春の泉

春と泉は幼馴染。長いようで短い冬休みが始まって2人だけの時間が増えていく。曖昧な関係に嫌気がさした泉はある行動に出る。春はそんな泉を受け止めることができるのか。そんな2人の物語。

小林 (はる)は寝惚け眼でふと時計を見た。
「やっべ」
少し嫌な予感はしていた。焦って部屋中をグルグル歩き回った。今日は10時からバイトだ、現時刻は"11:45"。寝坊してしまったのだ。頭の中で言い訳を考えていた。とりあえず電話だ。
「お疲れ様です。小林です。すみません朝から体調悪くて、連絡も遅れてしまって申し訳ないです。今日はお休みさせてもらえませんか?」
咄嗟(とっさ)に考えた結果、嘘をつくことにした。焦りすぎてうまく話せない。電話に出たのは店長だった。
「そうなん?じゃあ今日はゆっくり休んで、また体調良くなったら連絡してな」
優しさで潰されそうだった。

電話を切ってからとりあえず布団に潜り込んだ。季節は冬、暖房が壊れていてとても布団から出る気になれない。疲れている時の二度寝ほど素晴らしいものはない。
「はぁ」
しかし、今日は違う。冬休みに入って1日目、嘘をついてバイトを休んでしまったんだ、罪悪感で胸がいっぱいだ。
「はぁ」
溜め息が止まらない。学校がないとこんなに暇なのかと実感している。ピンポーン
インターホンが鳴った
「はーい」
春はダルそうに答えた。ガチャ
「おはよーさん」
訪ねて来たのは野田 (いずみ)。春の幼馴染だ。
「げっ」
思わず声が出た。泉は同じバイト先で高校も一緒なのだ。
「なんやねん。さっき店長から春の代わりに入ってくれって連絡きたけん、心配して見にきてやったのに、"げっ"とか言うなよ」
泉はそう言ってゼリーとレトルトのお粥が入った袋を春に渡した。
「お大事にー」
春は申し訳なくなった、嘘をついたことを後悔しつつ、この際開き直って寝ることにした。泉には後でメールしてお礼を言うことにしよう。
ゼリーを冷蔵庫に入れて春は眠りについた。

春は5人兄妹の4番目

春の泉

春の泉

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-18

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