桜咲く

たぶん、一生。
恋なんて私には無理。

そう思ってた。
だって、私には時間がないから。

ある時、幼なじみの椿に出逢った。
椿に出会ってからは、私の見る景色が変わって見えた。
きらきら、輝いているようだった。

椿と真琴

満開の桜の木の下、あなたに出逢った。
この出会いが、私の残りの人生を輝くものに変えた。

私は、満開の桜の木の下を一人歩いていた。
「きれいな桜。これが、最後に見る桜か・・・。」
私は、話すことが大好きで独り言を言うのが癖である。
「君の方がきれいだよ」
後ろから低い声がした。
振り返ると、幼なじみの椿が立っている。
びっくりした。だって、海外に行ったはずの椿が立っていたから。

「椿?どうしてここにいるの?」
「この春から、君と同じ学校に行くことになったんだ」と満面の笑みを浮かべ言った。
「そうなんだ」
「なんだよ。真琴、元気ないね。何かあったか?」と私の顔をじっと見て言った。

私は、病気の話や学校の話をした。

「そんなことがあったのか・・・・。よし、分かった。俺が真琴の残りの人生を輝かせてやる」
「え?そんなことできるの?」
私は、椿の言っている意味がよく分からなかった。

「ねぇ。どういう意味?」
「お楽しみに!それより、真琴。遅刻しそうじゃない?急ごう」と言って腕時計を見た。
「ほんとだ。急がなきゃ。」
二人は慌てた様子で、学校まで走った

 帰ってきた理由は、なんだろう・・・。授業中、そのことばかり気になって勉強が手につかなかった。
気付いた時には、もう授業が終わっていた。
4限目の終了のチャイムが鳴って椿が入ってきた。
「真琴、一緒に弁当食べよう」
「うん。今日は晴れてるし屋上で食べたいな」と言って支度をした。

屋上まで階段を駆け上った。
だって、早く空を見たかったから。

私の言ったとおり、空はきれいだった。雲一つない空。
「やっぱり、空の下で弁当を食べるのはいいな」と椿がニコッと笑って言った。
「でしょ。きれいだね」

その時、私は心のどっかで引っかかっていることを思い出した。
聞くのは今しかないと思った。

「椿、どうして、帰ってきたの?なんか、あった?」
「いや。そうじゃない。真琴のために帰ってきたんだ」

え??私のため?どういうこと?

「真琴、ごめん。嘘ついた。実は、俺、真琴の病気のこと知ってた。
 真琴が中3の時、病気になったって真琴の母親から聞いたんだ。
 で、心配になって帰ってきたのと、真琴のことが、好きだから帰ってきた。」
「え?」
「真琴、こんな時に言うのもあれだけど・・・。俺、中1の頃から、真琴のことが好きだ。
 真琴の、最期の時まで傍に居させてくれ。俺と、付き合ってください」

びっくり。中1の頃から、大人しい椿が、こんなことを言うなんて。

「ありがとう。椿には、辛い思いさせちゃうと思うけど傍に居てほしい」


私も、心のどっかで、椿のこと想ってたのかもしれない。
病気になって、諦めかけていた恋。
残りの1か月を楽しもう。

――次の日ーー
椿は、家まで迎えに来てくれた。
「ほら。後ろ、乗って。」と言って自転車の後ろに乗せてくれた。
二人乗りなんて、初めて。私は、とってもドキドキした。
椿と、自転車に乗ってると見える景色がこんなに違うんだ。
少し、きらきらして見えるのは私の気のせいだろうか。

学校に着いてからは、ちょっと憂鬱。
だって、クラスが違うから。
それに、私は、勉強が大の苦手だった。

4時間目のチャイムが鳴るまで、とても長く感じた。

1時間目から、苦手な数学の授業を受け2,3時間目の体育の授業を見学した。

チャイムがやっと鳴り、椿が教室まで来た。
今日は、あいにくの雨で教室で食べることになった。
教室は、屋上と違って騒がしかった。
「真琴、放課後どっか遊びに行く?」
「映画を観にいきたいな」
「了解!」
椿は、とっても楽しそうだった。

椿は中学の時と違って、とっても明るい性格になった。
私は、大人しい椿も明るく元気な椿も好きだった。

ーー放課後ーー
椿と、映画館に行った。
病気になってからは一度も映画館に行ってないので、久しぶりだった。
「何が観たい?ホラーとか?」
「いいよ。観よう。」
私は、ホラー系の映画が苦手だった。
けど、いつも逃げてばかりじゃダメな気がした。

観ると言ったけれど、怖くて目を伏せてしまった。
夏にぴったりのホラー映画だけど、やっぱり怖かった。
「真琴は、やっぱり駄目なんだね。大丈夫か?」
椿は半分笑った顔で言った。
ちょっと面白がってる??
「大丈夫。面白かったよ」
私は、嘘をついた。ほんとは、怖くてたまらなかった。

でも、とっても楽しかった。
だって、椿と過ごす時間は私にとっては貴重な時間だから。

ーー次の日ーー
今日から、夏休み。
1か月も、夏休みなんて長いよ~~。泣
宿題は多くて大変だし、椿はバイトで忙しいし・・・。
つまんないなー。

夏休み1日目は、図書館で宿題をした。
普通は友達と集まってするんだけど、私には友達がいない。
中学の時、友達はたくさんいたけど病気になってからは友達を作ってない。
だって、辛い思いさせたくないから。

2日目も3日目も、図書館で本を読んだり宿題をしていた。
「夏休み、こんなんでいいのか・・・。」
また、つい独り言を言ってしまった。
「よくないよ。それじゃ。」
後ろから、聞き覚えのある低い声がした。
振り返ると、浴衣姿の椿が立っていた。
「椿?どうしたの?その恰好」
「あー。変かな?真琴と、花火大会に行こうと思って」
「え?バイトは?」
「やめた。俺には向いてなかったし何より真琴と過ごしたいから」

嬉しい。椿が、そんなことを言ってくれるなんて信じられない。

私は、急いで家に帰った。
浴衣を着るなんて、何年ぶりだろう・・・。
椿のお陰で、後悔なんてしなくて済みそう。(笑)

私たちは、近所の公園に行った。
地元で有名な大きな花火大会だから、とっても賑わっていた。

ドーン、ドーンと大きな花火が上がった。
「わー。椿。きれいだね。誘ってくれてありがとう」
「真琴が、喜んでくれてうれしいよ」

椿は、なんて優しいんだろう。
こんなきれいな花火、生まれて初めて見た。
椿と一緒にいると、周りの景色が輝いて見える。
椿からは、どう見えてるんだろう。

ーーその時ーーー
ドーンと大きな花火の音とともに、私は気を失った。
何が起きたかわからなかった。
「真琴。真琴。おい、大丈夫か?」
椿の、低い声がしたような気がした。

気付いたときには、病室にいた。
「真琴・・・。目、覚めたか?」
「椿。ごめんね。迷惑かけて・・・。」
「バカ。しゃべんな。俺は、全然大丈夫だから。」
「でも・・・。」
椿は、今でも泣きそうだった。
椿、ごめんね。直接、言うのは恥ずかしかった。

私は、意識が朦朧とする中、必死に椿に想いを伝えた。
「椿・・・。私を好きになってくれてありがとう。椿のことを好きっていう気持ちはこの命が消えても変わらないよ。
 生まれ変わったら、また椿と恋がしたいな。今度は、もっともっと元気な私でいたい・・・。」
「真琴?おい。真琴。目を覚ませよ。明日も遊びに行くんだろ?」
俺は、真琴に何もしてやれなかった。
俺は、真琴の冷たくなった手を握り、何時間も何時間も泣いていた。

桜咲く

桜咲く

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-12

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