煉獄生存期間ライブ中継

煉獄生存期間ライブ中継

   


   


   


   


   


   


   


堕天使のシスターは


小さな列車に乗って


巡業している。


   


彼女のアトラクションは90分


体当たりの濡れ場は     TVでも 夜中の十時から見ることができる。



   

亭主たちは 日が暮れるのを待ちかねる


    女房たちは おっぱいを丹念に井戸端で手入れする。


今夜も子供たちは サイレース入りのシチューを飲まされて  眠る。




   







   
だけど来年のクリスマスには あの人たちもあの子たちも ここにはいない。




   


   


   


   


   





   


とても美味しそうな  あなた。



   
揚子江



赤い岸壁のほとり    機銃掃射。




   
         マティ-ニと共に溶ける  夢魔のなかで 泳ぐ。



   

「どこから帰ってきたの?」


野戦トラックの荷台から 顔の膨張した彼女が尋ねる



   

       「僕は あちら いや、こちらだった、かな・・・・・・」


       屍骸処理場のあるポプラの樹の下で  リン酸カルシウムと化した彼が答える。




   


   


   


   


   


   






   

あの晩秋が来るたびに



あの人は



運命を繰り返し、ライ麦を植えるのだろうか。



   
     疾り去る秘密の移送貨車から見える  鉄条網に程近い牧場    



               今年のヨセフは  マリアに      何リットルの ミルクを出したの?





   


   


   


   


   


   






   


― そんな目を見てたら忘れられない顔を思い出すよ



                                  
                                  ― もしかして、あたし、あなたのファムファタル?


― うん、たぶんもう会えないから



                      
                       ― 泣いたらだめよ。そんな寂しいうしろ姿、雑踏の中で消えちゃうから



   


ぼくはメイ・ティンから視線を外して、コップの中に言葉を詰めた。



                   
        ビクトリアハーバー       手を握り合って      「 長いお別れね 」



                   
        彼女が ぼくを二度振り返った後   



                   
                            生まれ変わる次の人生の   もっと 向こう まで       


                   
    じきに   隔てられ                  


                   
                              消える。



   




   






   


                   



                   
ねえ、メイ・ティン 


               きみは  哀れんでくれるだろうか。


   





   




                   




   


愛してるから。自分の国なんかよりずっとずっと、とても。君の民族の敵になっても、たとえどんなに秘密警察の拷問やコミュニストの銃殺刑が恐ろしくても、爆弾で吹っ飛んだら、ちぎれたこの身体の破片の先で、ぼくはきみを追憶する。きみを愛すから。



   


   


   


   


   


   



   

煉獄生存期間ライブ中継

幾つかの詩を組み合わせて創作した。

メイ・ティンという中国人の女友達のために捧げる作品。
ミラン・クンデラとピンク・フロイドを愛す彼女と、ずっとむかし一度きりの旅をしたときの記憶。
最近彼女の夢を見たけれど、彼女はどこを彷徨っているだろうか。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

煉獄生存期間ライブ中継

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted