限界点

雨の日も風の日も。
来る日も来る日も。

彼は支え続けて来た…

戦いに敗れたあの日からずっと。

もうどれくらいの時が流れたのだろう。
この罰に終わりは無いのか…

ずっしりとした重い罪が彼を常に苛んでいた。

休むことは許されない。

この罰はいつまで続くのだろう…


ある時彼は気付いた。

彼を罪人にした「彼」が居なくなったことに。

でも本当に居ないのだろうか…

どこからか、自分を見張っているのでは無いのだろうか…

その考えが彼の忍耐力を奪い始めた。今まで耐えてきた罰のなんと過酷で苦しかったことか…

それから幾日か経った時。

彼はもう自分がこの罰を耐える力を失なったのを知った。

こうなったらもうどうなってもいい。

「もう、うんざりだ!!」

そう叫んで彼は肩に担いでいた球体を、じわりじわりと肩から下ろし、そして、添えていた手を放した…

球体は暗闇の中に吸い込まれて行った。

彼の名はアトラス。
ゼウスと戦ったティターン族である。


ゼウスとの戦いに敗れた後、地球という天体を肩で支える罰を与えられていたのだった。

「司令部に繋いでくれ」

太陽系の観測をしていた艦隊の乗組員が、モニターに告げた。

「定時連絡か?」

モニターの向こうで司令部の係員が尋ねた。

「ああ、変化が起きた、太陽系の惑星のひとつがブラックホールに吸い込まれたんだ」

「…詳細を述べよ」


こうして20XX年、地球は消滅したのである。

限界点

限界点

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-18

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND