『階段の上がり方』

紅蛇 作

※研究のために、複数の人が共同で使用しているアカウントです。作品に感想を入れてくださると嬉しいです。宜しくお願い致します。

紅蛇さんによる作品です。

私はただ発言するの。それにみんなが聞いて話を進めるの。私はただ話を聞くだけ、なのにみんなはどんどん前へ、前へと進んでいくの。だから私は飽きちゃって止まってしまうの。みんなが階段を登ってるのに、私は留まってる感じにね。もし、今の段階が頂上の休憩地点と地上の休憩地点の丁度真ん中だとしたら、みんなは上で休憩しようとしていることになる。でも私は上ではなく、下へ戻っていってしまう。結局疲れながら上に上がろうとするんではなく、早く下の知っている道に戻ろうとしてしまうのだ。そうしてみんなが頂上の景色をみて私の所へ戻ってくる。そうしてまた、上へと目指す。私は戻って、みんなは上がる。
私は変化するのを恐れているのかも知れない。日常を愛し、平和を愛す。変化しない毎日を望んでいる。周りのみんなは逆で、変化を進化する毎日を目指している。羨ましいとも言うし、つまらないとも言える。置いてかないでと言いたいし、辞めればいいじゃんとも言いたくなる。
私は結局どうしたいのだろうか?みんなといたいのか、一人になりたいのか。同じ所に留まり、みんなが立ち去るのを眺めたいのか。それとも私も一緒に羽ばたきたいのか。本音をいうと楽したい。きっと世界中の人がそう思っているだろう。なら私は恐れているのでなく、怠けているのだろうか。
階段は老いるまで続いていく。私はまだ若いのだからチャンスがあるのだと思い込んでいるのではないのだろうか。きっとそうだ。今までも、いつか出来るから今はやらなくても大丈夫。まだ時間があるから平気だと言ってきた。余裕があるように感じていた。私は階段を一歩も上がらない。みんなは階段を一段一段噛み締めながら上ってく。
そうして今ではいつの間にか隙間ができてて、離れてる。みんなに叫んでも聞こえない距離になっている。置いてかないで、気づいてよ。私はここです。地上です。階段の上がり方がわかりません。みんなは私を気にせず行ってしまった。私は今まで何をしてきたのでしょうか?何を思って生きたのでしょうか?誰でもいいので助けてください。私の声を聞いてください。階段じゃなくてエレベーターを。カヌーではなくクルーザー船を。私は楽して上がりたい。そんな我が儘ごめんなさい。発言ばかりでごめんなさい。五月蝿いだけでごめんなさい。ガキのまんまでごめんなさい。アホな子でごめんなさい。
そんな私だけれど、みんなのことは大好きです。みんなのことが羨ましいです。

『階段の上がり方』

『階段の上がり方』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-23

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