被害届

 こんなこと初めてです
 私はあなたを許せない

 バスが繁華街から離れ
 残された私たちに同じ感情が走ったのを感じました
 それを確かめるように
 あなたは人懐こい笑みを浮かべます
 ――どこまで行くの?
 ――なんだか夢に迷い込んでしまったみたいだね
 そんなような

 出会いは唐突でも私の印象に残って
 深いところに住みついてしまいました
 ほんとに初めてのこと
 甘い妄想がゆらゆらと立ち込めてきて
 現実の席に据えられる

 もう一度二人だけの世界へ連れていって
 どうしてこんな想念を抱いてしまうのでしょうか
 あなたが思わせぶりな笑みを向けてくるから

 私は被害届を出します
 恋に落ちた私は悪くない
 心を奪ったあなたの罪
 愛を返して

被害届

被害届

恋に落ちた私は悪くない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-10-06

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