アキちゃんどこ行った?

 夏休みが明けて、でもまだ夏がのんびりと横たわってる時期にその事件は起きた。
 仲良しのアキちゃんが学校に来なくなってしまった。
 授業中にはどちらかが教科書を忘れたフリをして机をくっつけてこっそり絵しりとりをした。お昼にはいつも一緒にサンドウィッチを齧った。放課後には屋上に行ってお向かいの家の壁に出来る自分たちの影で何かを表現したりして遊んでいた。
 仲良しのアキちゃんが学校に来なくなってから、学校が楽しくなくなってしまった。絵しりとりが出来ないから苦手な算数の授業もしっかり受けなくてはいけなくなってしまった。あんまり好きじゃないタマゴサンドの行き場が無くなってしまったし、壁に出来る影の目は一つになってしまった。
 「フユミちゃん」
 爪先だけが赤い上履きを脱いで、最近買ってもらったばかりのお気に入りの靴に履き替えていると、担任の先生が怖い顔をして話しかけてきた。
 「先生、どうしたの?」
 「あのね、最近この辺で怖い事が起きたの」
 「怖い事?」
 「そう。だからね、誰かに話しかけられても絶対名前とか言っちゃダメだよ」
 「お母さんがいつもお迎えに来てくれるから大丈夫だよ」
 「そうなの?よかった。でも、やっぱり気をつけてね」
 「はーい。先生さようなら」
 「さようなら」
 先生と別れてすぐにお母さんが来て、それから手を繋いで帰った。お母さんに「怖い事」のことを話したら怒られてしまった。その時のお母さんも先生みたいに怖い顔をしていた。
 次の日、朝の会でアキちゃんが転校してしまったと先生が言った。
 一番の友達だと思っていたのに何も話してくれなかったなと、とても悲しくなった。先生にアキちゃんの転校先の事を訊いたけど、教えてくれなかった。どうしてもダメだって。変なの。もっと遊びたかったな。
 その日はずっとぼーっとしてたみたいで、気づいたら放課後になっていた。みんなもう帰ってしまったのか教室には私しかいない。
 帰る準備をしようと立ち上がったところで、机の上に紙が乗っていることに気づいた。表には何も書いていないからひっくり返してみると、それは絵しりとりだった。
 一番最初の絵はお花。その次はスイカで、その次が手?かな。でもなぜか上からばってんされてる。それから最後が雪だるま。
 全然しりとりになっていないよって少し笑ってしまった。何となくアキちゃんからのような気がして、大切に折りたたんでポケットにしまった。

 アキちゃんがいなくなってから二週間が経った。まだ夏は横たわったまま。お天気お姉さんもまだまだ暑さは続きますって言っていた。
 最近先生は、まだ私がアキちゃんの事で落ち込んでいると思ってるのか、よく私のことを心配そうな顔で見てくる。確かにさみしいけど、ポケットの中のお守りを思い出すと元気になれた。先生にも今度見せてあげよう。
 窓際の席から見える空には夏によく見る、大きくてもこもこした雲が浮かんでいる。まだまだ暑い日が続きそうだなぁと空を見ていると、後ろの席から小さな音が聞こえて、なんとなく気になって振り向いた。
 そういえば、最近、ナツオくんがニコニコ楽しそう。

アキちゃんどこ行った?

アキちゃんどこ行った?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-17

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