白終

ドクン ドクン ドクン

何かが動いている
ああ、これは「鼓動」

私は今から現世を知る
ああ、これが「生と死」

真っ暗で何も見えない
ああ、これが「闇」

いつまで経っても繭の中
私は一体誰なのでしょうか?

でも 出よう

私は繭から出なければならない

私が生まれた本当の理由を求め

私は私が作った繭から
初めて現世に生まれ落ちた

そこには私が知らない
「色」や「声」や「感覚」
「光」や「音」や「匂い」
様々な物達を目にする全てに
好奇心を隠しきれずに居た私は
あらゆる事を吸収していった

これは何でしょう?バラ?
白バラ…なんて綺麗なのかしら

綺麗に咲き乱れた白バラを
彼女は左の髪に、そっと
さし込み白バラの髪飾りをした

不思議…私の髪も白だなんて
それに私の身体も白だもの
これも何かの縁なのかしら

彼女は綺麗な緑色を左目の上に引き
綺麗な目元が一段と艶やかになり
それからと言うもの彼女は白から
色で人生を時間を染め上げた。

彼女のドレススカートは
森よりも草花達より艶やかに
咲き誇る程に花化粧されており
それは彼女が見た初めての世界を
想像するものであった。

この世は…この世界は素晴らしい…
でも脆く儚いまるで泡沫のように
花もいつかは枯れる…いつかは私も
ああ、これが「悲しい」

そして

もうすぐ私も土に帰るの…

そして

同化する この綺麗な森と
翠の草花そして大地へと
ああ、これが「生と死」

嗚呼…私は孵化した蚕
ああ、これが「涙」

綺麗な白 儚く終わる

ああ、身体は土に帰り
また魂は誰かの繭に帰る

蚕のように、白バラ散る
美しい森のように終わる

私の名前は白終

ああ…どうか、どうか
また蚕で生まれますように

さよなら現世 おはよう来世

白終

白終

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-06

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