きらきらだけじゃない

きらきらだけじゃない

悪い癖

頬をひっかくほどの冷たい風。
ため息が出る。
ため息を白く染める空気が私を包み込んで、まとわりついてくる。指先が冷たい。
駅から出て少し歩いたところにきらきらとイルミネーションが装飾されている。
「もうそんな時期か。」
そう呟きながらわたしは光の中に吸い込まれてゆく。
此処は、夜には恋人が集まり寄り添い合っているが、朝は浮浪者が肩を寄せ合っている。
この光の中に闇があるのか、闇の中に浮かんでいる光なのか。
時に光は人に闇を与えるのではないだろうか。
光を目の当たりにして闇を抱えることがあるのではないだろうか。
少なくともわたしはそう感じることがある。
誰かが何かを成し遂げ、きらきら輝いている様を見ると眩しくて鬱陶しく思い、劣等感を感じてしまう。
これは光から生まれる闇なのではないだろうか。
浮浪者がなぜ夜にあの場にいないのか。
それはわたしも感じたことのある感情なのかもしれない。
そんな事を考えながら、光の中から抜け出した。
「あぁ、まただ。」
どうでも良いことを考えて思い悩む癖。
わたしの悪い癖だ。

きらきらだけじゃない

きっと

きらきらだけじゃない

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-30

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