彼が煙草をやめない理由

今日は私の彼の話をしたいと思う。惚気話をするつもりはないが、意図せずそういう雰囲気を帯びてしまうかもしれない。先に謝っておく。
彼とはもう4年間付き合っているのだが、最近とある問題が浮上してきた。彼が1年前から煙草を吸っていることが発覚したのだ。ショックだった。なぜなら、付き合い始めた頃から私は、煙草を吸うやつは嫌いだと、ことある事に言っていたからだ。私の家系には煙草のせいで身体を悪くした者が何人かいるし、彼はもちろん、私や将来の子供やペットの健康が害されるのが嫌だ。だから今まで何度も言ってきた。喫煙者とは付き合いたくないと。にも関わらず彼は、いつの間にか煙草に手を出していた。しかも1年間も黙って。今まで信用していた彼に裏切られた気がしてならなかったし、1年間も後ろめたさを感じながら隠れて吸っていたことを考えると、私の事がぞんざいに扱われているような気分になった。しかし怒りを感じていたのも初めのうちだけで、どうして煙草を始めたのかと聞くと、バイト先の先輩に勧められただとか、「ソラニン」?だかいう映画で宮崎あおいが煙草を吸う姿がアンニュイでどうこう、などと抜かしていて、私はもう呆れてしまった。
彼とは2ヶ月に1度くらいの頻度で会うのだが、私が「煙草やめないの?」と言うと、「うーん」とか唸って抱きついてくるか、拗ねて黙るかである。その場さえはぐらかせば、私なら許してくれると思っているのだろう。ずるくて弱い人だ。時には遠回しに「どうして吸うの?」と聞いてみる。すると、「お口が淋しいから」なんておどけて言う。私も冗談混じりに「おしゃぶりでも咥えてな(笑)」とか返す。いつも初めはこんな風に軽い会話から始まるのだが、だんだん暗い雰囲気になって、耐えかねた彼は「メンソールが効いて頭が冴える」「浮かんで消えてく煙を見てると何だか落ち着く」「止めようと思えばいつでも止めれる」というようなことを申し訳なさそうに語り始める。確かに彼はそういう行為にセンチメンタルな気分を感じる性格ではあるのだが、もちろんそんな事は建前だ。ただちょっと悪いこと、人とは少し違うことをしてみたいだけなのだ、この人は。私はそれを分かっていながらも、へえ、なるほどね。と納得したフリをする。口では「いつでも止められる」なんて言うが、彼はもう煙草をやめられないと思う。煙を吐いている時の、うっとりとした横顔を見れば分かる。頭を空っぽにして、哀しげはあるがどこか安心したような表情で、夜空に消えてゆく白煙を追いかける。無駄な心労が多く内向的な彼は、「煙草を吸う」という行為そのものに依存してしまっている。然るべき時に禁煙してくれていればいいが…叶わぬ願いだろうか。

愚痴みたいになってしまいましたね(笑)
それではまた。

彼が煙草をやめない理由

彼が煙草をやめない理由

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-23

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