1と6との転回速

クラクションじゃ起きない街が
呼吸し酸化をはじめる前に
石畳の臙脂色へ辿りつかないと

冷えきった惑星の話をしよう
いつまでも寂しい僕たちは
無酸素の果てに仲間を探す
陥穽に満ちているH-2-Oの断片を
頬に伝うナトリウムになぞらえれば
遥かの生命体の脈動が、聞こえてくる
僕だけが知ることとしよう
水中に溶けた音素のパズルは
数光年先には持ちだせないこと
波間に浮かぶ瓶詰めの文字だけは
手荷物にするのが容易なこと

それは対価だ、
からだの端々まで探査に向かわせる
好奇心の充足にあてる対価だ

自販機とビルとに挟まれた冬を
ひび割れた親指で引きずりだすような
君の音声で語ればいい
ゆうべ見た両腕のランプが
それぞれ違う温度であること
躍起になって探したもんで
マンションの明かり、月に空目したこと

朝焼けへふらつくまんまの君が
やがて氷の星見る前に
雲の切れ間に届かせないと

1と6との転回速

1と6との転回速

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-20

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