色を持たぬ雪のはなし

僕に色をください

ある冬の夜、ひどく悲しんでいる雪がおりました。
空にはらりと舞う雪は、触れるとすぐに解けてしまいます。
解けてしまえば、もう誰も雪を見つけることはできません。
寂しさに嘆く雪は、様々な花々に
「私に色を分けてください。色を持たない私を、どうか受け入れてください。」
と頼んでまわりましたが、
「とんでもない、誰が雪になんてなるものか!」
「嫌だね。すぐに解けちまう雪の願いなんて、聞くだけ無駄だよ。」
と口々に叫び、花たちは逃げてしまいました。

しょんぼりとした雪は風に流されて、はらりふらりと空を舞いました。
すっかり落ち込んでしまった雪が地面に向かおうとした時、小さな声で自分を呼ぶ声がしました。
「雪さん、雪さん、僕の声が聞こえますか?」
よく耳を澄ますと、一つの花が恥ずかしそうに顔を伏せて、雪に呼びかけていました。
「雪さん、雪さん。もしよければ、僕のところへ降りてきてください。あなたに、僕の色を分けましょう。僕は冬に咲く、雪の花となりましょう。」
たいへん喜んだ雪は、何度も感謝の言葉を口にしながらその花のもとへ降り、やがて透明な雫となって地へと落ちていきました。
それは雪が零した、感謝の涙だったのかもしれません。

朝になりました。
寒い寒い空の下、今日も真っ白い花が優しく咲いております。
舞う雪たちは、花に語りかけます。
「こんにちは、お花さん。真っ白で、とてもきれいな色ですね。」
照れくさそうに、花は答えます。
「ありがとうございます。僕の名前は、スノードロップって言うんです。僕の名前は、ある雪さんからもらったんですよ。だから雪さんたちが僕の白をきれいだと言ってくれて、とっても嬉しいんです。」
その言葉を聞いた雪たちは、微笑むように舞いながら、ゆっくりと地面へと吸い込まれていきました。


~おしまい~

色を持たぬ雪のはなし

このお話を見つけてくれてありがとうございます。そして、ここまで読んでくださりありがとうございました。スノードロップ、とてもきれいでかわいい花なので、興味を持っていただけたら幸いです。

色を持たぬ雪のはなし

ある冬の夜のお話。色を持たぬ雪と花たちの物語。ドイツの言い伝えをもとに、絵本風に書いてみました。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-03

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND