暮しで母親は毎日遅く帰宅するためだいたい一人だった。そんな生活ももう何年も過ごしているから今更何か思うこともなかったがたまに寂しい時もあるに違いない。
『何してんだ…。』

「スター、いるなら出てきなさいよー。」
「彩里~呼んだ呼んだ?」

『…スター!?』

「今日は手抜きでごめんね。」
「ぜーんぜんいいよー。彩里のご飯私好きだから!」
「ありがとう。」
四津はパートナーのスターと最近は一緒にご飯を食べたりしていて決して一人というわけではなかった。スターはどんな物でもおいしいと言って食べてくれるので四津もうれしそうだった。
そして、外では四津の後を追いかけていた人物がこの様子を見て動揺していた。
『あとは…時間の問題か。』
彼は人の姿であったが眩しい光と共に消えてしまった…いや、消えたのではなく

カードに変わっていた。

「失礼しますー。」
「こんにちはー。」
次の日の放課後、生徒会室にはいつものようにおなじみのメンバーが集まっていた。しかし、副会長四津の姿はなかった。
「あれ?今日、副会長さんは?」
「バスケ部のほうに行くってさ。」
「副会長さんだいたいいつもいるのに珍しいですね。」
「彩里は忙しいやつだからなー。」
「会長さん、今日の仕事は…。」
「あー今日はコレをやっておいてだって。」
会長の日渡は机の上にある書類を持ってきてオレの目の前に置いた。そして、ホッチキスも持ってきた。ようはコレを綴じていけということだろう。
「最近、なんか変わったことあったか?」
「いやー特には。」
「私も…です。」
「あ、でも、最近やたらウィズが誰かを気にしてんのか…。」
「ウィズくんが?」
「うん、よく、窓の外を見るんだ。」
「もしかして…幽霊?」
「あいつに幽霊なんか見えるのか?」
「わかんねーぞ、人間じゃないんだから。」
「あ、そっか…。」
「でも、ある意味彼らも幽霊に近い存在ですよね。他の人には見えないし。」
「そうだね。」

「すまん、遅くなった。」
「あ、副会長さん!」
「こんにちはー。」
部活のほうに行っていた四津が練習着のまんま生徒会室にやってきた。着替えぐらい先に済ませばいいのだが彼女はそれどころじゃないのだろう。
「書類のほうは?」
「オレ達がやってます。」
「ありがとう。ちょっと着替えさせてくれ。」
さすがに四津も着替えはしようと思ったのか制服を持って教室の外へ出ていった。
「副会長さん大変ですね。少し休めば…。」
「俺も何回もそう言ってんだがな…。」
「難しいんですか?」
「なんだよなー。いい方法ないかな。」

「ただいま。」
「副会長さん早くないですか?」
「そうか?」
四津が着替えに出て5分もかかならないうちに帰ってきた。まさに早着替えの達人だった。四津は席に座ることもなく書類のコピーをしたりいろいろバタバタしていた。
「瀬戸と双葉はそれが終わったら帰ってもいいからな。」
「なんか…すみません。」
「もともと生徒会の仕事を任せているあたしも悪いから謝ることはない。」
「副会長さん無理はしないでくださいね。」
「わかってる。」
オレも双葉も副会長のことを心配していた。しかし、四津は休む暇もなく生徒会の仕事と部活と勉強に追われていたのだろう。
「お先に失礼します。」
「失礼します。」
オレと双葉は仕事を終え先に帰ることになった。その時も副会長は忙しいそうに仕事をしていた。
「彩里、いい加減休まないと…体がもたんぞ。」
「わかってる…。」
「わかってるなら、少しは減らしたらどうだ?」
「…。」
「俺はおまえが心配なんだ。」
「…。」
四津は黙ったままひたすら手だけ動かしていた。会長の日渡は彼女をじっと見つめていた。彼は兄妹でもあった。複雑な事情で別々に暮らしていて去年まで自分たちが兄妹であるということはわかっていなかった。
日渡は一生懸命がんばっている妹四津を思って心配していたが彼女はそれに気づいているにしても行動には移っていなかった。

「彩里、俺飲み物買ってくるわ。」
「うん。」
日渡は財布を持って出ていった。一人生徒会室に残された四津はふぅ…とため息をついた。彼女は他人に自分の弱い所を見せたくなかった。だから、兄日渡に言われてもなかなか行動には移せなかった。
「確かに…疲れているかもな。」
四津は机の書類を取りに立ち上がった。立ち上がった瞬間目の前の景色がボヤけた。そして、真っ暗になった。

「…。」
「大丈夫か。」
「え…。」
「おまえ、倒れてたんだぞ。生徒会室で。」
「ここは…おまえの家。」
「あたしの…家?」
「うん。」
「あたしの家!?」
四津は我に返ったのか布団を持ち上げびっくりしていた。先程まで生徒会室で仕事をしていた。それから…目の前が暗くなって。自分が倒れたということがなんとなくわかった。そして、今家にいる。でも、どうして?
それからよく見るとあたしの目の前にいる人は…誰?
「あなたは…一体。」
「俺か?」
名前を尋ねられた人物は立ち上がって四津に向かって言った。




「俺の名はサン。サン・リエンド。」

第55話 複雑な関係の始まり

「サン・リエンド。」
彼ははっきりそう言った。
四津はどういう反応をすればいいのか困った。頭の中で整理ができない。無理もない、今さっき目覚めたばかりで自分が自宅にいて目の前にいる人は知らない人で。その人物は「サン・リエンド」と言って…あれ?おかしい。何かを四津は感じ取った。

「もしかして…あなた。」

「サン兄さん!!」

四津より先に反応した人物がいた。彼女はサンに飛びついた。そして、泣きじゃくった。
「お兄ちゃん、どこに行ってたの今まで…ぇ。」
「ごめんな。」
「うぅ、許さないぃー。」
スターはしがみついたまましばらく泣いた。その様子を四津は見ていた。そして、やっと理解した。この人物こそが今までずっと探してきたスターの兄であることを。
「スター俺の服が…。」
「えぇ?あ、ごめんなさい。」
スターがサンにしがみついたまま泣いていたためサンの服が濡れていた。しかし、彼は全然平気そうな顔だった。彼は手で濡れた箇所を拭いた。すると、あっという間に濡れた箇所が乾いた。
「あの…サン。ここにあたしを運んだのは…。」
「あぁ、俺だ。」
「どうやってだ…。」
「それは、アレだ。瞬間移動。」
「サンもアルカナ族なのか?」
「そうさ。」
サンはスターに何か耳打ちをして四津の方を見た。
「これから少し話をしようか。」
サンはそう言って座った。

「俺はアルカナ族であり、大アルカナでもある。タロット番号19…俺は幸福や満足を人にもたらすことができる。」
「うん。」
「そして、俺はスターの兄である。」
「私の大切なお兄ちゃんだよー。」
スターは相変わらずサンに抱きついたままだった。
「サンは誰のパートナーなんだ?」
「誰なんだ?」
「え?」
サンは肝心なことを忘れていたのか自分が誰のパートナーであるかを考えていなかった。はたまた決まってなかったのか。
「彩里でいいんじゃない~?」
「あたしか?でも、既にスターの保持者であるのに。」
「タロットカードは最大一人で二枚まで持てることになっている。だから、大丈夫だろう。」
「うんうん。」
「そ、そうか…。」
「彩里~いいよね?」
「まぁ、構わないが。それに…助けてもらったしな。」
四津はサンのほうを見た。サンは頷き改めて言った。
「俺の保持者は四津彩里であることにする。」
シーンとなった。誰もしゃべらない。
すると、ぐぅ~と誰かのお腹の音がした。
四津はスターを見たがスターは私違うよと首を振った。四津はサンの方を見た。サンは表情何一つ変えなかったがポッりと言った。
「そう言えば、何も食べてなかった。」
四津はベッドから降りてキッチンのほうへ向かった。そして、冷蔵庫から食材を取り出し何かを作り始めた。スターはサンに
「彩里の料理は美味しいよ。」
と、笑顔で言う。
しばらく待っていると四津がテーブルにできた料理を載せた皿を置いた。カルボナーラとサラダだった。四津はサンに座るように促した。スターはいつの間にか食べ始めている。
「おいひぃー。お兄ちゃんも食べてみて、おいひぃから。」
「スター、…。」
サンはフォークを持って皿から麺をすくった。そして、口に運ぶ。初めて食べる味にどんな感想を言うのか四津はドキドキしていた。無言でサンは食べ続ける。
「どう?」
四津は何も言わないサンに自分から聞いてみた。
「上手い。」
「よかった。」
サンはその後も残さず料理を食べた。
その後、スターと何か話していた。四津は後片付けをしていてその話は何も聞いてなかった。
「そう言えば…。」
四津が片付けを終えて部屋に戻ったとき、サンに尋ねたいことがあった。
「サン、あなたは…どうして行方をくらましてたの?」
「…。」
四津の質問にサンは顔を曇らせた。スターは異世界にいるときから兄の行方を探していた。しかし、見つからないまま地球にやってきた。それからも兄を探していたが見つかることはなかった。どこへ一体消えてたのか気になるはずである。
「その話はまたおいおいする。」
今はそれしかサンは言えなかった。何か隠していると四津は少なくともそう思った。
スターは少し悲しそうな顔をしていた。それにも理由があった。けれど、二人とも話すことはなかった。

次の日。四津は緊急に生徒会室に集まるようにとメンバーに報告した。そして、その放課後いつものようにメンバーが集まった。
「報告がある。」
四津が昨日のことについて話をした。
まず、自分が倒れたこと。それと、ずっと探していたスターの兄が見つかったこと。
「見つかったんですか!?」
「よかったですね!」
「見つかったというか助けてもらったんだ。」
「ごめん…オレがいない間にそんなことになってたなんて。」
「会長は何も悪くないと思いますよ。」
「けど、俺は彩里のお兄さんなんだ…。」
「あたしは大丈夫だよ。」
「それで、そのお兄さんは今は?」
「たぶん、家にいるだろう。呼べばくると思うが。」
四津はタロットカードを取り出しカードに向って言った。
「サン、少し来てくれ。」
その声に反応するかのようにカードからは赤色の光が溢れた。そして、白い光で周りが見えなくなった。
「お呼びか?」
サンはみんなが集まっていた机の上にいつの間にか姿を現していた。
「この人が…。」
「スターちゃんのお兄さん?」
サンは机から降りて言った。

「サン・リエンド。よろしく。」

「副会長さん、この子は。」
「ん、アルカナ族だ。そして、あたしのパートナーだ。」
「え!?副会長さんの!?」
「そうだ。」
「ということは、彩里は二枚持っているってことか。」
「うん。」
「でも、これでまた残りのカードも減ったね。」
「プリスに報告しとかなきゃ。」
双葉がそう言ったとき、サンの表情が変わった。
「どうかした?」
「プリス…。」
「プリス?プリスは私のパートナーなんだよ。呼んだ方がいい?」
双葉がサンに尋ねた。
「いや、いい。」
サンはそのまま消えてしまった。
双葉は不思議でならなかった。
「何かあったのかな?」
「かな…。」
「前から思ってたけど…アルカナ族同士の関係がイマイチわかんないよね、ハッキリしていないのかな?」
「異世界で何かあったとか?」
「まぁ、それも考えられることではあるな。」
「今度本人に聞いてみようかな…。」
「また、彼らも一緒に集まって話でもするほうがいいかもな。今日はもう仕事はしなくっていいから帰っても大丈夫だ。」
「副会長さん、でも、」
「あぁ、あたしも帰るから。」


「彩里、一緒に帰ろ。」
「彩里、一緒に帰るよな?」

「あっ。」

一風先輩と会長が睨み合った。
俺が一緒に帰るんだと訴えているようだ。
オレや双葉、羽山は邪魔にならないようにそっと教室の外へ。

「俺が一緒に帰るんだ。」
「いやいや、今日は俺だ。」
「俺だ!」
「いや、俺だ!」
二人の争いを見てた四津はだんだん笑顔が消え失せしまいには…

「あたしと帰りたいならさっさとここ片付けろー!!」

と、怒鳴ってしまったのだった。

二人ともびっくりしてすみませんと謝り即座に片付けを始めた。四津もそれを見てヤレヤレと思った。しかし、自分がどれだけ大切にされているのかわかって心做しかうれしい気持ちもあった。

「あたしは先に出とくから、鍵閉めといてー。」
「え、ちょっと。」
「一風、おまえ!」
四津の後を追うように男二人も急いで教室から出ていった。


「やっぱ、あいつだったか。」

「そろそろ、本気で残りも探さなきゃなー。」

「ふふふ~ん♪」

「ウィズ…俺はおまえを…。」

例え、保持者同士は仲がよくても決してパートナーみんながそうではなかった。
彼ら、アルカナ族には複雑な関係があった。
しかし、彼らの中には一部大切な記憶を失っているものもいた。

だが、物語はそれでも進む。彼らの過去がもうそろそろ明らかになっていくだろう―。

第56話 消えた記憶

どうして分かり合えなかったのだろうか。
どうして争いは起きたのだろうか。

純粋に愛していた君さえ…

もう俺のことをただの


反逆者としか思ってない。

でも、反逆者な俺を一人の姫が助けてくれた。そんなことをしたら君が罪を被ってしまう。

いつか、きっと


運命が変わるから


そう言った。


三学期が始まり数週間が経過した。毎朝寒さに耐えながら学校に行くのも苦痛だった。けれど、オレには楽しみがあった。
「おはよー。」
「あ、成世くん。」
「今日も寒いね。」
「そうだね。」
「あ、あのさ…。」
「何?」
「て、手繋いでもいいかな…。」
「いいよ。」
オレはそっと彼女の左手を握った。彼女の顔は少し紅くなっていた。手を繋いでオレ達は学校に向かった。
「蒼、…今度一緒に遊びに行かない?」
「いいよ。どこ行く?」
「そうだなー。映画でも見に行く?」
「私、アレが見たい!君と恋して。」
「オレもそれ見たかった。じゃぁ、今度のデートは映画に決まり。」
晴れて恋人同士になったオレと双葉は今度のデートの約束をした。双葉とは既に何回か遊んでいるが恋人として遊びに行くのはもしかしたら初めてかもしれない。オレは楽しみだった。
オレと双葉は同じ教室に入った。そして、隣同士の席に座った。
「おはよー。」
「やぁやぁ、瀬戸先輩今日もラブラブっすね。」
「羨ましいです。」
「おまえは彼女いるだろ…。」
「最近、彼女が冷たいんだって!」
「…ドンマイ。」
朝から友人にこんなことを言われるのももう慣れてしまった。決して悪いヤツらではなかったし本気で言ってるわけでもなかったからオレも適当にしか返事してない。
けれど、こんな会話がオレにとってはなんかおかしくって楽しかった。前まで不登校だったけれど今は学校にいるほうが楽しかった。

「ウィズ。」
「…。」
「まだ、彼のことを恨んでいるの。」
「別に。」
学校の屋上ではウィズとプリスがいた。彼らはオレ達のパートナーであり異世界からやってきた不思議なヤツらだった。
「私が余計なことしなければ…。」
「姫様のせいではない。」
「…うん。」
「別に気にしてないというか…オレにはその辺の記憶がない。」
「記憶がない…。」
「何か大切なことも忘れている気がする。」
「私もだわ…。」
ウィズとプリスはお互い顔を見て話はしなかった。冬の冷たい風が彼らに染み渡る。
「俺は家に帰るから。」
ウィズが立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってくれないか。」
立ち去ろうとしたウィズに誰が声をかけた。
振り向くと赤色の髪をした少年がそこにいた。
「…サン。」
ウィズはその少年の名前を言った。
「聞きたいことがあるんだが。」
「別に何も無いだろ。」
「あるから、おまえに尋ねているんだろ?」
「なんだ。」
「おまえは…何のために反逆行為をした。」
「それは前にも言ったはずだ。」
「それがおまえの本心だとは思わない。なぜだ。」
「…。」
「質問を変えようか。おまえは瀬戸成世のことどーいう関係なんだ。」
「あいつは…俺の保持者。それ以外何もない。」
ウィズはあくまで本当のことを言わないつもりでいた。そもそも記憶の一部がないため本当のことも忘れていたため答えられないのが現状だった。
「まぁ、いい。」
「じゃぁな。」
ウィズは質問に答え終わると屋上から消え去ってしまった。残されたプリスは複雑な心境だった。
「…絶対何かあるはずだ。」
サンはプリスのほうをチラッと見てお辞儀をしその場を離れた。

「…王子…早く来てください。」
普段強気なプリスが珍しいことにその反対の様に見えてしまった。


「ふぁ~ねむ。」
オレは休憩時間に廊下に出ていた。別に何か用があるわけでもなかった。気晴らし程度に出てみただけだった。すると、前方からオレの知っている人が来ていた。
「プリス?」
「…なんだ、おまえか。」
「珍しいね、学校にいるの。」
「ちょっと用があってね。」
「そうなんだ。」
何も知らないオレをプリスは哀れみの目というか悲しそうな目というか普段のプリスとは何となく違うことはオレにも伝わっていた。
「なんかあった?」
「ヘタレくんに話すことでもないわ。」
プリスはそう言ってオレの横を通り抜けた。
プリス自身も話さなければならないことはあった。でも、まだ真実が確定していない。
本当のことが話せるのにはまだ時間がかかりそうだった。
「ごめんなさい。」
プリスにはそれしかいうことができなかった。

「ただいまー。」
オレは自宅に帰宅しいつもと同じように自分の部屋へ。大体、部屋にはウィズがいるはずだ。しかし、今日は違った。
「ウィズ…。」
そこにいたのはウィズではなかった。赤色の髪をした少年サンだった。なぜ彼がオレの部屋にいるのかわからなかった。
「…瀬戸成世。」
「どうして、ここに。」
「話したいことがあるからだ。」
「オレの家なんで知ってんだ?」
「おまえを尾行していた。」
「いつ?」
「ココ最近。」
「もしかして…。」
オレには思い当たる節があった。ウィズが窓の外を気にするようになったこと。きっと誰かいるのだろうかとオレは思っていたがそれはサンだったのだろうか。それが一番妥当な考えだった。
「おまえは…ウィズのことをいつから知っている。」
「いつからって…ウィズがオレの目の前に現れたとき。」
アレは確かオレがウィズのカードを拾ったとき。そのとき、初めてウィズと会った。それまでにウィズと会ったことなんてたぶんない。いや、絶対ないはずだ。
「…なるほどな。」
サンは何が確かめたかったのだろうか。オレとウィズについて何かあるのか?
「やはり、これについてはまだわからないままか。瀬戸成世、邪魔したな。」
サンは用が終わったためオレの部屋から姿を消した。一体、何が目的だったのか。それに、ウィズはどこへ行ってしまったのか。
ますます、オレにはわからない複雑な問題がきっとあるに違いなかった。

「あいつらより…早く探さなければ。」
サンは焦っていた。早くしなければ…大切な記憶さえ消えてなければ。
あいつらが見つける前に。

それぞれの思いが交錯する中、運命の歯車の軌道が少しずつ変わっているように感じた―。

第57話 一緒にいることの幸せ

「ごめん、待ったー?」
「大丈夫だよ。」
今日は土曜日。オレは双葉と映画を見に行く約束をしていた。しかし、またドジなオレは待ち合わせ時間に遅刻。目覚ましかけてたはず、なのに遅刻。本当にオレは彼氏になってもダメなやつだと思った。双葉は薄い紫のワンピースに白色のコート、髪にはかわいらしいヘアピンをつけていて学校で見る双葉より断然大人っぽく見えた。オレはその姿を見てドキドキしていた。こんなかわいい子がオレの彼女なんだって思うと…。
「じゃぁ、行こ。」
双葉がオレの手を握って映画館に向って走り出した。いつもはもっと謙虚でおとなしいのに今日はなぜか違う。

「蒼はどこの席がいい?」
「真ん中の…後ろ?」
「えーと、Hの15 16でお願いします。」
「かしこまりした。」
「飲み物とか買う?」
「うーん、私はいいかな?成世くんは?」
「じゃぁ、ポップコーン買おうかな。一緒に食べよ。」
「うん!」
オレと双葉は席のチケットとポップコーンを買ってシアターに入った。既に多くの人が席に着いていた。
「楽しみだね。」
「だね。」
映画が始まるまでオレは何を話そうか考えていた。考えていただけで時間が経ってしまいましい気づいたら映画のCMが始まっていた。双葉は画面の方に夢中だった。
しばらくして映画が始まった。今日見る映画は恋愛の話。女の子はやっぱこういうのが好きなのかなと思った。オレはどちらかというとアクション系を見ていたから初めてだった。話が進んでいくにつれこれからこのカップルどうなるのか…とかライバルが出現して、と、結構見応えがあったように思えた。

「やっぱ、俺…おまえを離したくない。そばにいてくれ。」
「…バカ、なんで今更そういうこと言うのよ。」

あ、…キスした。

そういえば、オレまだしたことなかったな。
一風先輩と副会長がキスしているところを一度目撃したこともあったな。
やっぱ、恋人同士だからキスぐらい普通だよね。双葉はキスしたいとか思っているのかな。いつか…オレもできたらな…。
なんて、考えていたら映画が終わってしまっていた。
途中から全く話が頭に入ってこなかった…。
双葉はとても満足気な感じだった。ここのシーンよかったよねとか話してくれたんだが途中から見てないからそ、そうだねとしか言えなかった。申し訳ない気持ちになる…。
「成世くん、次どうする?」
「えぇーと、蒼は行きたいところある?」
「んーじゃぁ、カフェ行こ。」
双葉に連れられ映画館の近くにあるオシャレな外装のカフェに行った。店内に入るとコーヒーのいい匂いが漂っていた。店員さんに案内され席に座る。
「ここのね、オムライスおいしいの。」
「へぇー蒼ってカフェとかよく行くの?」
「うん、落ち着くからね。」
「お客様ご注文のほうはお決まりでしょうか。」
「えーと、じゃぁ、オムライスセットで。」
「私も同じく。」
「オムライスセットが2つですね、かしこまりました。少々お待ちください。」
「ご飯食べてからどこ行く?」
「成世くんは?」
「じゃぁ、…。」
じゃぁ、どうする?
あの、映画を見てからオレの頭には…
双葉の口元が…

ああー…自分が変態な人になっていく。

「おまたせ、しました。オムライスセットです。」
「は、ひゃい。」
オレは我に返るなり変な声が出てしまった。
双葉はそんなオレを見てクスッと笑った。
「成世くん、普通にしたらいいのに。」
「そ、そんなことないけどな~アハハ。」
やっぱ、オレはヘタレだ。一風先輩みたいに自分からリードなんてできなかった。

「さっきの、オムライスおいしかったね。」
「でしょ。私のオススメなんだー。」
「あ、あのさ。」
「ん?」
「蒼はその、その。」
オレはドキドキしている自分の心臓の高まりが抑えられなかった。言葉にしようとしてもどう伝えたらいいのか。単刀直入にキスしよなんて言っていいのか。遠まわしに言うべきか。
ドン
「ご、ごめんなさい。」
ぼーっとしてたから誰かにぶつかってしまった。オレはすぐに謝った。
「大丈夫ですよ。」
セーラー服を着た少女はにっこり笑ってオレを許してくれた。その少女はキレイな黄緑色の髪をしていた。とてもいい匂いがした。
そして、オレにお辞儀してどこかへ行ってしまった。すごく不思議な感じの少女だった。
「成世くん、今日は何かあった?」
双葉がオレのことを心配そうな目で見ていた。
「え、と…。」
正直、今日のオレは全然男らしくないしぼーっとしてるしこんなんではせっかくのデートも台無しになってしまう。オレはこのままじゃぁと思い双葉の手を取りどこへ行くか決まってないのにどんどん前に進んで行った。
「な、成世くん?」
ごめん。こんなオレで。

オレは気がつけば広いところに出ていった。
「キレイな、湖だね。」
「あ、鳥。」
湖には数匹の鳥が泳いでいた。
オレはベンチに座った。双葉もオレの横に座った。ただひたすら湖を眺めた。
静かな時間が流れた。冷たい風が吹いて双葉がくしゅんとクシャミをした。
オレは自分が着ていた上着をかけてあげた。
「成世くん、寒くない?」
「うん、オレは大丈夫。」
「ありがとう。」
「蒼、今日はごめんね。」
「え。」
「オレ…全然リードできてないし。蒼に任せっきりで。」
「気にしなくっていいよ。」
「オレ、蒼と一緒にいるとすごくドキドキして…。」
「私もだよ。」
「そうなの?」
「ん。今もドキドキしてるよ。」
双葉は照れ笑いしていた。双葉も同じだった。オレは少しホッとした。
「蒼、好きだよ。」
「私もだよ。」
オレと双葉はお互いに笑った。そして、オレは双葉のほうを見た。キレイなオレンジ色の目が少しウルッとしていた。
オレはもう何も考えなかった。
このまま時が止まってほしかった。

柔らかい感触があった。


アレ?もしかして、オレ…



今、キスした?



「今日はありがとう。」
「んん、私こそありがとうね。」
「じゃぁ、また月曜日に。」
「うん。バイバイ。」
オレと双葉はそれぞれの家に向って帰った。
オレは双葉とキスしたんだよね。たぶん。
その後何もそれについて触れなかった。ただ、自分がちょっと背伸びした気分だった。
彼女と一緒にいる時間がオレにとっては幸せだった。

時が止まってほしい。

それがオレの願いだった。

でも、オレの願いは叶わない方向に運命は進んでいく。なぜなら…。
それがオレとウィズとの関係と…サンが探しているものと大きな関係があったのだった。

そんなこと今のオレは知らなかった。
だから、今幸せでいられるんだろうな。

運命がまた一つ動きだした―。

第58話 過去の話

「ウィズー。」
アレ…今日もいないのかな。
学校から帰宅したオレは自室にいるわけだがウィズの姿が今日も見当たらなかった。
最近、やつの姿がない。いつも、オレのベッドの上で寝ているわけだが…。一体どこへ行ってるのか。カードに呼びかけても何の反応もない。オレは心配している。でも、彼のことだからいっか出てくるだろうと思った。
「オレは信じている…から。」
それしか、オレにはできなかった。

「プリスーいるのー?」
同じく学校から帰宅した双葉蒼はパートナーのプリスを探していた。昨日は普通にいたのに今日はなぜか姿が見当たらない。双葉は家の隅々まで探した。しかし、プリスの姿はなかった。不安になった双葉はオレにメールしてきた。オレは返事をした。
「成世くんも…。」
双葉はオレのほうもウィズがいなくなってるのを知ってやっぱ何かあったのかと思った。
「プリス…大丈夫だよね。」
双葉は携帯を握りしめ無事でいてほしいと願った。

「何か御用ですか…姫。」
ここはとある建物の屋上。冬の空は青空でも寒さが感じられた。屋上にいる二人の人物。
紫色の髪の少年と水色の髪の少女。
「ウィズ…。サンのことは本当に恨んでないの。」
「何故ですか?」
「私が助けたからあなたは逃げられた。けれど、それによって罪は重くなってしまった。」
「姫様は…優しいですね。」
「王子は…私の御両親には内緒にしてくれてる。」
「オレは結局、反逆者。それだけ。」
「でも、王国の王は…本当は悪いヤツだった。サンは王を倒そうとした。」
「オレは…。」
「あなたたちのやってることは本当は一緒なのに。どうして、ウィズは反逆者なの?」
「それを今更言ってもどうしょうもないさ。」
「それに、悪いのは…。」
「姫様、それは言わないでください。」
「…ごめん。」
「あいつは…昔からオレと仲が悪かった。」
「…。」
「今のオレの任務は…瀬戸成世のパートナーでいること。反逆者のことはあいつには教えないつもりだ。」
「そう…。」
「それに、オレは記憶の一部がない。だから、本当の話をあいつにすることもできない。」
「うん…。」
「おまえも、王子を探してるんだろ。」
「そうね…早く見つからないかしら。」
「きっとどこかにいるさ。」
「だといいわ。」
「もういいか?さっきから、あいつがずっと呼んでるんだ。おかげで頭が痛い。」
「私も蒼が心配してるから帰るわ。」
「オレは…姫様に助けてもらった命を大切にしなければいけない。」
「ありがとう。」
「それじゃ。」
ウィズは屋上から飛び降りた。大丈夫、死んではない。彼らはアルカナ族という異世界からやって来た、人間とは別の種族。空を飛ぶことや力を使うことも多少ならできる。
だから、屋上から飛び降りたって死なない。
プリスも屋上から一瞬にして姿を消した。

「げっふ!?」
オレはベッドの上で転がってマンガを読んでいたが上から何かが降ってきてお腹に。
「お、重い…。」
「あ、すまん。」
「う、ウィズ!?」
「ん。」
ウィズがオレのお腹の上に乗っていた。重たいと言ってもオレよりたぶん軽いと思う。
とりあえず、やつを蹴飛ばして起き上がった。
「どこへ行ってたんだよ!?」
「ちょっとな。」
「ちょっとなって。」
「おまえが心配してんのはわかってる。それはすまん。」
「…わかってるならいいけどさ。」
「オレは一応、おまえを守る任務があるから。」
「お、おう…。」
「とりあえず、お腹すいたー。」
「自由だな、ほんと!」
ウィズはオレに何かくれとねだってきた。
仕方なく、オレはヤツを連れてコンビニに行き肉まんを買った。
「あ、蒼からだ。」
オレはスマホを取り出し見た。双葉のほうもプリスが無事帰ってきたとのこと。オレはよかったと思った。もしかして、ウィズとプリスは一緒にいたのかと予想した。
家に帰らず少し遠回りをした。歩いていると前から歩いていた少年とすれ違った。
そのときなぜか、…
背筋に鳥肌が立った。
オレは振り返った。もう、そこに少年の姿はなかった。
気のせいかとオレは思った。ウィズに聞こうとしたが彼は夢中で肉まんを食べていてたぶん周りのことなんてこれっぽちも見てないだろう。
「アレ…は。」
オレが歩いている先には同じ学年の羽山がいた。彼女の隣にはパートナーのラブがいた。
「おーい、羽山さんー。」
「瀬戸くん?」
羽山は振り返った。
「何してんの?」
「えーと、」
「叶美のs」
「ラブ言わなくっていいの!」
「ん?」
「な、なんでもない。じゃあね。」
羽山は顔を赤くしてそのまま走りさった。
「ウィズ。」
「ん。」
「帰るよ。」
「ん。」
オレは家に向かった。外はうっすら、暗くなっていた。外に人の姿はほとんどなかった。
息が白かった。もう、1月も残り少しだった。一年が終わってしまうのは早かった。
ウィズと出会ってかなりの時間がかかったけれど、なかなかわからないことも多かった。
サンが現れて余計複雑な関係がアルカナ族にあるということはわかったが…彼らに何があったのかがわからないから話が進まない。
教えてくれてもいいじゃないかと思うけど彼らは記憶の一部が消えていたため本当の話ができないという。本当にそうなのかも不明。
けれど、…
運命を導くカードがきっと…教えてくれるはず。
オレはウィズのことを信じていた。だから、きっといつか本当のこともわかる。

「雪だ…。」
空からはちらちらと雪が降ってきた。早く帰ろ。そう思ってオレはウィズを置いて走り出した。
「早く帰ろ。寒い。」
「…おう。」
ウィズもオレの後を追うように着いてきた。
まだ、物語は始まり出したばかりだ。
次の運命がオレに何を教えてくれるのか。

そんなことよりこれから学校では生徒会選挙が待ち構えていたことをオレはすっかり忘れていたのだった―。

第59話 新会長は副会長

「えーみなさん、今日は生徒会長を決める選挙です!たぶん、ないと思っていますが賄賂とか不正行為はしないようにー。」

現会長の挨拶にみんなが笑った。会長はお辞儀してステージから降りた。
ここ、北海学園の体育館では4月からの新生徒会執行部を決める大切な選挙が行われていた。と、いっても今日は会長を決める選挙。ほかの役員は新一年生が入ってからというふうになっている。
「それでは、今回会長に候補した…」


「現生徒会副会長の四津彩里さん、マイクの前にどうぞ。」

名前を呼ばれた副会長はイスから立ち上がってマイクの前へ。そして、深く一礼した。

「みなさん、こんにちは。現生徒会副会長の二年四津彩里です。」
副会長はとても落ち着いた声で生徒みんなに向かって話した。
「私は一年間生徒会長のサポートをしながら、北海学園の生徒みなさんがよりよい学校生活を送ってもらえるよう努力してまいりました。そして、今年度からはみなさんの声がより一層反映されるように相談箱というものを設けました。たくさんのご相談があり一つ一つに対応してきたつもりです。みなさんのおかげでこの北海学園はよりよい学校へと進んでいっています。そして、私はこの学校が大好きです。会長となってまたみなさんのお役に立てるなら幸いです。全力で仕事にも務めたいと思ってます。どうか、よろしくお願いします。」
副会長は堂々とした声でよろしくお願いします。と、もう一度礼をした。すると、生徒の誰かが拍手をした。それに連れて、たくさんの拍手が湧き上がった。オレも拍手をした。やっぱ副会長はすごい人だった。きっと、会長になってもみんなのために仕事をこなしていくと思った。そして、副会長はマイクから離れイスに座った。
「ありがとうございました。それでは、今回は会長候補は四津さん一人なので信任投票になります。みなさん、お手持ちの機器から投票をお願いします。」
オレは手に持っていた機器を操作した。北海学園の投票は変わっているなと思った。そして、数分経ったあと投票が締め切られ
「それでは、投票の結果を発表します。」

「全生徒会の過半数以上が信任ということなので現副会長を4月から会長へと信任いたします。」

おおおおおー!!
と、歓声が上がって再び拍手が起こった。
副会長はイスから立ち上がってありがとうございます。とみんなにお礼を言った。
これで、無事継続して生徒会室に集まることができる。いや、まだだ。副会長が大事なカギを握ってる。けれど、前の時は誰一人やるというふうには見えなかった。オレもやるというか…こんな自分にできるのか不安で進んでやろうとは思えなかった。
副会長は本当にすごい人だと改めて思った。

放課後、みんなが生徒会室に集まって副会長に祝福の言葉をかけた。
「おめでとうございます!」
「副会長さんの演説かっこよかったです。」
「そんなことないが…。」
「これで、一安心ですね。」
「そうだな。」
「けれど、問題はあるんじゃね?」
一風先輩が指摘した。副会長も何のことか察しがついてるようで表情が一変した。
「副会長の選挙はまだ先だが…。」
副会長は途中で言葉を留めた。そして、
「あたしはこれ以上は言わない。本人の自由だ。」
と、言った。
「とりあえず、この会長が卒業するまでは副会長として頑張るつもりだ。」
「このって…相変わらずひどいなー。」
いつもの副会長と会長のやりとりを見てオレ達は少し安心した。
「あたしはみんなの支えがあってこその副会長だから。本当に感謝している。」
副会長がにこやかに微笑んでいた。

「副会長か…。」
オレは考えていた。やはり、誰かがしなくてはならない。他人に任せるわけにもいかない。かと言って自分がするのか…。
「ん?」
オレの目の前には誰かが倒れていた。
急いで駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
オレは倒れていた人に声をかけて意識を確認した。
「…いてて。」
どうやら、意識はあるみたいだ。
「あの、救急車呼びましょうか?」
「いや、大丈夫…ありがとう。」
倒れていた人は立ち上がってヨロヨロと歩き出した。見慣れない制服を着ていた。
歳はオレと同じくらいに見えた。
オレは少しの間彼の歩く姿を眺めていた。
「さ、帰ろ。」


「本当、おまえドジだなー。」
「うるさいな。」
「まぁ、アレが本物のやつかはわからないけど。」
「何の力も感じなかったがな。」
「でも、この街にいるんでしょ?」
「そうさ。」
「いつか見つかるよ。」
「ハハハ、愉快なやつだな。」
「…。」



「蒼、何読んでるの?」
「これ?タロットカードの伝説とかいう本。」
「へぇー。」
双葉は自分の部屋で学校で借りた本を読んでいた。プリスは双葉が読んでいた本を少し覗き見した。あまり関心がなかったのかすぐ離れ紅茶をすする。
「なんかね、昔運命をも変える不思議な力を持ったワールド・フェイトっていう神がいたらしいけどそれを狙った悪魔がいてその悪魔ごと自分も消滅したらしいよ。」
双葉がプリスに本の内容を説明した。それを聞いたプリスは持っていたティーカップを皿に置いた。

「ワールド・フェイト…」
「どうかしたの?」
「いや…。」

プリスは必死に記憶をたどった。しかし、思い出せない。すごく大事な何かが隠されていたような。

「ワールド・フェイト…。オレはおまえを許しはしないさ。」
「僕らのら復讐はこれからだ。」

ワールド・フェイト。伝説の神。これが一体何を意味しているのか。そして、復讐をもくろんでいる彼らは…。全ての鍵はそう


あの人物が握っていたのだった―。

第60話その名はワールド・フェイト

「相変わらず、寒いな…。」
「おはよ、成世くん。」
「あ、蒼。おはよ。」
冷たい風がまだ頬に伝わる朝。月日もだんだん早く進んでいるように感じられる。
オレ、瀬戸成世は学校に向かっていた。横にいるのはオレの彼女の双葉蒼。彼女と登下校を一緒にするのももうおなじみの光景。
あっという間に1年生も終わりに近づいていた。最近は、特別なこともなく平々凡々な毎日。唯一言うなら三月になると三年生が卒業するぐらい。オレには部活での先輩というのはいないけど生徒会長とはすごく親しい仲でいろいろお世話になっている先輩であった。
「もうすぐ、一年も終わりだなー。」
「そうだね。」
「なんか、早いね。」
「うん。ちょっと寂しいね。」

そういえば、振り返ってみるとオレの一年はかなりドタバタでハチャメチャなスクールライフだったような…。普通ならありえないことも起こってるわけだし。
「最近、どう?」
「ん?」
「プリスとは。」
「んー、いつも通りかな?」
「そうなんだ。」
「成世くんはウィズくんとはどんな感じ?」
「オレもいつも通りかな。」
オレと双葉にはそれぞれアルカナ族という異世界からやってきたパートナーがいた。彼らは悩んでいる人の元に現れオレ達保持者を助ける任務が課せられている。彼らが現れてからオレの日常も変わり、新しい世界が広がったーと、いうかこれが普通ならありえない点だ。
「成世くん、私ねこの本読んだんだけどー。」
双葉はカバンから一冊の本を取り出した。
「これね、なんかタロットカードの伝説みたいな歴史が記してあるの。」
オレは双葉から本を受け取りパラパラっと中を読んでみた。小さい文字がわりとびっしり書いてあってあまり読む気にはならなかった。
「その本にね、書いてあったんだけど昔ワールド・フェイトっていう神がいてその神が悪い悪魔と戦ったという伝説が書いてあるの。」
「へぇー、そんなのがあるんだね。」
「うん。結構、おもしろかったよ。」
双葉がこの本を貸してあげると言った。正直、読む気はなかったが彼女に推されたからまあ、読んでみるかと思った。
教室に入りオレはさっそく借りた本を読んでみた。タロットカードの歴史に伝説…とかいろいろ書いてあるようだ。
「成世、何読んでんだ?」
「歴史。」
「おまえ、いつからこんな本読むようになったんだ?」
「さっき。」
「成世氏は勉強中だから俺たちは話しかけないでおこうぜー。」
「そうだなー。」
オレは友人よりも今は本に夢中になっていた。そして、しばらくこの本を読み進めること数十分ー。双葉が言っていた伝説の神とも呼ばれるくらい巨大な力を持ったワールド・フェイトという男が悪魔を倒したという話が書いてある箇所を見つけた。倒したというか、一緒に死んだというほうが正しいが。
ワールド・フェイトは世界を変えてしまうほどの巨大な力を持った神であった。その力を使い世界を悪に染めようとした悪魔と死神と戦っていたが自分がこのまま生きていても誰かに狙われると思ったワールド・フェイトは自らの命をも一緒に抹消してしまった。その後、世界は平和に包まれワールド・フェイトは伝説の神として崇められるようになったそうだ。が、これとタロットカードの関係がどのようであるかについては未だ未解決というか諸説あるそうだ。
「結構、謎めいたものばっかりだな…。」
オレは本を閉じ立ち上がろうとした。
その瞬間、フラッとして視界がぼやけて何も感じないほど身体が軽くなった感覚にー。

オレはどこにいるんだ。

あれは…。

『ワールド・フェイト…。』

『あなたは…このままいると命を狙われてしまいます。ですから…。』



「成世くん、成世くん!」
「…んんっ。」
「大丈夫?ここ保健室だよ。」
「えっ?」
「成世くん、倒れたんだよ。たぶん、ずっと必死で本読んでたから…ご飯食べた?」
「いや…昼ごはん食べてないな…。」
よっぽどオレは本に夢中になっていたようだ。双葉はオレのことを心配してくれていた。そして、手にはオレのお弁当袋を持っていた。
「食べれる?」
「あぁ、ありがとう。」
オレは双葉から受け取りご飯を食べ始めた。
「なんかさ…夢みたんだ。」
「夢?」
「ん。」
「どんな夢?」
「ワールド・フェイト…。」
「ワールド・フェイトって、あの?」
「ん。だけど、それ以外何も…覚えてない。」
「そうなの?」
「オレ…久しぶりにこの夢みたかも。」
「前にもあったの?」
「あぁ、何回か。でも、どれもよく覚えてないんだ。」
「何か不安なことがあるの?」
「わからない。けど、大丈夫。オレは元気だし。それに、蒼がいてくれるから。」
オレは双葉を見て笑った。双葉もそれを見て少し安心したのか笑ってくれた。
「よしっ、ご飯も食べたしもう大丈夫!」
「無理しないでね。」
「ありがとう。」
オレはベッドから起き上がり先生に教室へ帰りますと報告し双葉と一緒に教室へ向かった。オレはそっと双葉の頭を撫でありがとうってお礼を言った。双葉は照れ笑いをした。
また、お互いの距離が近くなったように感じた。冬は別れの時季とか言われるけどオレはそんなことないと思いたい。彼女とずっといたい。今日はその思いが特に強く心にある。

「成世くん、好きだよ。」
「オレもだよ。」



二人の愛は永遠に続くものだと思っていたかった―。

第61話 バレンタインデー(short story)

(成世side)
「今日はバレンタインか…オレには縁のない話だな~。」

(蒼side)
「今年は何作ろうかな…。」

(成世×蒼)
「成世くん!」
「蒼、おはよー。」
「こ、これ…。」
「えっ…。」
「作ったの、よかったら食べて!」
「…。」

「ありがとう。うれしいよ。」
「いえいえ。」
「じゃあ、学校行こうか。」
「うん。」

(もしかして、本命だったりしてなー。そんなの夢のまた夢か。)
(本当は本命だけど…。気づいてくれたかな。)

(彩里side)
「副会長、これよかったら!」
「副会長さん、あのどうぞ!」
「は、はぁ…。」

「てか、バレンタインって女子が男子に渡すものではないのか?なんで、あたしはもらってるのか…。」

(瞬矢side)
「あれ?あいつ…なんで、チョコもらってんだ。てか、男!?どーいうことだ!」

「先輩、あの、これ!」
「あ、あ、わりぃ今急いでるから。」

(彩里×瞬矢)
「彩里、おまえ、それ。」
「あーこれか。」
「なんでそんなにもらってんだ?」
「知らないわよ。あたしこんなにも食べれないけど。」
「なら、会長にあげれば?」
「あー。あいつはまぁ、もらってんじゃないの?」
「そ、そうか。」
「なんなら、一緒に食べる?」
「え…(いや、俺はおまえからのがほしいんだけどな。)」
「どうした?」
「いや、なんでもない。教室に戻るわ。」

(瞬矢side)
「あー。あいつ、わかってないな。」

「さてと、…ん?」

(恥ずかしいから直接じゃないけど。いつもありがとう。彩里)

「…。」

「かわいいかよっ。」

第62話 新しい始まり

あれから、2ヶ月半。
すっかり、春の陽気に包まれた朝。
オレは学校の校門の前に立っていた。思えば、もう1年が経過しオレは2年生に。
早いものだ。

「成世くん、」
「わっ!」
「おはよ。」
「蒼、おはよ。」
「クラス替え楽しみだね。」
「うっ…。」

オレ、瀬戸成世。北海学園に通う高校2年生になろうとしている男と隣にいるのはオレのかわいい彼女、双葉蒼。クラス替えを一緒に見るため校門前で待ち合わさていた。
しかし、オレは全然うれしくない。1年の時は彼女と同じクラスだったが今回もまた同じとは限らない。下足箱の周辺にはたくさんの生徒がいてクラス替えの表が見えない。

「瀬戸くん、蒼ちゃん、おはよ。」
後ろから茶髪の女の子が声をかけた。
「叶美ちゃん、おはよ。」
「羽山、おはよ。」
彼女は羽山叶美。オレ達の同級生だ。
彼女もまだクラスを知らないようで一緒に見ることになった。
やっと、人が引き始め自分の名前を探した。

「あ、オレはA組だ。」
「私と叶美ちゃんもA組だよ!」
「うそ、やったぜー!」
オレは喜びに満ち溢れた。羽山もうれしそうにしていた。3人で教室に向かった。
「にしても、運がいいな。」
「そうだね。」
「これなら、情報共有とかも気軽にできるね。」
「だな。」

今日からオレ達は新しいクラスで新しい1年が始まろうとしていた。3月に行われた卒業式では今までお世話になった先輩…といっでオレの場合は生徒会長の日渡先輩にしかほとんどお世話になってないような気もするがお別れしたのだった。あの日、日渡先輩は泣いてなかったけどきっと寂しいとは思ってたんだろうなとオレは思っていた。オレも悲しかったし。新しい会長には日渡先輩の妹、四津先輩がなり、副会長にはなんと、オレ達の横にいる羽山がなったのだった。
初めてこのことを知った時は驚きだった。羽山自身も何か変わろうとしていたのかもしれない。仕事はまだそんなにないと言っていたが大変なのには間違いない。オレもサポートするつもりではいる。

「そーいえば、入学式っていつだったけ?」
「えーと、1週間後じゃない?」
「生徒会の仕事もあるから私は準備しなきゃな。」
「叶美ちゃん、私達もできることは手伝うから頼ってね?」
「ありがと!」

「みんな、おはようございます。席についてくださいー。」
先生が教室に入ってきた。始業式の前にお知らせや提出物などを出した。


午後になり始業式があって、1時間ほど学級活動があり今日1日はあっという間に終わった。オレと双葉は一緒に帰宅していた。

「2年生かー。」
「修学旅行もあるよね、確か。」
「あぁー、そうだな。」
「楽しみだね。」
「だな。」
途中まで一緒に帰り各々、家に向かった。
「ただいま。」
オレは部屋のドアを開けるとそこには紫色の髪の男がふてくされたような顔をしてベッドに座っていた。
「なんだよ。」
「別に。」
「1日なにしてたんだ?」
「寝てた。」
「全く。」
「おまえだってそうだっただろ。」
「そーだね、でも、今はちゃんと学校行ってますよ!」
「…。」
「なに?」
「おやすみ。」
「はぁ…もう。」
ウィズは寝てしまった。彼はいつもこんな感じだからもう何とも思わないけど。
オレは机の上に置いてある写真を見た。
そこには卒業式の時に撮った写真。
それを見てオレは微笑み、春の風に期待を寄せるのだった。

ここからまた、運命は進んでいくのであった。

第63話 入学式

「北海学園へ新入されたみなさん、おめでとうございます。」

あぁー眠たい

今日は北海学園の入学式である。まだ着崩されてない制服を身につけ緊張なのか顔の表情が堅い新入生がたくさんいた。オレは在校生として出席しているが、正直家に帰って寝たい。校長先生の話しやら来賓の紹介やら聞いてるだけでつまらないし、長いし…。
しかし、みんな同じ気持ちだろうと思って耐えてるわけだが。

「新入生代表挨拶。代表、天川まどか。」
「はい。」

新入生代表に呼ばれた子は堂々とした態度で壇上に上がりみんなに向かってお辞儀をした。

「天川ってあの、天川グールプなんかな。」
「北海学園に入学したんだ、もっとレベルの高い所ありそうなのにね。」
オレの周りで何人かがひそひそ話している。どうやら、あの代表はどこかのお偉いさんの娘さんなのか。オレにはどうでもいい事であった。

長い長い入学式が終わってオレは早く家に帰ろうと思っていた。しかし、そんなオレは運悪く生徒会長に捕まってしまった。
「久しぶりだな、瀬戸。」
「か、会長どうしたんですか?」
「これから、集まりがあるんだが。」
(えー…帰りたい。)
「なんだ。」
「い、いえ、行きます。」
会長の圧力にはオレは勝つことができず仕方なく、会議室に向かった。扉を開けると双葉もいたし他のメンバーも全員いた。
「成世くん。」
「蒼、これって何の集まりなの。」
「私も…わかんない。」
どうやら、会長が緊急に開いた会議だろうと思った。会長こと四津が入ってきてみんな静かになった。
「急に集まってもらってすまない。今日から新入生が入ってきたわけだが、」
四津はオレ達を見回して
「瀬戸、」
「は、はい。」
「一年前のこと覚えてるか?」
そう言われてオレは一年前何があったか思い出した。オレは不登校児だった。しかし、ウィズに出会い学校復帰を果たした。仲間にも出会った、恋人もできた。オレの一年間は劇的なものだった。
「新しい学校生活で不安な生徒もいるだろうし、期待で胸いっぱいの生徒もいる。そんな中、あたし達にできること。それは、そんな生徒をサポートすると共に、」

「タロットカード保持者を探すことだ。」


「と、いうことで、みんなには紹介が遅れたが」
四津がそういうとどこからともなく現れた人物がいた。
「サン・リエンドだ。」
彼は赤色の髪に耳には星と月のピアス、おでこには紋章がついていた。つまり、アルカナ族…大アルカナだった。
「スターのお兄さん…か。」
「そうだ。」
「保持者はあたしなんだが、サンはまた別の任務があるそうだ。」
「別の任務?」

「俺は、ワールド・フェイトを探しに地球に来た。」

サンはオレ達に向かって言った。ワールド・フェイト…それは、、


「久しぶりね、サン。」
「…プリス。」
「元気だったかしら。」
今度はプリスがどこからともなく現れた。2人は緊迫した空気にいるかのような様子だった。
「私達は別のところで話すから話続けて。」
プリスはサンと一緒に消えてしまった。
四津は改めて
「タロットカード保持者探しのためにみんなも新入生で怪しいと思う人をチェックしておくように。」
「わかりました。」
「今日の話はこれで終わりだ。」

会議が終わって、オレは双葉と一緒に帰ってた。プリスはまだ戻っていないようだ。
「新入生どんな子がいるのかな。」
「蒼は天川グールプって何か知ってる?」
「確か…海外の商品とか取り扱ってる結構有名なグールプだったような。新入生代表挨拶してた子だよね?」
「そうそう。」
「すごく堂々としてたよね。」
「だなー。」
オレと双葉は途中でそれぞれの道に分かれ帰っていった。


「サン、あなた…ウィズのこと…」
「許したわけではないが。」
「そうよね。」
「しかし、姫も姫だ。」
「私は姫として当然のことをしたまでよ。」
「許したわけではないが、ワールド・フェイトを探すほうが先だ。」
「そう。」
「それに、」
「?」
「どうやら、アイツらも生きているようだ。」
「…。」
「アイツらは死んでたが…どうやら何者かによって生きているようだ。」
「全く…。」
「だから、ワールド・フェイトを探さなければならない。」
「そうなるね。」
「それじゃ、姫。」
「サン。」
「姫、俺は早く安全に暮らしたいだけだ。」

「…私もよ。」

残されたプリスはどこか悲しげな瞳をしていた。
新しい運命が始まろうとしていた。
そして、ワールド・フェイトの存在は一体いつ明らかになるのだろうか―

第64話 新生活

「おはよー」
「成世くん、おはよ。」
「なんか、二年生になったけどあんまそんな気がしないなー。」
「でも、忙しくなるし…修学旅行もあるよ。」
「蒼は修学旅行どっちにした?」
「私はワールドランドのほうかな。」
「あ、オレもそっちにした。」

四月の朝はどうも眠気が引かないというのか、ほどよい暖かさがオレにとってはある意味敵である。今日も彼女の双葉と一緒に登校していた。二年生になってなんら変わりはないけど、行事では修学旅行というメインイベントともいえる行事があった。オレの学校は、ワールドランドに行けるコースと自然体験が中心のコースと選択肢は二つ。運良く、彼女と同じになれたが実際はグループも別だろうし、部屋だって男女別になるし。(当たり前だが。)
「なんだ、アレ?」
学校の校門付近で何やら、人がたくさん集まっている。オレと双葉も気になって近づいてみた。すると、いかにも高級車といえるような車がこちらにやってきた。

「爺や、ありがとう。」

車から降りてきたのは茶髪の髪の毛をきれいに巻いてお嬢様って感じさせるようなオーラを発している

「天川さんだよね?あれ、」
新入生代表挨拶でも見かけた生徒だった。
やはり、お嬢様だった。校門付近にいた生徒は呆気に取られてみんな門から離れてまるで、彼女がレッドカーペットを歩いているような光景だ。

「本当に、お嬢様だったのね。」
「そうだね。」
「なんか、すごい新入生だね…。」
「うん。」
オレたちもさすがにびっくりした。しばらくして、いつものような落ち着いた様子になり教室へと向かった。

「あ、あの…。」
教室に向かっている最中にオレ達はおそらく新入生だろうという子に声をかけられた。目的の教室の場所がわからないということらしくオレと双葉は新入生を連れてその教室に向かった。

「ここだよ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ、私たちも行きますね。」

「さっきの子、かわいかったね。」
「礼儀正しいし落ち着いてたよね。」
「そうだね〜。」
オレは何気なく会話してたつもりだがチラッと双葉のほうを見るとなんか少しむすっとしていた。
「蒼…。」
「ん?」
「え、え、と…。」
「なぁに?」
「もしかして、嫉妬した…?」
「なんで?」
「え、だって、オレがかわいいとか言ったからさ。」
「どうだと思う?」
「えっ。」
「ふふっ、成世くん正解。」
双葉はオレの頰っぺを軽く摘まんだ。嫉妬した意味だろうか。これがたまらなくかわいかった。
「ごめんな。」
オレは彼女の頭を軽くぽんぽんとした。
すると、双葉は照れたのか小声でえへへと言った。
オレにとって彼女といることは1番の幸せだった。

「さてと、今日もがんばるかー。」
「うん!」
オレと双葉はお互いに顔を見合わせて笑ったのだった―

第65話 編入生

「ねぇねぇ、聞いた聞いた?」
「もちろん!」

「男の子かな?女の子かな?」
「男の子らしいぜー」

「なんか、今日は一段と騒がしいな…。」
いつも通りにオレは学校に登校していたが今日はまた一段と騒がしい様子。二年生の教室が集まるこの廊下でオレの隣のクラスに編入生が来るそうで朝から見物人がたくさんいた。この時期に編入するのはタイミングがいいのか悪いのか…。なにかやむを得ない事情があるのだろう。
朝のチャイムが鳴り廊下は一気に静かになった。編入生はまだ来ていないそうだがみんなそれぞれ自分の教室に帰っていった。

「なぁ、編入生の話聞いた?」
「あー噂はすごいよね。」
「ふーん。」
「後で、見に行こうぜ。」
「いや、オレはどっちでもいいんだけど。」
「かわいい女の子だったらどうする?」
「男だってさ。」
「え、まじで!?」

オレは友達と編入生の話をしていたものも特別気になっているわけでもなく。双葉に後で話かけてみたけど彼女も同じくそこまで気になっているわけではなかった。
一限の授業が終わると教室にいた奴らは途端に隣のクラスに編入生を見にいくために廊下に出ていった。

「めっちゃ、イケメンじゃない?」
「え?見たいよー!」

女子たちの黄色い声が廊下に響き渡る。騒がしいというかうるさい…。

「名前、聞いてきたんだけど黒魔くんだって。」
「へぇー変わってるね。」
「キラキラネームだね。」

オレと双葉は気になってないと言ったがみんなの会話に流されるかのように隣のクラスに覗きに行った。

「あの子かな?」
双葉がたくさんの人で囲まれた机に一際不思議な雰囲気の男の子が座っていた。

あれ…?なんか見覚えがある…。

「成世くん、どうかした?」
「いや…。」

すると、こちらの視線に気づいたのか男の子のほうもオレを見た。ぺこっと小さいお辞儀をして目線を逸らされたが。

あの顔…は…。

その後の授業の間もオレは自分の記憶を辿っていた。時々、先生にうわの空だぞと注意されたが。
結局ハッキリと思い出せないまま1日が終わってしまった。オレは双葉と階段を降りていた。すると、あの男の子に会った。彼はオレの目の前に立った。
「あ、あの…。」
「この間は助けてくれてありがとう。」
彼の声は透き通っていて静かな廊下では若干響き渡るような感じだった。

「あ…もしかして、」
オレはやっと思い出した。とある日の帰り道、道端に倒れた男の子がいた。オレはその子を助けようとしたが大丈夫ですと言われてしまった。
「あの時は…ごめんなさい。僕、人見知りでして。」
「いやいや、大丈夫ですよ。」
同い年なのに会話がぎこちない。
「あの、僕はこれで。」
彼はオレ達に一礼して階段を上っていった。

「なんか、不思議な子だね。」
「そうだな。」
「成世くん、知ってたんだ。」
「あーまぁ、偶然だけど。それにオレあんま覚えてなかったし…。」
「そうなんだ。」



「よっ、編入生。」
「…。」
「イケメンとか言われてチヤホヤされてたけど。」
「…。」
「それより、おまえの任務はワールド・フェイトを探すことだからな。」
「わかってる…。」

一人教室に残された彼は窓のほうを見た。
そこには、楽しげに帰っている瀬戸と双葉の姿。
新しく来た彼は一体何者なのか。
それについてはいずれわかることであった。

「瀬戸成世くん…。」

第66話 異世界での話

「あのさ、」
「なんだ?」
「ウィズはワールド・フェイトのこと知ってるの?」
「…。」
「この前、会長さんのパートナーのサンが言ってたんだけど…。」
「サンか…。」
「ずっと気になってたけど…。」
「成世には悪いがこのことはまだ話せない。」
「そうか。」
「ただ、」
「?」
「俺はおまえを守るという任務を遂行するだけだ。」
「うん…。」

「もう、いいか?俺は眠い。」
「いや、それはいつ…早っ!?」

「はぁ…プリスに聞く方が早いかな。」

「って、やば。学校。」

四月はいろいろな行事があって環境の変化が目まぐるしい。オレもここ数日でそれを経験した気がする。入学式があり、編入生がやってきて、おまけに知り合いだったし。
それに、タロットカードのことだって忘れてはいなかった。まだ何も起きてはないがこの先何があるかわからない。ウィズ達の人間関係もイマイチ謎な部分もある。けれど、なかなか話してもらえなかった。そんなに複雑な事情が何かあるのか。
そんなことを気にしててウィズと話してたら学校行くことを忘れて遅刻寸前。

「なんとか…間に合った…。」
「成世くん、おはよ。大丈夫?」
「あ、蒼…おはよ。」
「寝坊でもしたの?」
「いや、ちょっとね。」
「うん。」
「プリスと今日話できたりするかな?」
「プリスなら…たぶんいると思うよ。私も最近姿見てないけど。」
「そうなの?」
「ウィズくんは?」
「あいつなら寝てるよ。」
「じゃぁ、一緒ではないのね。」

「席につけー授業始めるぞー。」
教室に先生が入ってきて一旦ここで話を終えた。プリスはもしかするとタロットカードを探してたりするのかなとオレは思った。それに、出会ったときから人一倍タロットカード探しをしてたし。その辺の理由も知りたかった。

「瀬戸くん。」
「羽山どした?」
「最近、ラブの姿がないの。」
「羽山もか?」
「詳しいことはわからないんだけど。」
「蒼もプリスの姿が最近見えない時があるって。」
「瀬戸くんは?」
「オレはそんなことないんだけど。」
「プリスとラブちゃん一緒にいたりするのかな。」
「どーだろ。あの二人仲悪いし。」
「そうだったの?」
「羽山知らなかったの?」
「あまり…気にしてなかったかも。」
「ハハハッ…。」

全ての授業が終わりオレと双葉、羽山は教室に残ってプリスから話を聞こうとして待っていた。しばらくして、プリスがオレ達の前に現れた。
「待たせて悪かったわ。」
「大丈夫だよ。」
「それで、何があなた達は知りたいわけ?」
「ウィズとサンの関係かな…オレは。」
「その他は。」
「あと、ワールド・フェイトのこと。」
「そうね。」
プリスは一呼吸置いて
「その話は…今はできない。」
「え、でも…。」
「と、いいたいけど仕方ないわね。」

「私たちがまだ向こうの世界にいたころ…ウィズは…王国に従わない反逆者だったの。」
「反逆者…。」
「彼は反逆者であるから捕まえて殺すというはずだったわ、けれど…強力な悪魔と死神の復活により国はめちゃくちゃ、たくさんの人が死んでしまった。私は王国の姫だから人々を助けなければならなかった。そして、そのさなか、私は戦場で倒れているウィズを見つけたわ。彼の首には鎖がついていて恐らくどっかで捕まってたのでしょう。彼は逃げてここにきて…そして、運悪く私は悪魔と遭遇してしまったわ。圧倒的な力を前にしてボロボロにされてしまった。もう少しで殺されるところだった。」
「うん…。」
「でも、今ここにいるってことは無事だったって…ことだよね?」
「その時、ウィズに私は助けてもらったのよ。いいえ、正確にいうとワールド・フェイトに。ワールド・フェイトが悪魔と戦ってる間にウィズは私を助けてくれたわ。自分がボロボロなのに。それで、私は反逆者であるウィズを本来なら捕まえなければならなかったけど逃がしたわ。」
「そうだったんだ。」
「ウィズ、プリスのこと姫って呼んでたな。」
「サンは私たち王国の先鋭の1人だったわ。だから、ウィズを捕まえる義務があった。けれど、私は逃がしてしまった。だから、一人ずっとウィズのこと追ってた、ワールド・フェイトのことも。」
「ワールド・フェイトは王国の人なの?」
「いいえ、彼は神に近い存在だわ。普段は姿を現さない。全てを変えてしまう力を持ってるからね。怒らすと地球ぐらいは破壊できるかしら。」
「えぇっ!?」
「っていうのは冗談だわ。」
「びっくりした…。」
「でも、それぐらい力を持ってたってことだよね?」
「うん、彼は運命を操る力もあったし、それを狙ってたのが悪魔と死神。しかし、彼らは滅んだ。ワールド・フェイトも。国に平和が戻ったころ…なんのうわさかはわからないねどワールド・フェイトは生きているというのを聞いたわ。それで、私達は彼を捜すために地球にやってきた。同時に、悪魔と死神も生き残りがどうやらいるそうで。また彼らを消滅させなければ…国は滅びる。」
「そんな問題があったんだね…。」
「私たちにできることは何かないの?」
「あなた達には早くタロットカードを探してもらいワールド・フェイトを復活させることよ。ワールド・フェイト復活にはタロットカードが全てそろわなければ…」
「え?でも、ワールド・フェイトは生きてるんじゃ…。」
「それはあくまでうわさだから。」
「そうか…。」

「よっし、プリスのためにも異世界の人のためにも早くタロットカード探そう。」
「うん。」
「だね。」
「手がかりは今のところ…ないのかな。」
「いや、既に保持者は現れようとしているわ。」
プリスはどこからともなく1枚の手紙を出した。
「何コレ?」
「読んでみなさい。」
プリスに言われオレは封筒を開け中に入っている紙を取り出した。

「早く、私を殺して…。明日、屋上で私は死ぬんだ。」
「遺書…。」
「それが手がかりよ、後はあなた達に任せたわ。」
プリスはオレ達にそう告げて消えてしまった。
「手がかりか…。」
1枚の手紙には保持者探しのためのヒントが本当に隠されているのか。



「バッドエンドも案外悪くないけど…それは幸せへの道しるべ。」

屋上に一人佇んでいた人影がそっと消えた。
彼女は一体―

第67話 自殺予告の手紙

「希ちゃんはほんと、いい子だよね。」
「いつも、大変じゃない?」
「頭もいいし東園高校受けるんだっけ?」
「親御さんも自慢の娘さんだろうね〜。」

「希はいつもいいよね、先生に気に入らられてて。」
「ほんとなー。」
「私たちのこと実はバカにしてたり。」
「先輩にも告白されてたり?」

「みんな…みんな…」


「私のことなんか知らないくせに…。」


「あのさ、プリスが渡してくれた手紙あるけど今日屋上に行ってみる?」
「そうね…ちょっと気になるかもね。」
「放課後だっけ?」
「うん。」
昼休み、教室で昼食中のオレは彼女の双葉と友達の羽山と一緒に昨日の話をしていた。新しいタロットカード保持者の手がかりとしてプリスから渡された手紙。あの手紙には自殺をほのめかす文章が書かれていた。しかし、名前は誰かもわからない。この学校の生徒には間違いないが。
「でも、こんな簡単に保持者って見つかるものなのかな。」
「んー人それぞれじゃないのかな。」
「タイミングがあるだろうし。」
「難しいね。」
「とりあえず、放課後は屋上に行ってみよう。何かあると思うし。」
「最初からそのつもりだよ。」
「うん。」
オレ達は放課後屋上に行くことになった。

キーンコーンカーンコーン
「それじゃまたね。」
「部活行こうぜ。」
「成世またなー。」
「おう。」
「成世くん、行く?」
「行こう。」
放課後になりオレ達は屋上へと向かった。普段はあまり行かないしそもそもこの学校は立ち入りができたのかというところにも疑問があった。
「鍵はかかってないみたいだぜ。」
運良く扉は開いていてオレ達はドアを開けてみた。
「誰かいるか…?」
「んー…。」
あたりを見回したが人影はなさそうだった。この手紙が嘘だったとは言いきれないが。
しばらく待つことにしてみた。
「屋上って結構眺めはいいなー。」
「そうだね。」
「空が青いね。」
「ここで昼ご飯食べるのもいいかもな。」
「晴れてる時はね。」
「お昼寝したくなりそう。」
「確かにな。」
オレ達はすっかり屋上の良さに取り憑かれてしまい気づけば手紙のことなんか忘れて3人で転がっていた。
「…。」
そんなオレ達をこっそり見ていた人物がいた。正確に言うとどうやら今屋上にやって来てドアを開けかけてすると誰かがいるから様子を伺っている。
「ふぁ〜っ。…ん?」
「成世くん、どうしたの?」
「ドアが。」
「ちょっと開いている?」
「誰かいるのかー。」
オレはドアに向かって叫んだ。
「…。」
返事はなかったがドアが徐々に開き始めた。
「幽霊とかじゃないよね?」
「まさか。」
羽山が立ち上がってドアの方に近づいた。
すると、人影がみえた。
「どちら様?」
「…え、え…っと。」
「まさか、自殺しにきたり?」
「え…?」
「は、羽山それは、」
「あ、ごめん。ごめんなさい、今のは気にしないで。」
「はい…。」
「あなた…もしかして、この間の。」
「ん?あ、迷子になってた」
「え、瀬戸くんと蒼ちゃんは知り合い?」
「いや、たまたま。」
「あ、あのときはありがとうございました…。」
「ってことはあなた、1年生?」
「はい、藤咲希と言います。」
「希ちゃんね、ごめんね、はいりづらかった?」
「あ、いえ。大丈夫です。」
「オレ達、ここに自殺する子が来るらしくってその子を探しにきたんだ。」
「そうなんですか?」
「希ちゃんは何も知らないよね…入ってきたばっかだし。」
「え、え…。」
「なんか、今日は来ないっぽいし帰るか。」
「そうね。」
「また明日にする?」
「うん、それじゃあ、オレ達帰るから。」
オレ達は彼女に挨拶をして屋上から去ろうとした。
「あ、あの、」
「ん?」
「その、自殺しようとしている子…をどうしたいのですか?」
「どうしたい…って。」
彼女にはタロットカードのことなんて話してもわかるわけもなかった。だから、人助けとしか言えなかった。
「助けるかな…。」
「そうですか…がんばってください。」
「ありがとう。」

「…なんで…手紙のこと…。」
屋上に残された彼女は一人扉を見つめていた。そして、オレ達は自殺しようとしていた子が実は―だったことにすぐ気づかなかった。
「もう少しあとでもいいかな。」
オレ達に限られた時間はあと3日という短い時間だった―

第68話 誰にも言えなかった心の内

「今日も来てないね。」
「だなー。」
「やっぱ、この手紙のこと本当じゃなかったり?」
「んー。」
「退散する?」
「そうしょ。雨降りそうだし。」
「だな。」
今日の放課後も屋上に自殺する子を探しに来たが誰もいなかった。やはり、手がかりとしては少ないのか。
「…あっ。」
オレ達がドアを開けて中に入ろうとしたら最近出会った1年生の藤崎希がいた。彼女は手にお菓子を持っていた。
「こ、こんにちは?」
「こんにちは、今日何かあるの?」
「いや…お菓子食べようかなって。」
「でも、雨が降りそうだよ?」
「そうなんですか?」
「オレ達は帰るからさ。藤崎ちゃんは雨に気をつけてね。」
「あ、ありがとうございます。」
彼女はオレ達を見ていた。しばらくして、一人屋上に出た。
「…。なかなか…上手くいかないな…。」
彼女の目には涙が溢れていた。そして、手に持っていたお菓子の袋を開けた。
「…雨。」
ポツポツと雨が降り始めた。グラウンドにいた部活動をしている生徒たちはみんな片付けを始めているのが見えた。
「私は…どうしたらいいの。」
彼女は雨の中、一人座り込んで泣いていたのだった。

「なんかさ、」
「どうしたの?」
「藤崎ちゃんのこと気にならない?」
「私も…。」
「屋上行ってみる?」
教室に引き返していたオレと双葉、羽山はもう一度屋上のほうへ。
彼女に気づかれないようにゆっくりドアを開けた。
「藤崎ちゃん!」
オレは雨でびしょびしょになっている彼女のところに急いで行き
「風邪引くよ!中に入ろう!」
と、彼女の手を握った。
「ここがいいんです…。」
彼女はオレの手を払って顔を挙げた。涙なのか雨なのかわからないが顔まで濡れていた。
断れたものの彼女が心配なオレは強制的にでもと思い
「ウィズ、力を貸してくれー。」
パートナーのウィズを呼び出した。普段、彼は学校ではなく自宅のベッド(オレの)で寝ている。しかし、助けが必要な時には呼べば駆けつけるとか出会った時に言ってたような気がした。
「なんだ…寝てたのに。」
わずかな時間でウィズは現れて眠たそうに目をこすっていた。
「彼女が風邪引いたらいけないから中へ移動させてほしいんだ。」
「…。」
ウィズはあくびをして藤崎に向かって魔法をかけた。すると、彼女だけではなくオレ達まで教室に瞬間移動していた。
双葉と羽山はタオルと着替えを持っていた。
「…藤崎ちゃん、風邪引くよ、着替えてね。」
双葉が優しく声をかけ、彼女は小声でお礼を言い、濡れた制服から着替えた。

「すみません…。」
着替え終わった彼女はオレ達に謝罪した。
オレ達は怒っているつもりもなくただ、彼女が心配だったということだ。
「藤崎ちゃん、何か悩みでもあるの…?」
「…。」
「私、生徒会の副会長やってるの。よかったら話してくれないかな?力になるから。」
羽山は藤崎の手を優しく握った。
「あの…私…。」
「ん?」
「みなさんにご迷惑をお掛けして…本当にすみません。」
「んん、大丈夫だよ。」
「私達、怒ってないよ。」
「…優しい先輩方で良かったです。…話します。私のこと。」
彼女はオレ達のほうを見てゆっくり口を開いた。
「先輩方は…自殺しようとした子を助けようとして屋上に来てたんですよね、アレ…私なんです。手紙書いたのも私です…。」
「そう…なの?」
「はい、私は…受験に失敗したんです。私は小学生の時からみんなにいい子だよねとか頭いいよね、優秀な人って言われてきました…親もきっと誇りに思っていると思います。しかし、その反面、クラスの子から嫌われたりもしました。私が先生に気に入られてるのが気に食わない子もいました。いじめもありました…。」
「そうだったの…。」
「それで、受験生になって私は…北海ではなく東園を受験するつもりでした。」
「東園ってめっちゃ頭のいいところだよね?」
「そうなの?」
「成世くん知らないの?」
「初耳…。」
「学校でも東園受けるのは私だけでした。先生方もすごく期待してくれてました。けれど…私は失敗しました。落ちたんです。それで、北海を受験しました。その時、先生方、親…みんな私が落ちたことにガッカリしてました。必死に勉強したのに…。周りからは期待外れとか言われました。」
「ひどい…。」
「私はみんなにとって…ある意味道具だったのかもしれません。それで、私は…苦しくなって自殺しようと思いました。」
「うん…。」
「もともと、私別に勉強できてたわけじゃないし、みんなみたいにいいところもないし…失敗したとき泣きました。私だって悔しかった…でも、それ以上に私は周りから期待されてプレッシャーに押し潰されそうな時もありました…。もう、そんなの嫌なんです。」
藤崎の目には次第に涙が零れていた。苦しかったんだろう、彼女も。オレ達、みんなそれぞれの悩みがあって…それを人に言えない人もいる。双葉や羽山も、オレも…
「先輩方が屋上に来た時、私びっくりしました。普段、屋上には誰も来ないので…。私のお気に入りの場所だったんです。誰にも見られることなく自由にできる…。先輩方が自殺しようとしていた子を探してると言われた時…なんでそんなこと知ってるか不思議でした。私の手紙を持っているのも。怖くなって黙ってました…。」
「あぁ…なるほど。」
「ごめんね…いろいろこれには訳があってね。」
「先輩方がその子を助けたいって言われたて私は驚きました、見ず知らずの人を助けようとしていて…自殺なんて個人的な理由でするのに。私、先輩方が助けに来なかったらきっと死んでたと思います。」
「そりゃ…オレ達は…。」
「助けるのは当たり前だよ。」
「…私のためにここまでしてくれる人はいました、過去にも。でも、それは私の為ではなく自分たちのために思えました。だから…先輩方は本当にいい人だなと思いました…。」
「話してくれてありがとうな。」
「辛かったね…。」
「…先輩方がいい人でよかった、けれど、私はもう決めてるんです。」
今まで椅子に座っていた彼女は立ち上がりスカートのポケットからカッターを取り出した。
「…ごめんなさい、助けてくださったのに。」
それを自分のほうに向けようとした。
とっさに、オレは反応して彼女の腕を掴んだ。
「だめだ、そんなことしたら。」
「いいんです、もう…私は変わらないんです。」
「そんなことない!」
オレは力尽くでカッターを奪い取ろうとした。

「…全く、人間というのは大変な生き物だ。」
どこからともなく声がした。
教室にはオレ、双葉、羽山、藤崎ちゃん以外にはいないのに。
「バッドエンドは決してそれで終わりじゃない。」
その声と共に藤崎の手に握られていたカッターが粉々になった。
「え?…」


「あなた、運命を変える気はあるのかしら?」
紫色の髪、耳が尖っていて、腰に巻いていたベルトには…大アルカナを表す紋章が。

「初めまして。」
その人はオレ達の前に現れたのだった―。

正逆ラスカ(51~)

正逆ラスカ(51~)

  • 小説
  • 中編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 第51話クリスマスの奇跡
  2. 第52話 お正月特別編①
  3. 第52話 お正月特別編②
  4. 第53話 三学期
  5. 第54話 助けに来た?
  6. 第55話 複雑な関係の始まり
  7. 第56話 消えた記憶
  8. 第57話 一緒にいることの幸せ
  9. 第58話 過去の話
  10. 第59話 新会長は副会長
  11. 第60話その名はワールド・フェイト
  12. 第61話 バレンタインデー(short story)
  13. 第62話 新しい始まり
  14. 第63話 入学式
  15. 第64話 新生活
  16. 第65話 編入生
  17. 第66話 異世界での話
  18. 第67話 自殺予告の手紙
  19. 第68話 誰にも言えなかった心の内