とろっとろ

誰にも話すつもりのない自分だけが噛み潰した事を不味いながらも少しずつ飲み込んで折り合い付けていたのに、たまに出会う鳩尾を思い切り殴られた様な衝撃で食道を焼きながら、やるせなさと酸っぱさが簡単に込み上げて口一杯になったら吐き出してしまうことがごく稀にあります。

例えばそれを"弱さだ"と捉えている僕の仲間の1人は慌ててそれを掬い上げてゴクリと飲み干すけど前歯にくっついた何かしらの感情を指摘された時は口元を拭って笑って誤魔化して人知れずに泣くのでしょう。

惨めさに顔面は真っ赤になって振り上げた拳は
アイツらの頭ではなく散らかった机の上に落ちて
「これ以上、何も吐くもんか」と書き殴った遺書に誓いを立て最後っ屁の様に通勤ラッシュの電車に飛び込んでぐちゃぐちゃに潰れた身体には誓い通り"この世に対して言いたい事"なんて1つも見当たりませんでした。

ドス黒い血には後悔と怨みが染み込んでいてそれは改装を続ける昨今の都会の駅の一角に今も残っているのです。瞼の裏のスクリーンに刻み込まれているのです。何故ならそれが最期の「生」だからです。


子供の頃に出来た、たん瘤と未だに治らないトラウマが事ある毎に心臓を鷲掴みにして痛みにもんどり打っていると、例えば彼女の場合は旦那が背中を擦るのでした。
「最低だ、最悪だ」と流行り以上に根付いた言葉を空気を読んで自分以上に「最低最悪」な人前では口には出しません。がSNSではそれが何よりの話のネタで心がカーペットに見える連中も大勢います。

そんな時代を深い傷を抱えた人達が何をどうやったら器用に気儘に生きられるのでしょうね?
山程のお金を積まれても結局は山のままでくたばると思いますし、深い愛情に耽溺して命を断つことも大いに考えられますよね。

ただ今は背中に当たる温もりを噛み締めながら
殺し切れない相手に腹を立てながらも優しさに泣いている彼女は来月、出産予定だそうです。

ドス黒い血には後悔と怨みが染み込んでいてそれは改装を続ける昨今の都会の駅の一角に今も残っているのです。瞼の裏のスクリーンに刻み込まれているのです。何故ならそれが最期の「生」だからです。

とろっとろ

とろっとろ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-02

Copyrighted
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