Sの捜求


なあ、見つからないんだ。君を救う方法が見つからない。見つからない。
嗚呼、どうしたら君を救えるだろうか。どうしたら君が幸せになれるだろうか。
どうしたら、君が罪の意識に囚われずに馬鹿みたいに正直に生きれるのだろうか。

僕には何もできないんだろうか。君をどうしても助け出したいのに。君を、沢山の怨嗟の声から、憎悪から、慟哭から、守ることができたらどんなに良いか。

ああどうか、僕の最愛の人。苦しまないでくれ。君は何も考えなくていい。僕が君の苦しみを背負うから。君の苦しみの元を除くから。
どうかそのまま、何も考えずに、綺麗な笑顔を見せてくれ。一寸の翳りも無い微笑みを、僕に向けてくれ。

そうしたら、何でもしようでは無いか。言葉通り、何でも。分かるね?
大丈夫だなんて、そんな言葉が聞きたい訳じゃ無いんだ。僕は君と二人でいたいんだ。この世界、二人、ずっと。
ね?

そうだ、君を守ってあげよう。
それこそ、死んでも、ずっと。

君が怖ければ、外に出なくていいよ。君が外に出てしなきゃいけない事は、僕が代わりに全てやろう。
君が欲しくなれば、僕が持って来てあげよう。遠慮せず言ってくれていいよ。
君が罪の意識に苛まれて外に出たくなったら、僕が止めてあげよう。一瞬の衝動は君を殺す事になる。
君が疑われたら、君以外が疑われるよう全力を尽くそう。君の為なら難しいことなんて何一つ無い。
それでも君が疑われたら、喜んでそいつを殺そうではないか。僕たちの幸せな生活を台無しにするなんてなあ。罪深い。

さあさあ、馬鹿な事を言っていないで。たった5年、待つだけで良い。そう、たった5年だ。僕のところにちょっといるだけだよ。何も心配いらない。何も考えないで、ただ待とうではないか。その日が来るのを。
その日まで、ずっと君を守るよ。1826日間、君を、守る。
何からって?馬鹿だなあ。
君を疑う人、君を探す人、君を追う人、君を知る人。
ほら、理由なら君が一番分かっているだろう?受け入れろよ。

これが、解決策だよ。
君を救う、方法だよ。

救われたいだろう?
助かりたいだろう?
これまで通りが良いだろう?
のうのうと生きたいだろう?

ほら


僕に一生寄りかかっていればいいいよ。君をあいしているから。

Sの捜求

…さて、いかがでしょうか。
お気に召さなかった方、残念でした。ハズレですね。お気に召した方、前回作『Aの考録』も同じようなものですので、お時間ある時にお読み下さい。
ありがとうございました!

Sの捜求

一人の男が、ある決意を固めるまで。

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-15

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